さっぽろ演劇宣伝の「今」と「これから」を考えよう|AD MEETINGのお知らせ
(転載元:https://www.icc-jp.com/news/nb0fsi00000006o7.html)
2019年10月14日(月・祝)、札幌で演劇をやっている方たちが宣伝方法についてディスカッションを行うイベント『さっぽろ演劇 AD MEETING』が札幌の インタークロス・クリエイティブ・センター(通称ICC) で行われました。
札幌で演劇をやっている団体数は80以上あり、フリーで活動している人も合わせると相当な人数が演劇に関わっており、市内ではほぼ常時どこかで演劇公演が行われています。
公演内容はオリジナルも多く、日々新しい演劇コンテンツが生まれている現状がありながら、市民や道外にほとんど知られていません。コンテンツ産業におけるメディアが移り変わる中、音楽は改めてライブの価値が高まっています。同じように目の前で人間が行う表現である演劇は、今後より多くの可能性を秘めているといえるでしょう。
札幌では2012年から毎年札幌演劇シーズンと題して、札幌で過去に上演された名作を夏・冬それぞれ1ヶ月ごと複数本上演する企画が行われており、1公演ごとの来場平均数を見ると初年度は75人ほどだったが、近年では150人を越すなど、演劇が少しずつ街に浸透しているように思えます。
しかし通常の公演を見ると、やはりどの都市とも同じように集客には苦戦しているのが現状です。集客に苦戦すればするだけ金銭的負荷がかかり、結果として作品作りにかけられる時間も減ってしまいます。それは優れた作品を生み出す可能性を減らす理由の1つと言えるかもしれません。
そこで札幌演劇を担っている当事者達の発信力を強化することで、優れたコンテンツを作る端緒を開けるのではないか。そんな狙いがこの企画にはあります。
今回のイベントに際して、事前に演劇の宣伝に関するアンケートを実施。当日は23名の演劇関係者、及び演劇ファンが来場しアンケート結果をもとにディスカッションが行われました。
チラシの実情
アンケート結果を見るとチラシについてはきちんとお金をかけて印刷しています。そのチラシは主に他団体の演劇公演を見に行った人に手渡される形で使われ、飲食店や町中のチラシが置いてあるスペースなどにはあまり置かれていません。これはつまり既存客には届きますが新規客の開拓にはほぼ繋がりません。既存客の取り合いです。
チラシはA4サイズが多いですが、それは多くの団体のチラシをまとめて渡すため、取り扱いがしやすいように慣習的にA4サイズで作るのではといった意見もありましたが、飲食店などではサイズが大きため置いてくれない場合もあるでしょう。
また、裏面掲載情報について「自分たちがどんな団体か紹介しているところが少ない」といった意見もありました。それは団体について知ってもらう機会を損失していると言えるでしょう。文字情報として何を載せるかは届けたい相手(既存客か新規客か)で大きく変わってきます。
「チラシ印刷をやめようかなとも考えている」という意見もでてきました。手渡しできる強みも実際はあると思います。紙媒体の特性を考えて、どう使うから何部印刷するか改めて考えてみるのも手かもしれません。
SNSの使い方
チラシ以外の宣伝費がない中で公演を行っている場合、頼るのがSNSです。しかしtwitterを活用して宣伝している人は多いのですが、他のSNS、facebookやInstagramはそれほど活用されていません。同じSNSでもそれぞれ特性があり宣伝する方法や内容、届けたいターゲットによって得手不得手がありますが、使い分けている様子もそれほど見受けられませんでした。またtwitterは興味を持った人しかフォローしてくれません。拡散されなければやはり既存客へのアプローチとなりますので、チラシと同じ状態です。
また、そこに書く文章や写真を専門家(ライターやカメラマン)にほぼ頼まず、作品については演出家(脚本家)が、宣伝文については自分で、写真もスマホという意見が殆どでした。自分自身が作り手として関わっている以上、言葉は主観的にしか出てこず客観的な魅力発信などには繋がりづらいのが実情です。それとともに稽古風景の写真や動画を掲載したところで、それらはすべて作り手側、つまり内側の表現に終始されてしまいます。結果として「内輪感」が醸し出され、新規の人にとってはより敬遠する原因にもなるでしょう。
プロにいきなり頼むまでもなく、まずは自分たちだけでも構わないので、この作品をどう外に伝えたら魅力的に感じるのか話し合ってみてはどうでしょう。稽古の休憩時間を使って良い写真や動画を撮るのもよいかもしれません。
SNSについては身近なツールだけに他にも様々な意見や疑問が出ましたが、これは別途分けてディスカッションしたほうが良いかもしれません。
ニュースリリースを活用しよう
ニュースリリース(プレスリリース)を利用している人も多くありませんでした。ニュースリリースとは新聞など報道媒体に公演情報などをお知らせする一番簡単な方法です。当日ディスカッションに参加してくださった札幌文化芸術交流センターSCARTSの方から詳しい案内とリリース資料の作り方が提示されました。ご提供いただいたので以下からダウンロードできます。
こういった資料を25部作り札幌市役所(札幌市中央区南1西1)11階にある市政記者控室に提出すればOKです。また、ニュースリリースは情報サイトでも受け付けているところが多いです。掲載されるかは各媒体の判断になりますが、ニュースリリースのための資料を作る事が作品の魅力を考える一助となります。チラシの裏面やSNSでの紹介文としても使い回せるのでやってみると良いでしょう。
また、SCARTSには相談窓口があり宣伝についても勿論、助成金のことや他ジャンルとのマッチングなども行ってくれます。さらにSCARTSは市内で行われる文化イベントのチラシを置いてくれますので、是非持っていきましょう。
公演をやってない期間の使い方
多くの人が知人友人に公演案内をLINEなどを使って公演情報を伝えています。となると知人友人が増えれば?と思うのですが「増やすための時間がない」という意見もでました。
公演が決まり宣伝が始まる頃には稽古がはじまります。作品作りにほとんどの時間が使われ宣伝に使える時間はごくわずかとなってる中確かに知り合いを増やす動きをしてる時間なんてありません。であれば公演が決まっていな空白期に何をやっているか、何を発信しているかが重要です。
参加者の中に「経営者の会に参加するようにしてみた。」という話をしてくれる方がいました。経営者の方たちは演劇に触れた経験がほとんどない人達だったようですが、非常に興味を持って話を聞いてくれたらしく、それが来場に繋がったことから、他の業界とつながる重要性を語ってくれました。
公演が決まってから動くのではなく、決まってないうちから友人知人を増やす作業や、より自分のSNSに注目をしてもらう作業をしておけば繋がっていた人々の反応も変わってくるでしょう。
お金がないから頼めない。やってくれる人がいない。
「そもそもお金がないからプロに頼めない」という意見もでました。勿論そうですが、必須だと思わないからこそ「(優先順位が低いので)お金がないから頼まない」のではないでしょうか。
アンケートを見ると、そもそも宣伝担当者がいません。演劇の世界における「制作さん」と呼ばれる役職の一業務ですが、制作担当人材が少ないため頼むことができません。
ではなぜ制作担当者が少ないのか、増やすにはどうするべきなのか考えねばなりません。例えば仕事量に対してギャラが少なく、また業務を行うための権限が少ないのが原因の1つではないでしょうか。
制作という言葉でひと括りにされていますが、その業務内容は多岐に渡ります。このうちの1つを取っても専門家に依頼すべきものばかり。宣伝だけ切り取っても団体代表が許した範囲しか権限がなければ、やりたいこともやれません。多くのお金が渡せない場合でも、権限をきちんと渡す機会は増やしたほうが良いかもしれません。また、制作担当者自身も重要性をしっかりと認識しなければなりません。決してお手伝いさんではないのです。
現状、困っていることを打開するためには
「制作さんが少ない」という話から「制作担当者の連絡先・スケジュール情報を共有されていれば、より依頼しやすくなるのでは」というアイデアが生まれました。そこから発展し、横のつながりをしっかり作って情報共有だけでも行うべきでは?という意見へ繋がりました。そういったギルド(この場合同業者団体的な意味合い)が作れる可能性については今後も検討していきたいと思います。
今後ICCではギルド設立の可能性を継続的に検討する機会を作り、また今回のような宣伝についてのディスカッションも継続的に行っていけたらと思います。
役立ちサイト
当日詳しく話せませんでしたがSNSの投稿ツール、演劇情報などを取り扱ってるサイトやリリースできるサイトなど思いつく限り書いておきます。
Hootsuite
SNSへの予約投稿などが行えるウェブサービス。ある程度無料で使えます。アプリ版もあり。(2019/11/20時点)
札幌演劇情報サイト d-SAP
札幌演劇に特化したウェブサイト。基本的な札幌の演劇情報のほかインタビュー、公演情報など札幌の演劇についてなら、とりあえず見ておいたほうが良いサイト。公演情報を投稿可能。
ART AleRT SAPPORO
特定のジャンルに限定することなく札幌の文化イベントを厳選して紹介しているサイト。公演情報を投稿可能。
札幌観劇人の語り場
札幌演劇を観る人たちの感想を共有するサイト。寄稿者を招待して感想を書いてもらうなども依頼次第では可能性あるが基本的にはすべて本音で書かれる。チケットプレゼント企画などをやる場合も。
ステージナタリー
様々なジャンルのポップカルチャーを取り扱うサイト「ナタリー」の舞台専門サイト。ページ最下部より「情報提供」を行えます。
札幌経済新聞
札幌の情報全般を扱うウェブ新聞。ページ最下部より「情報提供」を行えます。yahoo!ニュースなどへの情報提供元となっており、ここに取り上げられると自動的にyahoo!ニュースにも掲載されます。
札幌市による文化芸術行事への名義後援
「後援:札幌市」(名義後援といいます)を入れるためにはどうすればいいか詳しく書いてあります。これをすることで地下鉄や区役所などにチラシやポスターを置くことができます(できるかどうかは各施設の状況によります)。
インタークロス・クリエイティブ・センター 事務局
ICC事務局の受付・取扱時間は、9時から17時までとなっております。
(土曜日、日曜日、祝日は除きます。)
- 住所:郵便番号003-0005 札幌市白石区東札幌5条1丁目1-1
- 電話:011-817-8911
- ファックス:011-817-8912
- E-mail:info@icc-jp.com