札幌市民交流プラザ館長・石井正治|みんなで創る札幌演劇シーズン2018-夏

地下鉄大通駅から徒歩2分、札幌の街中に「札幌市民交流プラザ」という新しい文化施設がオープンします。

これまでにない大規模な劇場や機能性抜群のスタジオ、さらには図書館も兼ね備えた施設となっており、札幌の文化芸術の新たな拠点として注目を集めています。これからの札幌演劇の発展にも大きな貢献を果たすでしょう。

「札幌市民交流プラザ」の概要と可能性を紹介するとともに、札幌演劇シーズン特別企画として館長の石井正治さんにインタビュー。施設の役割や札幌演劇との関わりについてお話していただきました。

[toc]

札幌市民交流プラザとは

札幌市民交流プラザ

札幌市民交流プラザ全体図(公式サイト より)

札幌市民交流プラザは、「札幌文化芸術劇場 hitaru」「札幌文化芸術交流センター SCARTS」「札幌市図書・情報館」の3つからなる複合文化施設です。 オープンは2018年10月7日を予定。

札幌市文化芸術基本計画では「市民の誰もが文化芸術に親しむことができる」ことが必要と考えており、交通の便が良く、多くの人が文化芸術に親しみ、交流できる場所が求められていました。そのため、市民交流プラザは地下鉄大通駅から西2丁目地下歩道でつながり、とても行きやすい場所に位置しています。


札幌文化芸術劇場hitaru

札幌文化芸術劇場hitaru(公式サイト より)

札幌文化芸術交流センター

SCARTSスタジオ(公式サイト より)

「札幌文化芸術劇場 hitaru」は、北海道最大規模の広大な空間を持つ劇場で、オペラやクラシックといった大規模な芸術公演が可能です。2300超の客席があり、各種コンサートだけでなく大規模な会議や式典など、様々なジャンルの催しに適しています。

hitaruが「発表の場」なら、SCARTSは芸術を「育む場」。SCARTSコートやSCARTSスタジオは、講演会やワークショップなど多目的に利用できます。さらに、札幌の文化芸術を支えるための人材育成事業や調査研究事業なども行われます。

図書館

図書・情報館(公式サイト より)

併設される新しい図書・情報館は、「WORK」「LIFE」「ART」の3つのエリアに分かれており、分野ごとの専門書に特化しています。

もちろん、札幌市民「交流」プラザですので、同じ分野に興味を持った人同士が会話できるスペースや、仕事の打ち合わせ等に活用できる部屋も用意されています。

「創造都市さっぽろ」の実現の大きな一歩となる、全く新しい文化施設「札幌市民交流プラザ」。文化芸術をまちづくりの重要な柱にする札幌の本気度がうかがえます。今からオープンが待ち遠しいです。

参考 札幌市が考える「文化芸術」と「創造都市」の在り方をわかりやすく解説


参考
札幌市民交流プラザ公式サイト

館長 石井正治さんインタビュー

次に、札幌市民交流プラザ館長の石井正治さんに、「札幌文化芸術劇場hitaru」の目的と展望、札幌演劇との関わりについて伺いました。

札幌市民交流プラザの登場により、札幌の文化芸術はこれから先どうなっていくのか。札幌演劇はどのように市民交流プラザを活用できるのか。石井さんのお話は、札幌の文化芸術の明るい未来が見える、希望に満ちたものでした。

石井 正治(いしい まさはる)

昭和43年生まれ。

平成25年10月から平成28年3月まで、札幌市観光文化局文化部市民文化課国際芸術祭担当課長として、札幌初の国際芸術祭である「札幌国際芸術祭2014」の運営及び「札幌国際芸術祭2017」の開催準備に携わる。

平成28年4月より札幌市市民文化局文化部文化振興課長、平成29年4月からは札幌市芸術文化財団へ派遣となり、札幌市民交流プラザの開設準備を進めている。現在は札幌市民交流プラザ初代館長。

hitaruの使命

札幌市民交流プラザ内の「札幌文化芸術劇場hitaru」は、今まで北海道には全くなかったタイプの劇場です。客席から見える主舞台の上手と下手、それから奥にもかなりのスペースがあるんです。このような舞台を多面舞台と言うんですけれども、これにより、これまで札幌では施設的に実現できなかった規模のオペラやバレエなどを上演できるようになります。

主舞台しかないと、大きな舞台美術を一回配置してしまうと次の舞台転換が難しくなりますよね。でも多面舞台では広いスペースがあるので、オペラの次の幕を上演する時にそれぞれのメインになるセットを忍ばせておけるんです。

札幌文化芸術劇場hitaru(公式サイト より)

そうするとお客さんに休憩をとっていただいている間に舞台を鮮やかに、全く違う世界に変えられる。グランドオペラと言われる、大規模なオペラ上演が可能になります。それを実行できる劇場ができたということで、私たちは、この劇場の機構をしっかり活かせる演目を提供しなければいけないという使命がある。

初年度は、こけら落とし公演として、10月7日のオープンの日にオペラ公演『アイーダ』を上演します。その次は新国立劇場バレエ団の『白鳥の湖』を。2018年9月に閉館するニトリ文化ホールの役割を後継しつつ、さらに主催事業としてこういった国内外の優れた舞台を提供していきます。

公演情報 ヴェルディ:歌劇『アイーダ』
公演情報 新国立劇場バレエ団『白鳥の湖』

市民の創造性を活かす空間

札幌市民交流プラザ3階には「クリエイティブスタジオ」という劇場の主舞台と同じ広さのスペースがあります。

ここではオペラなどの大きな舞台の最終的なリハーサルなどもできますし、あるいは音楽リサイタルやダンス、演劇公演など様々な使い方ができます。客席は可動式なので、囲み舞台のような使い方もできます。客様のクリエイティビティによって様々に使っていただける空間なんです。ここじゃなきゃ観せられないものをしっかり観ていただきたい。市民の皆さんの自発的な創造性に基づいたパフォーマンスなどにも挑戦していただきたいです。

まさしく、「作品との出会いを通じてもたらされる感動や新たな視点から育まれる市民の創造性を主体とした、文化芸術活動の拠点として機能していくことも目指す」と公式サイトにあるとおりです。

クリエイティブスタジオ(公式サイト より)

 

クリエイティブスタジオの主催事業というのも決まってまして、来年3月まではラインナップが出ています(こちら)。こけら落とし公演としては、Co.山田うんさんのご協力で、レパートリー作品の『結婚』を、その後、Co.山田うんさんのもとでオーディションを実施して集まったメンバーとともに『春の祭典』を上演する、という二本立てです。

Co.山田うん『結婚』『春の祭典』

 

全国の小劇場などでは実験性の高い様々なパフォーマンスがされています。その中から、札幌の方に観ていただきたい公演を上演したいですし、あるいは彼らと一緒にものづくりをすることで、市民の皆さまに刺激を受けていただいて、それを次の創作活動につなげて欲しいです。

劇場とクリエイティブスタジオ、それぞれの特徴を活かして、これまで札幌では観られなかったものを上演する場所を目指します。また、受け身で観るだけではなくて、皆さまが新しい文化芸術に触れることによって自らの創作活動のレベルアップに繋がるといいなと思っているんですよね。

文化芸術に関心のある人を増やす

このようなパフォーミングアーツに興味を持っていただける層を増やすというのも、大きな使命としてあります。街中で様々な舞台芸術に触れる機会を作っていくことで、少しでも文化芸術に関心のある人を増やしていけたらいいなと。

札幌演劇シーズンは、全国的に見ても類を見ない素晴らしい取り組みです。しかし、まだまだ動員を増やしたいし、増やさないと、皆さん演劇だけでは生活できない状況だということは否めません。

そういう意味では、「札幌文化芸術劇場hiratu」をきっかけに演劇に関心を持っていただける方を増やしたり、演劇に限らず多くの芸術に出会っていただける場所にしたい。いま札幌で行われている芸術の会場に、もっと多くの方々に足を運んでいただきたい。

演劇に接点を持つ人を増やす

札幌演劇は、他の地域よりも賑わっているほうだと思います。しかし、それでも札幌は人口195万の都市なので、人口あたりの観劇頻度(そのうちの何%の人が演劇を観ているか)は、まだまだ低いと思うんですよね。

芸術分野が活性化していくためには、何よりもお客様が大事です。たくさんのお客様に観ていただいて、収益化していくことは必要不可欠です。資金的な基盤があると、古典的な作品も実験的なものも含めて、作品内容に打ち込める。とにかくまずは演劇に接点を持つ人を増やしていくことが大事です。

私たちは、札幌市民交流プラザだけを賑わせてお客さんを集めるだけではなく、札幌にある既存の文化インフラや地元アーティストの舞台に足を運んでいただくことも目標にしています。これから一緒に、札幌の文化芸術を盛り上げていきましょう。


札幌市民交流プラザは、全く新しい文化施設として、札幌の文化芸術のさらなる発展において欠かせない存在となるでしょう。

札幌演劇がこれからどのように関わっていくのかにも注目です。札幌市民交流プラザで演劇シーズン参加作品が上演される日もそう遠くないかも…!?

ぜひ、「札幌市民交流プラザ」に足をお運びください。


参考
札幌演劇シーズン2018-夏公式サイト