同い年タッグが苦しい愛を描く|パーソンズ ×fireworks提携公演

11月21日(水)より上演される「さよならノクチルカ」。劇団パーソンズ劇団fireworks のはじめての提携公演となります。

脚本の米沢春花さん(劇団fireworks)と演出の畠山由貴さん(劇団パーソンズ)のお二人に公演についてお話を伺いました。

公演情報 劇団パーソンズ×劇団fireworks 提携公演 『さよならノクチルカ』11月21日〜23日

優しいがゆえの「苦しい愛」

演出の畠山由貴さん(劇団パーソンズ、写真左)と脚本の米沢春花さん(劇団fireworks、写真右)

ー 劇団パーソンズと劇団fireworksのはじめての提携公演ということですが、この企画の立ち上げ経緯についてお聞かせください。

畠山由貴さん(以下、畠山):私から米沢さんに熱烈なオファーをしました。2016年のあけぼの学校祭公演『Sea ring light~歩く姿は潜水艇~』を見て、すごく良いな、一緒にやれたらいいなと思っていました。なかなかタイミングが合わずにいたんですが、その後fireworksの本公演である『沙羅双樹の花の色』を見て「やっぱり一緒にやってみたい!」と。

その後米沢さんがパーソンズの劇を見に来てくれて、そこから企画が進んでいったという感じです。

米沢春花さん(以下、米沢):オファーを受けたときは嬉しかったです。パーソンズは、私たちとアプローチの仕方は違えど、似ているような、かつお互いに無いものを持っているような感じがしていました。だから一緒にやりたいって言ってくれた時は「やるやる!」みたいな(笑)

畠山:そこからはわりとトントン拍子に。

 

ー 実際に一緒に稽古を進める中で、お互いの作品や団体へのイメージはいかがでしたか。

米沢:パーソンズは、ちゃんと土台から丁寧に作っているなと思いました。しっかりと、かつ繊細な作品になっているというイメージです。パーソンズの役者さんが良いなと思うのは、そこの土台作りがしっかりしているから、それが目に見えて舞台上で活きているからだと思います。あとみんな女子力が高い。

畠山:女子力高いって、イメージってだけね(笑)

米沢:パーソンズさんと一緒にやり始めてから、私も髪とかスキンケアに少し気を配るようになりました(笑)

畠山:私は、公演を見ているときはすごく感覚的に作られていると思っていました。脚本づくりもそうだし、演出においても「今これが良いな」と思ったものをどんどん積み重ねていく作り方なんだろうなと想像していたんですが、実際は全然違ったんです。実際に脚本を見て、演出について少し話し合っているときに、実はものすごく計算されていて、考えて作られてるんだということに気づきました。すごく論理的に筋道立てて考えられていて、それを脚本に起こすときに言葉が感覚的になる。私は逆で、感覚で描きたいものを捉えて、それを文字に起こすときは辻褄が合うようにお話の流れを論理的に作るってやり方なので、その真逆さがすごく面白いなと思いました。

米沢:それは私もすごく感じましたね。こんなに雰囲気とかは似てるのに、こんなに作り方が違うんだ!ってね。

畠山:見てるときは全然気づかなかったのにね。

米沢:私の作品は「優しいね」という感想をいただくことが多いんですが、実は自分の中でそんなに優しいと思ったことはなくて、「優しく見せかける」のがすごい得意なだけなんです。「良い人しか出てこないね」とかも言われるんですが、由貴ちゃんが唯一、「優しくない話だ」って言ったのを聞いて「あ!そうなんだよ!」と思いましたね。さらにそこで「愛だよ」って言われて、私は救われた気持ちになりました(笑)

やっぱりアプローチの仕方は違えど、同じところに辿り着けたのが私の中で初めての感覚でしたね。

畠山:ヨネの作品は、最初読んだときに「暗い話だな」って思ったんです。すごく苦しいとかすごい悲劇が起こってるわけではないんだけど、第一印象としてそう思ったんです。『さよならノクチルカ』ってタイトルがそもそも切ない部分を担っているし。

稽古の中で「もしかしてこれ誰も救われてないんじゃない?」ってことに気づいて、優しいタッチで描いているけど、物語とか人間の生き様は優しくはないんだなって気づいて。でも誰かが誰かのことを大事で、誰かのことを救いたくて頑張ってもうまくいかない、っていうかけ違いが起こっているから「苦しい愛」だなと思ったんです。その物語を私が演出することによって、どんな作品になるのかすごく楽しみです。

米沢:私がもし演出をつけていたら「優しい話だね」で終わってたかもしれないので、その優しさのメッキが剝がれた時に何が残るんだろうっていうのがすごい楽しみですね。

 

ー 優しく見せかけて苦しい愛…とても気になります。この脚本は何をきっかけに生まれたんでしょうか。

米沢:私の友達が工場で働いていて、その友達から話を聞く機会があったんです。その時に、「工場でルールを破るとどうなるか知ってる?」って聞かれて、なんだろうと思ったら「泣くほど怒られるんだよ」って言われたんです。それで「めっちゃ面白いじゃんそれ!」って(笑)

苫小牧に稽古にいったときに夜がすごい綺麗だった。でも昼はそうでもないなって(笑)そのギャップとかも面白くて。色がついていないほうがこんなに面白いんだ、こんなに違うんだ、こんなに印象が変わるんだっていうこととかが全部積み重なってできたのが「さよならノクチルカ」です。

畠山:良いタイトルだよね。

米沢:ノクチルカっていうのは夜光虫のこと。夜は光って綺麗なんだけど、昼は赤潮になってちょっと嫌われているんです。

畠山:最初からノクチルカっていう言葉は知っていたの?

米沢:いや知らなかった。たまたまスキューバダイビングをやってみたくて調べていたら、「ノクチルカが見れます」って書いてあって。なんだノクチルカって。

畠山:なるほど笑

米沢:「さよなら夜光虫」にするか「さよならノクチルカ」にするか、それも迷ったけど語感がいいからノクチルカにしました。同じ意味だし。

畠山:面白い!

 

「さよなら」をどう描くか

ー 「さよならノクチルカ」はどんな作品ですか。

畠山:登場人物はみんな優しいです。誰かのことを想っていたり、大事にしたかったり、忘れられなかったり。みんな悪い人ではないのに、そういった背景が合わさると、なんだか切ない空間になってしまう。それをうまく表現できたらなって思っています。

見てくれた人の中では、意見が分かれると思っています。悲しいお話ですねっていう人と、優しいお話ですねっていう人と。物語をきちんと追ってみると、決して優しいだけのお話ではないです。誰も報われなかったり、ちょっと悲しい結末だったり。なんか煮え切らない。すっきりはしないんですよ、決して。でも出てくる人たちはみんな優しいから、その空間を見て優しいお話に感じるかもしれない。

米沢:私は「さよなら」が嫌いなんです。でも、生きていたら「さよなら」しないといけない時もある。「さよなら」ってどんな気持ちで言うのがいいのかなって考えました。

「さよなら=左様なら」は「仕方ない」っていう意味があるようです。「左様なら致し方ない=そうであるなら仕方ない」って。仕方なさ、致し方なさ。私は、この「仕方ない」という言葉がポジティブにも取れるし、ネガティブにも取れると思います。

 

ー 一緒に作品を作っていて、お互いのここは勝てないというポイントはありますか。

米沢:繊細さですね。1から、基盤から作るというか、地に足をつけるというか。私は雑だなって思います。

畠山:ヨネは8ぐらいから始まってる。それがすごいと思います。

米沢:あと、ファンタジーをちゃんと言葉にできる力。言葉の繊細さも勝てない。あらすじとか、直してもらった時「あ、私この繊細さは持ち合わせていないな」って。

畠山:あらすじそういえば直したね(笑)

米沢:ボキャブラリーを一つとっても、その。心臓が止まるとかを、違う言葉で。私は割と強気な言葉というか大雑把に、ぱーーん、こうだよ!みたいなことを、すごく綺麗な言葉に変換できる力。こりゃ勝てないなーって。言葉の繊細さとボキャブラリーのチョイスと。素晴らしいなーって。

畠山:そんなに褒められたことないからすごくもじもじしちゃう(笑)

私もね、ヨネに勝てないところいっぱいあってね。ヨネはそもそも脚本を書き上げる時に、舞台装置とか、舞台美術とかが絵で浮かび上がってくる。そのイメージから立ち上げているから、空間の把握の能力がすごく高い。自分で描きたい世界が、まず舞台美術として描けていて、そこから脚本が書けるっていうのがすごいことだと思います。

あと、行動力は本当に勝てないなって思います。宣伝用の写真撮影をするために苫小牧にいったんですけど、そこでヨネが「せっかくだから工場夜景をみんなで見にいこうよ」って。ほんとに同い年かなって思った、そのバイタリティが。これやったほうがいいよ、これ絶対見たほうが良いよっていうものに対してアプローチする能力がものすごく高くて、すごい体力だなって思います。

 

ー まだ公演前ですが、次回一緒にやるとしたらどうしたいですか。

畠山:次は私が脚本書く?

米沢:んで私が演出やる?ぜひ由貴ちゃんの本でやってみたい。

畠山:絶対すごい面白ワールドになると思うんだよ!今回もすごく迷ったんです。私が書いてヨネに演出やってもらったほうがいいかなって。

米沢:うんうん、今度だからあれだね、逆をやってみよう。

 

ー それでは、最後に意気込みをお願いします。

米沢:作品のことは、私はもう手の届かないところまで出来ているんじゃないかって思っています。あとは、私にできることをします。舞台装置を作ったり。みなさんにいい作品を届けられるようにしたいです。

畠山:私も、もちろんいい作品にはしたいです。今回の出演者のみんなは普段あんまり客演には出たりしないので、お客さんに「この役者さんいいね」って思ってもらえるような作品にしたいです。それが結果として、作品としてもすごく良質なんじゃないかともと思います。

ヨネが舞台装置も作ってくれるし。楽しい豊かな時間になりますので、ぜひたくさんの方に観てもらえたらと思います。


公演は2018年11月21日(水)〜23日(金祝)、ターミナルプラザことにパトスにて。 作品の作り方が全く違う2人による、悲しく優しい物語。ぜひ劇場でお楽しみください。

公演情報 劇団パーソンズ×劇団fireworks 提携公演 『さよならノクチルカ』11月21日〜23日


参考
劇団fireworks公式サイト


参考
劇団パーソンズ公式サイト