札幌演劇シーズン作品選定部 藤村智子|みんなで創る札幌演劇シーズン2018-夏

いよいよ 7月28日に開幕が迫った、2018-夏の札幌演劇シーズン。札幌で生まれた名作はもちろん、世界で生まれた素晴らしい作品の数々が、札幌各地の劇場で演じられます。

今回は、札幌演劇シーズン作品選定部の藤村智子さんにインタビュー。本年4月まで札幌劇場連絡会々長として「TGR 札幌劇場祭」の運営や審査員としても演劇に関わっておられる藤村さん。演劇シーズンの作品の魅力や、TGR の視点から見た劇場と札幌演劇の現状についてお話を伺いました。

藤村智子

札幌市芸術文化財団、北海道文化財団コーディネーターを経て、現在同財団理事。TGR札幌劇場祭草創期の2006年から3年間TGR審査員。2012年から2018年4月迄札幌劇場連絡会会長、現在顧問。2013年から札幌演劇シーズン作品選定に関わる。他に札幌市芸術文化財団評議員、北海道演劇財団評議員、NPO法人コンカリーニョ理事。

演劇シーズンにふさわしい作品選び

ー 藤村さんは演劇シーズンの作品選定に関わっていますが、ズバリ、作品を選ぶ際の基準はありますか。

明確な基準はありません。たとえ基準を設けたとしても、作品全体の説得力があるものがやはり残ってきます。審査員によっては、それぞれの好みのようなものはあると思いますが。

私の場合は、骨格のしっかりしている作品が良いと思っています。舞台に立つ役者さんがしっかり訓練されており、音響、照明や細部の演出にまで神経が行き届いている、そういうものを基準に選びます。そういう作品は、やっぱり説得力・力強さがありますからね。心に届くんだと思います。

 

ー 音響や照明などのスタッフワークも作品選定の重要な要素として関わっているのですね。

それはとても大事なことで、音響や照明によって作品の出来栄えは大きく違ってきます。シーンにマッチした音響、照明、衣装、小道具、大道具の力は大きな感動を生みますし、作品の完成度を高める上でとても重要な役割を果たします。

 

ー 演劇シーズンの作品はどのような世代をターゲットにしているのでしょうか。

幅広い年代層に見て頂けるように選定しようとしていますが、難しいところもあります。

演劇シーズンの作品は公募制なので、必ずしも各年代層向けにバラエティーに富んだ作品が集まるわけではないし、また中には選定委員が観たことのない劇団も…。すべての作品には、映像を添付することにはなっていますが、映像だけで作品を選ぶというのはなかなか難しい。観たことのある劇団ならば、想像力を働かせることはできるのですが。ところがあまりなじみのない劇団の応募だと、判断が難しくなります。私たちの力量が試されますね。

 

ー 今後の演劇シーズンに取り入れていきたい作品の要素や方向性があれば教えてください。

札幌の劇団は、オリジナルの脚本を上演しているところが多いです。でも、国内外問わず古典や既成作品にももっと挑戦してほしいです。優れた古典作品は、劇団オリジナルの脚本にも必ず良い影響を与えると思います。

この間、札幌座が『暴雪圏』という作家・佐々木譲の作品を上演しました。客席を見ると、譲さんの作品のファンらしい、普段劇場であまりお見かけしない方たちがたくさんいらっしゃったように思います。このような作品を取り上げることも観客層の広がりに繋がりますね。古典・既成作品の上演は、自分たちの力になると同時に、新たな観客の開拓にもつながると思います。

 

シーズンとTGRの相乗効果

ー シーズンのおかげもあり、少しずつ発展して来ている札幌演劇。しかし、まだ十分とは言えないと思います。札幌演劇の発展が今後も続いていくためにはどうしたらいいのでしょうか。

「いい作品を創ること」でしょうね。とても難しいことだけれど、これ以外にないのでは。どんなにチラシを配って宣伝し、一度はお客さんがうまく集まったとしても、作品が面白くなかったら二度目はありません。

そしてこれは、一つの劇団がずっといい作品をつくり続けるということだけではなく、いろいろな劇団から途切れることなく良いものが出続けなくてはいけない。そのためには劇団同士が互いに切磋琢磨することが必要でしょうね。

 

ー 演劇シーズンが出来てから、札幌演劇はどのように変わったのでしょうか。

演劇シーズンに参加することが劇団のひとつの目標になってきつつあるのではないでしょうか。

毎年11月に開催されている「TGR 札幌劇場祭」には新人賞、大賞など各賞があり、大賞を受賞した作品は演劇シーズンで上演できるというシステムができていますが、演劇シーズン自体は公募制ですからTGRに関わりなく自分たちの自信作を応募することができます。

演劇シーズンに参加することで、集客力も含めて、力をつけてきている劇団があるように思いますね。

TGRと演劇シーズン、この2つがあることが相乗効果を発揮して、劇団にとっても観客にとっても良い演劇環境が用意されていくことが大事なのだと思います。TGRも演劇シーズンもまだまだやらなければならないことがありますね。