2019年7月16日〜21日、シアターZOOにて開催される、「小さい演劇祭★第4回男芝居フェスin札幌」。これまで東京で開催されてきたソフトとしての演劇祭が、札幌で初開催されるということで注目を集めています。
今回、主催・札幌ハムプロジェクトのすがのさん、渡辺さん、竹屋さんに本演劇祭についてのお話をうかがいました。
そこで見えてきたのは、ただのイベントにとどまらない、札幌で演劇を続けていくことへの大きなチャレンジでした。
出演団体も発表され、盛り上がりを見せている新しい演劇祭。その魅力に迫ります!
テーマは「男芝居」!
参加9団体は、15〜20分の短編演劇を上演します。個性豊かな様々な演目が上演される予定ですが、どの作品にも共通しているテーマは「男要素が絡む」ということ。
男だけが参加できるという意味ではありません。「男」に関しての精神的・肉体的な線引きに関しては参加団体側の判断に委ねられています。
1回の公演で3団体が短編演劇を上演します。演劇シーズン参加団体やTGR受賞団体も登場しますが、この機会に観たことのない団体の作品もお楽しみいただけます。
また、賞レースとは関係ないエキシビジョンとして、主催・札幌ハムプロジェクトが公演を行います。こちらのチケットは投げ銭形式で、お客様が自由に金額を決めていただけます。
公式サイトには、各出場団体の紹介も掲載されているので、ぜひご覧ください。
また、観客賞への投票は参加9団体すべてを観劇したお客様しかできないため、フリーパスを買って9団体ご覧いただければより楽しむことができます!
次に、ソフトとしての演劇祭とはどういうことか。この演劇祭のコンセプトや目指しているものを紹介します。
演劇関係者向けの内容かもしれませんので、ご了承ください。
劇場、お金、権力に束縛されない
札幌で初開催される「小さい演劇祭」は、ソフトとしての演劇祭と説明されます。その特徴は、主に3つあります。
- 場所に束縛されない
- お金に束縛されない
- 権力に束縛されない
一般に演劇祭というと、劇場が主催し、多大な助成金が必要で、またスポンサーや行政などといった権力関係が関わってきます。いまの札幌で開催される演劇祭を考えてみても、多くが劇場やお金、権力とは切っても切れない関係にあります。
劇場や権力が裏につき、お金をかけられるということは、イベントを安定して継続させたり大勢を巻き込んだりするために、とても効果的です。
この形式の演劇祭を、札幌ハムプロジェクトは「ハードとしての演劇祭」と呼びます。
一方、裏を返せば、劇場の都合や助成金を得られなくなって開催できなくなったり、権力(えらい人)の意向に沿わなくてはならなかったりといった問題点も出てきます。これは、芸術活動とは何かといった根本的な問いに関わってきます。
では、アーティスト(演劇創作活動に関わる人々)が自立して自由に、場所やお金、権力に束縛されない演劇祭はどのように実現されるのか。試行錯誤の結果、札幌ハムプロジェクトがたどり着いたのが「ソフトとしての演劇祭」でした。
システムありきの演劇祭
では、どのようにして場所、お金、権力から自由になれるのでしょうか。
ここで重要になってくるのは、どこでやっても成立し、お金のかからないシステムを構築することです。
一つずつ見ていきます。
開催費用はチケットノルマから
小さい演劇祭に参加する団体に必要なのは、35枚分のチケットノルマ(=参加費)のみです。
各団体は個別にチケットを販売し、その売り上げに応じてキャッシュバックを得ることができます。つまり、35枚以上販売できれば、その時点で赤字にはなりません。
また、ノルマ未達分を演劇祭終わった後に精算するため、事前にお金を準備する必要はありません。
さらに、照明や音響などといったスタッフは各団体が手配する必要がありますが、希望があれば札幌ハムプロジェクトのスタッフが「簡単」なものであれば無料、「簡単」
※簡単の定義は、「M0とMラスのみ。「無音」という指定も可」と定められています(詳しくは公式サイト)。
主催者は、各団体からの参加費から劇場費や賞金、スタッフ人件費などの諸費用をまかないます。
このシステムにより、助成金を必要としない演劇祭を継続させるという仕組みです。
観客賞は10万円!1人2票の仕掛け
すべての作品を観たお客様に限り、1人2票の投票権を獲得できます。
お客様は面白かったと思う作品に投票し、見事観客賞に選ばれた団体は賞金10万円が授与されます。
団体としては、チケットを販売枚数に応じてキャッシュバックが入り、さらにたくさんの人に投票してもらえれば賞金も獲得できるため、参加することで大きなメリットがあります。
観客賞をもうける上での問題点は、演劇作品としての投票か、出演者の人気投票かの区別がつけづらいということです。
各団体からチケットを買ったお客様は、その団体に投票したくなりますし、そうなると結局たくさんチケットを販売できた団体が観客賞も得ることになり、お客様の奪い合いのような状況が発生しかねません。
それは、誰からチケットを買うか、誰が人気かといったあらそいに発展し、権力関係がかかわってくるおそれもあります。
そこで考えられたのは、必ず1人2団体に投票しなければ無効票になるというシステムです。
お客様は、まず自分の好きな団体に投票するでしょう。しかし、もう1票は必ず違う団体に投票しなければなりません。同じ団体に2票入れたり、1票のみしか入れなかった場合、それらは無効票になります。
すると、ファンの団体のほかに、もう1票はどこに入れようかという考えになっていきます。お客様は、ファンではなかったけれど、これは面白かったという団体に入れるはずです。
こうして、出演者の人気投票ではなく、公平に、真に面白い作品はどれかを評価する投票を実現できます。
そのほかに選考委員会によって決められる大賞と優秀賞がありますが、大賞は賞状と1万円、優秀賞は賞状のみなので、最も大きい賞が公平な観客賞になります。
竹屋光浩
どこででもできるシステム
以上のようなシステムで開催すれば、開催場所は選びません。参加団体さえいれば、どこででも開催することができます。
これまで過去9回東京で開催されてきた「小さい演劇祭」が、10回目にして札幌に上陸できる理由もここにあります。札幌でできるということは、他のどの地域でもできるということです。
これが、場所、お金、権力に束縛されない、ソフトとしての演劇祭です。
すがの公
新しい形の演劇祭が札幌で開催されます。男要素の絡む短編演劇、いったいどのような作品が集まるのかとても楽しみです。どの団体が観客賞・賞金10万を獲得するのでしょうか…!
チケットは、1ステージ券よりもフリーパスがおすすめです。1000円の違いで、観られる作品が3倍に増えます!
小さい演劇祭シリーズ運営委員会(札幌ハムプロジェクト★東京支部)
otokosibai.fes@gmail.com