『アンネの日記』。誰もが一度はこのタイトルを耳にしたことがあると思います。ナチスの迫害から逃れるために潜んでいた隠れ家の中で、ユダヤ系ドイツ人である アンネが書いた、日記様の文学作品です。
あの時、何があったのか。日記の中に書かれた事実が、11月2日よりやまびこ座にて、座・れらによる舞台作品となってよみがえります。
今回は、『アンネの日記』に出演する佐藤健司さん、早弓結菜さん、さとうみきとさん、西村知津子さん、フクダトモコさんの5人へインタビューし、作品の魅力を語っていただきました。
お芝居で訴える
ー 「座・れら」という劇団について教えてください。
佐藤健司さん:社会問題をテーマとした演劇を上演することが多いです。『不知火の燃ゆ』(2014)は水俣病を、『空の村号』(2015)は福島原発事故を、それぞれテーマとして扱いました。
この『アンネの日記』も「子どもたちを巻き込むような戦争を二度と繰り返したくない」という、演出の鈴木喜三夫さんの気持ちが強く込められています。ただの「物語」としての舞台ではないような気がします。
早弓結菜さん(以下、早弓):『不知火の燃ゆ』は、私が初めて観た「座・れら」の舞台でした。それまでは、中学演劇やファンタジー要素の多い作品をよく観ていたということもあり、大きな衝撃がありました。お芝居で、こんなに訴えられるんだって。
さとうみきとさん(以下、さとう):『アンネの日記』は、鈴木喜三夫さんが長年の演劇人生をかけてつくってきた作品です。何が起こるかわからない今の時代だからこそ、という喜三夫さんの強い意向で上演することになりました。
フクダトモコさん:若い女の子が足りていないので、若い女の子に入ってほしいです(笑)
さとう:劇団員も募集しています。年齢も幅広いですよ。上が86歳で、下が21歳!(笑)
あとは、札幌演劇誌「風」を発行しています。次号は早弓さんの文章が載っていたり、「れら」についても詳しく書いてあります。一冊500円ですのでぜひご覧ください。
ー 役どころを教えてください。
早弓:私は主人公の「アンネ」役です。隠れ家に入ってきたばっかりのアンネは、好奇心旺盛で感受性豊か。隠れ家で2年間を過ごしていくうちに、どんどん大人になっていく。子どものアンネと大人のアンネ、切り替えをするのが難しいです。
さとう:僕は、支援者の「クラーレル」の役をやります。ストレスや試練の中、危険を承知して支援をする人間です。狭い隠れ家に住みながら悶々と辛い生活をしていた人々とはまた違った苦しみを抱えながら、それでもナチスから守ってあげたいという思いをもって生きていた。
ー 役作りにおいて、大切にしていることがあれば教えてください。
西村知津子さん(以下、西村):役作りはまず、役を知ることです。そのために、台本を読んで、読んで、読みまくる。で、きちんとした台本だったら、読めばわかるようにできて いるんです。逆に、下手な台本だったら、わからないようにできています。
さとう:不親切な台本とかありますよね。
西村:不親切なものとか、演出家自身が書いて演出しているものは、本には書かれていなくて、演出家の頭のなかにあることを言われる場合があって、それはわかりませんね。ちゃんと書いてほしい、と思います。きちんとした台本は、読めばすべてがわかるように書かれている。
さとう:『アンネの日記』は。
西村:『アンネの日記』は、外国で書かれたものを日本語に翻訳しているので、多少無理はあります。言葉の使い方、選び方なども、普段自分たちが使わない表現があるときは難しいと感じます。でもこの難しさや古臭さが当時の時代にあっているとも言えますね。
役作りとは何か、シンプルに言えば、自分の役がどういう役割を持っているのかを理解して、それを実現させるためにはどうすればいいかを考えることです。
本物をリアルに
ー 『アンネの日記』は実在した出来事がもとになっていますが、どんな気持ちで演じていますか。
さとう:どんな時代だったんだろうとか、どんなことが起こっていたのかということを、しっかりと考えないといけない。
西村:実在している人物を演じることって、今の自分とすごく密接なつながりがあるから、リアルですよね。だから空想の人物を演じるのとは違って重みがあります。実際にそういう舞台では、お客さんも、実在した人物と役者とをオーバーラップさせて、本当にその人が出てくるような期待をもって観てるんです。
さとう:過去のことだけれども、もう一回、舞台に立ち上げられたら。現実がここにあるって、思ってもらえたらいい。
西村:そうです。その通りだと思います。
ー 最後に、舞台を観に来るお客様へのメッセージをどうぞ。
さとう:『アンネの日記』は喜三夫さんがもう長いことやってきている作品なのですが、僕は10〜20代の方にもすっごく観ていただきたいです。外国の話ということで興味がわきづらいかもしれませんが、もっと新鮮な気持ちで観に来てもらえたらと思います。18歳以下は500円です。是非。
西村:若いときは、戦争を扱うお芝居は怖くて大嫌いでした。でも「お芝居だからこそ」、恐怖を乗り越えて現実と向き合うことができました。本を読むのが苦手という人で も、お芝居を観て、何かが少しでも変わってくれたら。そんな舞台にしたいです。
2017年10月12日
市民活動プラザ星園にて