はじめての演劇「とりあえず1回目を観ることが大事」|札幌演劇シーズン2018-冬

札幌演劇シーズン2018-冬が終幕しました。様々なジャンルの作品が1ヶ月を通して上演され、演劇ファンのみなさんは大いに感動されたことでしょう!

しかし、d-SAPはもっともっと多くの「はじめてのお客様」に札幌演劇を観てほしいと考えています。演劇は映画や音楽ライブよりも、なんだか敷居が高い気がする…。面白いかどうかもわからないのに、3000円…かぁ、と。その気持ちも大いにわかります。

そこで、札幌演劇シーズンのご協力のもと新企画『はじめての演劇』を行いました。演劇を普段観ないお客様を無料招待し、観終わった後に「はじめての演劇」の感想を話し合っていただきました。

「はじめての演劇はどうだったか」「また観たいと思ったか」「どうしたらもっと初めてのお客様が増えると思うか」など、自由に話し合っていただきました。演劇関係者の方も、お客様の意見から何かヒントが得られるかもしれません。

このページでは、その時の模様をお届けします。観劇した作品は、レパートリー作品であった弦巻楽団『ユー・キャント・ハリー・ラブ!』です(2018年2月10日14:00からの回)。

 

参加者

  • 大島さん(女性。高校1年生)
  • 萬屋さん(男性。バー経営)
  • 平原さん(女性。デザイナー)
  • 司会:佐久間許都(d-SAPスタッフ)

 

わかりやすくて、驚かされて

弦巻楽団『ユー・キャント・ハリー・ラブ!』(札幌演劇シーズン2018-冬)


ー はじめに、お芝居の率直な感想をお話ください。

平原:普段舞台を観ることはあまりないので、どんなものか想像もできずにいましたが、内容はすごくわかりやすく楽しめて、最後はハッピーエンドになって良かったなって思いました。

萬屋:内容は確かにすごくわかりやすかったですね。僕もこうして劇場に舞台を観に行くのは初めてです。住んでいたところが田舎だったもので。

舞台セットというか、仕掛けには驚きました。雷が鳴って窓の照明が変わるくらいはまぁわかりますけど、教授と助手がモールス信号でやりとりしていたシーンで、スクリーンに信号の意味を写すっていうのは面白かった。舞台演出って、こういうものもあるんだなと。

平原:舞台中央奥のシェイクスピアの肖像画の仕掛けには驚かされました。そしてラジオDJの冬樹里絵さんの声が本当に素敵で…!

大島:左側の窓のあった壁が前傾に倒れていて、あれすごい。どこで支えているのかすごく気になった。セットの裏とか見てみたいなって思いましたね。

平原:時間の経過に伴って洋服が変わったのもわかりやすかったですね。

大島:私は音楽にも注目しました。ジャズっぽい曲がシーンごとに流れて、全体的に一貫性があって。たくさんの人が楽しめるようなお芝居で、本当に良かったです。演劇はそんなに観る機会がなくて、どうしても学校の芸術鑑賞のイメージから眠くなるという固定観念があったんですけど、とても楽しめました。

平原:登場人物がそんなに多くなかったのも良かった。見やすい。

途中で、誰が誰のことを好きなのか、というのを勘違いするシーンがあって、そういうすれ違いはちょっとシェイクスピアっぽいのかなって思えるところもありましたね。まあ、あんまりシェイクスピアは詳しくないんですけど。

 

ー これまでシェイクスピアの作品に触れたことはありますか。

萬屋:僕はあんまり。そんな文学的な人間じゃなかったので…。

平原:『ロミオとジュリエット』を昔の映画で観たくらいですね。でも今回の作品を見てちょっと『冬物語』が気になって。どんな話なんだろうって興味を持ちました。生まれてきた子供を殺そうとしたり。そんな残酷な話シェイクスピアって書くのかなって。

大島:私は『ロミオとジュリエット』も名前だけ知ってる感じだし、他の作品も読んだり観たりはないです。でも、わかんなくても全然大丈夫、楽しめた。

 

ー 正直、このような演劇を他にも観てみたいと思いましたか。

萬屋:僕は西区に住んでいるので、コンカリーニョの存在は知っていましたし、演劇や音楽が根深い地域だなって思うので、またなにか機会があれば。

大島:私は、なんだろう、劇場でもらったチラシの束の中の、素敵なデザインのものには惹かれましたね。音楽のCD買うときも結構ジャケットとかで惹かれることが多いんです。このデザイン好きだな、って「見た目」が大事かも。

平原:今年の秋ぐらいにオープンするんでしたっけ、札幌市民交流プラザ。オペラとか、バレエとかコンサートとかそういうのもいっぱいやるんだな、って思って。そういうものは、大金払ってでも一度は見てみたいな、と思いました。ミュージカルとかもありかなって。

いつもテレビでしか俳優を観る機会はなかったので、舞台芸術にお金払うのもありだなって、今回の作品で思いました。

 

とりあえず1回目を観てみないと


ー 演劇の観劇人口を増やすにはどうすればいいと思いますか。

萬屋:やっぱり何事も、まず一回観てみないとどうしようもないんだと思います。タダなら観るのありだなって思う人もいれば、これを機会にもっと観たいって思う人もいると思うし。一度ライブを観に行かないとその良さ、その演出の良さが伝わってこない。音楽ライブだってスポーツだって、画面越しより生で見た方が良いに決まっている。

タダで招待するとかしてでも、まずはとにかく一回観てもらわないと。結局いつも来ている人が同じ人たちで循環しちゃっているんだと思うんで。新しいお客さんが入ってくるようにするのに、難しく考えずにまず観てくださいよ、ってするのが一番良いんじゃないかなって。

大島:音楽のライブとかにおいても、友だちが出ているからって、まぁタダって言われたら行くかもしれないけれど、ちょっと安くするから来ない?って言われても…。やっぱりファンじゃないアーティストにお金出すのは、難しいです。…うーん、だから、今回の企画みたいな形でも無料招待とかがあったら、1回目観に行きやすいと思います。

たとえば、こういうのはどうですか。1回観に行った人が友だちを連れて2回目行ったら、いくらか割り引かれますよって。どんな方法でも、やっぱり1回どうにか足を運んでもらうことが大事かなと思いました。

平原:野外でやってもいいかもしれないですね。大通公園とかにもステージありますよね。お金を払って観る人はちゃんと席も用意されるけれど、ちょっと通った時にもちらって見られるようにして。「なんか面白そうだな」って思う人がいたら、その人は次はお金を払って観てくれるかもしれないし。ちらっとでもその臨場感を体験してもらえたらいいかもしれないですよね。

大島:面白かったらTwitterとか口コミで広がらないですかね。劇団とか関係者じゃなくて、実際に見た人とかがツイートするなり投稿するなりして口コミで広まったら、身内の意見じゃなくて第三者の客観的な批評で興味を持つってこともあるのかも。

 

ー このあとつぶやきますか?(笑)

大島:ああ、そうしようかな(笑)

 

マイナスなイメージは決してない


ー 皆さんは演劇に対してどんなイメージを持っていますか?

平原:私の中高の友だちが演劇部の子だったんですね。すごく仲のいい子だったんだけども、なんだか変わった子でした。学校で生徒会とかもやってた気がするんですけど、演劇部入ったって聞いて、やっぱり変わってるなって。すごく情熱のある子だったので、高校生のうちから目標が見つけられているというのがすごくうらやましいなとは思いましたね。

演劇自体に対するイメージは、『ガラスの仮面』(漫画)を読んでいたのですごく憧れはありました。演劇は遠い世界、しかもテレビの中の世界かなって思っていました。

大島:今回の前に見たのが中学校の行事で、正直眠くなるんじゃないかって。難しそうって。そんな感じで、演劇は全然関わりのないものでした。でも、高校入って、演劇やってる子が友だちにできてからちょっと身近になったかな。

萬屋:そうですね。演劇に対して悪いイメージがない、というよりも、どちらかというと好きなんですよ、でも観ないんです。たまたま機会があって観たら面白いなって思う。

あと、知り合いに劇団入っている子がいて、内部事情とかも聞いていたので、演劇やっている人は大変なんだなって印象です。

 

ー あまりマイナスイメージはないんですね。

萬屋:マイナスではなく、ちょっと変わってるというイメージがあります。劇団四季とかありますし、マイナーって感じともまた違うんですけど。

 

ー マイナスイメージがないのに演劇を普段観ないのはどうしてなんでしょうか。

萬屋:んー、何でしょう。…今日劇場入った時でも思ったけど、劇場だけで会う知人みたいな人がみなさんいらっしゃるのかなって思いました。こういうの観る人はいつも同じ人なんだなって。どのジャンルでもそうだとは思うんですけど、その中に入りづらいというか、僕が入る世界じゃないのかなというような、そんな風に感じることもありました。

あと、授業で習う音楽や美術は身近なので、美術館や音楽ライブには行きやすいのかもしれないです。演劇は学校でも学ばないので敷居が高いと言われますね。

 

普段観ない人の考えを知る


ー 札幌演劇シーズンのチケット価格は3000円ですが、こちらはいかがですか。

平原:映画と同じようにレディーズデーとかそういうのを設けると、行ってみようかなってなるかもしれませんね。

佐久間:私は、演劇を観たいなって思った当初は親がお金を出してくれていました。何本か見て、自分もお金出したいって思って初めて、おこづかいから出しました。「観たいと思ったものにお金を出す」ことが初めてだったので、チケット値段高いなーとか、お金かかるなら観たくないなーとかは感じなかったですね。

私は家族が演劇をやっているので、演劇が身近な人と演劇との距離の遠い人だったら全然考え方が違うんだと思います。だから多分、演劇を普段観ない人の意見を知るって大事だと思います。演劇やってる側にはわからないことがたくさんある。それを知る機会として、こういう企画があるんですね。

 

ー ズバリ、今日の作品は3000円に値したと思いますか?

萬屋:僕は思いましたね。

平原:どうでしょう、私は節約家なので(笑)。まぁでも、観終わってからなら出せるかな。

少し話は逸れますが、私、安室奈美恵の引退コンサートに応募したら当たったんですね。今まで一度もライブに行ったことはなかったけれど、これで最後なんだって思うと10,000円でも出せちゃう。なんでしょう、やっぱりレアなのがこういう気持ちにさせたのかな。

大島:観たあとなら1500円(学生料金)払ってもいいなって思います。でもやっぱり、内容を何も知らない状態だと高校生にはちょっと厳しいかなって。興味があったら出せるとは思うんですけど。演劇ってそもそも遠いものだったので、何も知らないで1500円払うのはちょっと厳しい。

 

ー こういう無料で招待したり、座談会を開いたりする企画はこれからもあったほうがいいと思いますか?

大島:それこそ、1回目見る機会を作ることになるので、いいと思います。ありがとうございました。

 


 

はじめて演劇を観る方と、普段見慣れている方とでは演劇に対する印象が大きく違うことがわかりました。「マイナスイメージはない、観たら面白いんだろうとは思う。でも、だからと言って観に行こう!とはならない」ということでしょうか。

広報の充実、劇場でのサービス、作品のクオリティ、、、様々な要因が考えられると思います。しかし、いずれにせよ「とりあえず1回目観てもらうこと」が大切です。次も観たいと感じるかどうかは、1回目次第。

ご協力いただいた皆様、誠にありがとうございました!!

 

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