【インタビュー】上田龍成さん・齊藤雅彰さん|教文短編演劇祭2017

7月に札幌市教育文化会館で開催された「教文短編演劇祭」に優勝し、9月に愛知で開催された短編演劇の祭典「劇王アジア大会」でも大成功におさめた演劇ユニット 星くずロンリネス。札幌を代表する演劇団体の一つとして、今後ますます注目を浴びると予想されます。

今回は、星くずロンリネス代表の上田龍成さんと、教文演劇フェスティバルの委員長で日本劇作家協会の北海道支部長をつとめる齊藤雅彰さんに対談していただきました。

「僕は札幌が好きなので、強い覚悟で臨んだつもりです」。

 

上田龍成(うえだ りゅうせい)

劇作家、演出家、映像ディレクター。北海学園大学演劇研究会OB。

2010年から自らが脚本演出を行なうシアターユニット「星くずロンリネス」を立ち上げ、演劇を知らない人たちにもその魅力を知ってもらうため活動を続ける。また、物語のある大喜利対戦ライブ「札幌オーギリング」の企画・運営など、演劇だけにとらわれない多岐に渡る活動を行なう。

2014年、2017年「教文短編演劇祭」優勝、2017年「劇王Ⅺ~アジア大会~」準優勝。

齊藤雅彰(さいとう まさあき)

劇作家、演出家、俳優。札幌市教育文化会館の教文演劇フェスティバル委員長として、北海道の演劇状況の底上げのため精力的に活動している。

2005年から日本劇作家協会北海道支部の支部長になる。2008年から教文演劇フェスティバルで短編演劇祭をはじめる。2017年7月に出演した一人芝居「煙草の害について」(チェーホフ作)で一人芝居にはまる。11月には北海道二期会が行うオペラ「不思議の国のアリス」の演出をいたします。

教文短編演劇祭の今昔


上田龍成さん(以下、上田):
齊藤さんが北海道支部長をされている日本劇作家協会とは、どういった組織ですか。

齊藤雅彰さん(以下、齊藤):劇作家の井上ひさしさんが別役実さん、坂手洋二さん、渡辺えりさん、鴻上尚史さん、平田オリザさんらを集めて作ったのが始まりでした。ただ劇作を仕事としている人たちだけの集まりだと、小さな集団になってしまう。そこで井上ひさしさんは、「クリスマスの夜に子どものために物語を書いて披露する、そのお父さんはもう立派な劇作家だ」と言って、プロ・アマ問わずにウェルカムしたんです。すごく懐の広いことをおっしゃるんだなぁと感銘を受けて、僕もすぐ劇作家協会に入りました。1993年頃だったと思います。

上田龍成さん(以下、上田):俺が5歳くらいの時だ。

齊藤:2005年の春に劇作家協会北海道支部を設立し、僕が支部長を努めさせていただくことになりました。

上田:13年もやられているのですね!

齊藤:はじめの頃はあまり目立った活動はしていなかったのですが、教育演劇フェスティバルに携わるようになってから少しずつ認知してもらい始めたと思います。短編演劇祭に劇作家協会から優れた劇作家を招いてみたり。

上田:そうだったんですね。そもそも、教文演劇フェスティバルや短編演劇祭は何がきっかけではじめることになったんですか。

齊藤:教文演劇フェスティバルは私が実行委員になった2000年頃には、すでに毎年8月に地元の4劇団が小ホールで上演するという方法で行われていました。私が実行委員として参加してからワークショップや様々な企画を開催するようになってきたんです。

当時の企画の一つに若手演出家ワークショップというのがあってね。弦巻くんや清水くん、橋口さんイトウワカナ、菅野くん、川尻くん、南参や谷口健太郎、もう今じゃ一堂に集めれない面々たちに講師になってもらって、公募で集まった人たちと一緒に短編演劇をつくる取り組みだった。当時若手として活躍していた彼らが素人を演出し、短編演劇を披露し合う。すごく面白かったよ。

上田:面白そう!!今もやりたいです!

齊藤:演出家はキャストを選べない、集まった人たちで作らなくてはいけないという制限が楽しかった。その取り組みを発展したのが、今の「短編演劇祭」です。すでに名古屋ではじまっていた短編演劇祭「劇王」も参考にしたよ。2008年に第一回目をやって、初代チャンピオンは劇団怪獣無法地帯だった!

 

 

上田:僕がはじめて出場したのは、(短編演劇祭の)第3回目(2010年)でした。実は2009年に映像の撮影スタッフとして関わらせていただいていたんです。そのときに撮影しながら観ていた短編演劇がめちゃめちゃ面白くて!ぜひ自分も参加したいと思い、満を辞して次の年に出場し、結果は予選3位。打ちのめされました。悔しかった。

終わった後、yhsの南参さんやTBGS.のミヤザキカヅヒサさんと「競わない短編演劇のお祭りをやろう」という話になって開催したのが、「サッポロショーケース」(2011、2012年)というイベントでした。教文短編演劇祭に出場していた団体が中心となって、コンカリーニョで短編を上演した。そこで短編演劇が大好きになりました。

試行錯誤を繰り返し、何度も悔しい思いをし、2014年にようやく優勝できました!

齊藤:最初はこのイベントすら知らなかったのに、偶然機会があって関わるようになり、今はアジア2位にまで成長した

※星くずロンリネスは、2017年9月に愛知県・長久手で開催された短編演劇祭「劇王XI アジア大会」で準優勝した。

上田:もし2009年に撮影スタッフをしていなかったら、今の活動はなかったんじゃないかと思います。

齊藤:今だから言えることだけれど、出てきたばかりの星くずロンリネスはあんまり面白くなかったんです(笑)。とても優勝できるような団体じゃなかった。だから彼はものすごく努力してきたんだと思いますよ。上田くんは、台本をものすごくちゃんと書いている。読む戯曲としてというより、演出をつけるための「台本」としての完成度が高い。

上田:自分で書いたものは「台本」と呼びたいんです。演出をのっける土台としての本なんです。教文短編演劇祭や道外の公演に参加するようになって、改めてそう感じるようになりました。

齊藤:「劇王」もそうだし、札幌の演劇団体が道外で公演をする機会が多くなっています。札幌で活躍している人も各地で公演することによって、世界が広くなる。出会いが増える。しかもいまは昔と違って、関係をインターネットを通じて維持することができる。昔は手紙書いたりしていたんだよ。つながりは、活動の原動力になる。

そういう意味でも、札幌の団体も市外の団体も共に喜んだり悔しがったりする「教文短編演劇祭」はやってよかったなって思います。審査発表の時、舞台上で喜んだり悔しくて崩れたりする人を見て、こんなに入り込んでくれているんだと思い、やりがいを感じました。

 

 

齊藤:札幌で結果を残した作品が、外でやってもしっかりと爪痕を残していますね。

上田:「劇王」では、しっかり結果を残さないといけないという責任感もありましたね。札幌で1位取っておいて全国で結果出せないのは悔しいじゃないですか。僕は札幌が好きなので、強い覚悟で臨んだつもりです。

『言いにくいコトは、、』という作品を上演したんですが、もともと5人芝居の台本でした。しかし「劇王」はルール上3人までしか出演できないため、ブラッシュアップを繰り返し、なんとか3人に書き直しました。その作業はとても大変だったんですが、審査員の鴻上尚史さんから「5人バージョンってどんなのだったの」って聞かれて説明したら、「絶対3人の方が面白いよ!」と言っていただいたことはびっくりでしたね。

齊藤:僕は札幌で5人バージョンを観て面白かったから、どう3人にするんだろうと心配して予選を観ました。でも成功した、良かった。

上田:僕も役者もものすごく緊張しましたよ…!

齊藤:今回の決勝はどのチームも良かったですね。星くずロンリネスはいつも観客票を多く獲得するタイプの団体なのに、観客票だけでは3位、審査員票が1位だった。

上田:審査員票でこんなに評価されたのは初めてでした。

齊藤:すごく嬉しかったですよ。上田くんが評価されたのも嬉しかったし、教文短編演劇祭がやっとここまで来れたぞという喜びもありました。

上田:そう言っていただけてすごく嬉しいです!星くずロンリネスを旗揚げしたその年に教文短編演劇祭に出場しているので、短編演劇祭と共に歩んでいるというか…ぐっとくるものがありますね。

齊藤:今回の短編演劇祭は、道外からチャンピオンベルトを取り返したという意味でも大きな功績を残しました。

上田:2014年に初めて優勝したんですが、翌年には東海連合(劇作家協会東海支部)に奪われちゃったんです。ものすごく悔しかったし、ふざけんな!とも思っていたし。さらに次の年(2016年)も優勝したのは東海連合だった。だから今回ベルトを取り返すことができて本当に良かったです。

齊藤:改めて、「教文短編演劇祭2017」優勝おめでとうございます。

上田:ありがとうございます!

 

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