【動画&文字起こし】キックオフステージ|札幌演劇シーズン2024-冬

2024年1月27日(土)に開幕した「札幌演劇シーズン2024-冬」。過去に札幌で上演し高い評価を得た3作品が、毎日上演されています。

開幕前、1月11日(木)に札幌市地下歩行空間(チ・カ・ホ)にて開催された「キックオフステージ」では、各団体の代表が作品の魅力について語りました。

本記事では、作品の魅力を知っていただくべく、キックオフステージの内容を一部ご紹介します。観劇のご参考にお読みください。

動画はこちら

弦巻楽団『ピース・ピース』

戸田耕陽さん(MC。以下、戸田) まずは、弦巻楽団代表の弦巻さんにお話聞いていきます。よろしくお願いします。 

弦巻啓太さん(弦巻楽団代表。以下、弦巻) はい、よろしくお願いします。

戸田 この作品、『ピース・ピース』はどういった作品なのか教えてください。

弦巻 この作品は2022年に創作し上演した作品なんですが、3名の女性の俳優が、3組の「母と娘」のエピソードを、それぞれオムニバス形式で展開していきます。分かりやすい言葉を使うと「ホームドラマ」ですね。どなたも共感できるような部分、それは娘だったり母親の立場だったり、それぞれあると思うんですが、どなたにも分かりやすく見ていただけて共感を感じてもらったり、違和感を感じてもらえたりするような作品になってるんじゃないかなと思います。

戸田 今「ホームドラマ」というワードが出ました。演劇を「こういうお芝居です」って言う時に難しいなと思うのが、ジャンルの定義だと思うんです。そういった意味で言うと今回はホームドラマのイメージが一番近いかなという感じですか?

弦巻 そうですね、SFの設定だったり、大昔の話でもなく、現代を生きる3組の家庭の姿を描きました。家庭を描くときにどこにピントを合わせるかっていうところで、今回は「母と娘」という関係性に注目して描いた作品となっています。 

戸田 演劇の面白さの一つが、主人公や登場人物に「自分は似ているな」と思えるところだと僕は思っているんですよね。なのでちょっと、自分にこれ近いな、と思いながら見てもらえたらなと思います。あと、見どころとしてはどういった所があるでしょうか。

弦巻 ありがたいことに、これは2022年の初演の時に「TGR札幌劇場祭」で大賞を受賞しました。さらに、出演俳優の一人、佐藤寧珠が俳優賞を受賞し、彼女の語りや繊細な演技も注目していただきたいです。

また、今回再演するにあたって、劇場が初演と変わり、空間としてとても大きくなってます。舞台美術は「椅子」だけなんですよね。そこを今回はバージョンアップしようということで、金属工芸家の藤沢レオさんに新しく作っていただきました。そちらも見所になってますので、ぜひ劇場に足を運んでいただきたいなと思います、

戸田 今回は、その3人の役者さんが出られるじゃないですか。ずっと出ずっぱりなんでしょうか。

弦巻 はい、3人ともずっと居ます。

この作品は、ちょっと変わった形式の描き方をしています。「語り手」がいて「演じ手」がいるという、一つの役を何人かで分散しながらやったりとかして、よりお客さんが想像しやすいような形式で作っています。

戸田 もう1つ僕が気になったのが、タイトルの「ピース・ピース」。1つは平和を意味するピース(PEACE)、そしてもう1つが欠片を意味するピース(PIECE)で表記していますね。

弦巻 はい。『ピース・ピース』は、ジャズの曲であるんですよね。ビル・エヴァンスという人が作った曲です。

「平和の欠片」って言うとちょっと伝わりにくいかもしれないですけど、イメージとしては、安らぎのかけらというか、心の平穏のかけらというか、そういう大きいものじゃないんだけど、心がちょっと暖まったり、休まったりというような、そういう些細なピースになればいいなと思ってタイトルにしました。

戸田 そこの意図も、ぜひ観に来ていただいて感じ取ってもらえたらなと思います!

OrgofA『Same Time,Next Year-来年の今日もまた-』

戸田 続きまして、OrgofA『Same Time,Next Year-来年の今日もまた-」をご紹介していきます。

飛世早哉香さん(OrgofA代表。以下、飛世) よろしくお願いします。

戸田 今トレーラーを見て、ぱっと見、昼ドラっぽいなぁって感じました。まず、どういった作品なのかというのを教えてもらっていいでしょうか。

飛世 OrgofAが上演する『Same Time,Next Year-来年の今日もまた-』という作品は、アメリカを舞台に、年に一度このホテルで会おうと決めた男女の25年間の物語になります。

戸田 なるほど、織姫と彦星みたいな、年に一回というと、大人の恋愛模様を描いていくんでしょうか。

飛世 そんなにカッコいい感じではないんですけどね。何かドロドロしてるのかなぁとか、大人な感じなのかなっていう風に思うかもしれないんですけど、私にとってはコメディであり、ヒューマンドラマであり、色んな側面がある作品だと思います。

OrgofAの初演が2019年なんですけど、その時は客席が笑いでドッドっと揺れる瞬間があるぐらい、お客様も一緒になって楽しめたり、笑えたり、悲しんだり、嫌だなって思ったりみたいな、本当にお客さんが心を揺さぶられるような作品です。

戸田 劇場が一体となったグルーヴ感が生まれるような作品ということなんですね。初演の映像を見ると、ベッドがあるんですか?

飛世 ベッドがあります。稽古場にもベッドを設置して稽古をしています。

戸田 常にベッドインしてるんですね。今回はどういう所に注目してもらいたいですか?

飛世 キャストを二つ用意しています。一つが初演のメンバーの私と遠藤洋平さん、これが25年間をず~っと演じ切るというもの。これが通常キャストで、もう一つ、スペシャルキャストというものも用意してまして、これは、25年間なので20代から50代ぐらいまで行くんですね。なので20代のところは20代の俳優たちが、そして30代のところは30代の俳優たちが、で40代50代のところは40代50代の俳優が、という風に同じ人物なんですけどキャストを入れ替えて25年間を紡ごうという、スペシャル キャストを用意しております。この2つの違いも、ぜひ見て欲しいです。

戸田 フライヤーを見た時にスペシャルって書いてある回が半分ぐらいありますね。そこの回に行くと、色んな役者さんが見られるということなんですね。

同じ人物の25年間という意味では、僕は「北の国から」が大好きなんですけど、黒板五郎の21年じゃないですか。そうじゃなく、それぞれの役者さんが演じるとまたちょっとした表現の違いがあったりとか、その世代にしか出せない色とか味とかが出てくるって感じなんですかね?

飛世 大河ドラマみたいに、ある人の人生を追っていくのって楽しいと思うんですよね。「あ、こんなこと言ってた人がこんなことを言うようになるんだ」という楽しさもあれば、その時々で抱えてる悩みってすごく違うと思いませんか? 20歳の時に感じてた人生の茫漠とした不安とか、なんか40代になって、よし、なんか成熟してきたな…という自信とか、まあそれがなんかこう、絶対に違うと思うんですよね。でその時に出る言葉っていうのは本当に宝物みたいなもので、それがスペシャルキャストでは楽しめるかなっていう風に思っています。

遠藤と飛世のチームは、もうほんと大河ドラマを見てくれるように、子供たちを見てくれるように観ていただけたらなっていう風に思っております。

戸田 これはあれですね? 1回じゃなくて、2回以上行かないとって感じですね。

飛世 2回以上観て頂けたら嬉しいですね。

戸田 演劇シーズンはリピーター割とかもありますから、そして1週間毎日やってるっていうのが強みですので、ぜひ劇場に足を運んでもらえたらなと思います。

飛世 実は今回セットとしてグランドピアノがドンと舞台上に設置されます。生演奏で俳優が弾くっていうシーンがございます。弾き始めたら「おぉ~」と思っていただけたらと思いますね。初演の時は、あまりに俳優が上手く弾き過ぎていて「あれは生演奏の方が良かったんじゃないですか」ってアンケートで書かれていまして、いやいや、あれは生演奏で録音じゃないんですって。

戸田 勘違いされるぐらい上手かった。

飛世 そんな演奏もありますので、楽しみにしていただければなと思います。

THE36号線『大きな子どもと小さな大人』

戸田 さ、最後でございます。続いてはですね、THE36号線『大きな子どもと小さな大人』です。トレーラー映像では、半分が呻き声、そして赤ちゃんの声という感じだったんですけれども、どういった作品なのかお伺いしてもよろしいでしょうか?

柴田智之(THE36号線代表。以下、柴田) 映像はですね編集していただいたもので、呻き声ばっかりだと思うんですけども、本編の方は、ざっくり言うとお父さんと息子のお話なんですよね。障がいを持っている子どもとお父さんが暮らしている時の物語、家族の話なんですよね。

戸田 家族のお話。柴田さんが働かれている環境にも影響を受けているんでしょうか?

柴田 元々、私は障がい福祉というか、障がいを持っている人たちに、とっても関心があります。俳優・アーティストとしても活動してるんですけども、同じくらい長く福祉のお仕事もさせていただいてまして、介護福祉士と作業療法士という資格を取らせてもらってるんですが、その中でたくさん、色んな子供たちや家族の方と関わらせてもらった中で、いつか、こういうお話を書きたいというのを、13年ほど前から思い続けて、ようやく書けたというか。

色んな私の経験をまとめて、子どもが生まれてから育つまでを淡々とこう見せていく内容です。家庭で問題を抱えてるんですけども、「どうしてそういう問題になっていってしまったのかな」と。障害を持ってる人やそのご家族、またそういう経験のない方でも感じてもらったり理解してもらったり、ちょっと勉強してみようかなと思うような、きっかけになる作品になってるんじゃないかなと思ってます。

戸田 トレーラーを見ていると、人間だけじゃなくて色々登場するじゃないですか。 あのキャラクターは?

柴田 子供の成長を人形を使って表現させてもらっています。立ち上がると3mになる特注の子どもの人形です。

「障がい」という言葉を扱う時に、何て言うんでしょうね、説明が難しいというか、ちょっと勉強したら障がい名って、ものすごくたくさんあるんですよね。例えば、単に「自閉症ですね」という診断が降りたとしても、そこにはすごく広く幅があるんですよね。一緒にそばにいて、支援する時にはその子その子のできること、得意不得意とか、どういう傾向にあるのかなっていうのはいっぱい勉強しなきゃいけないんですよね。

それをどういう風に表現したら、観てる方もわかるし、当事者の方や家族の皆さんを侮辱しないかな?傷つけないかな?と考えた時に、一番分かりやすいのが「普通の家庭の中に、体のサイズが合わない大きさの子どもがいる」という設定が、表現としてすごくマッチしてると思って。そして、特別大きな子どもの人形を、札幌で人形劇の人形を作っている工房にお願いして、特注で作っていただきました。

戸田 なるほど、今回はシアターZOOという劇場ですよね。

柴田 立ち上がったサイズは大丈夫です。あはははは。

戸田 じゃあやっぱり見所も、そういったキャラクターも出てくるし、ストーリーも含め、色々考えるきっかけにしてもらいたいってところが大きいでしょうかね。

柴田 そうですね。変に障がい者福祉っていうと、う~んって思っちゃうと思うんですけど、そうではなくて、やっぱり演劇として楽しんでもらうような要素っていうのもたくさん用意してあります。

あとは日替わりで、札幌の劇団の、ほぼほぼ代表の皆さんや、ロックバンドのフロントマンの方をワンデイゲストとしてお誘いしています。ここにいらっしゃる弦巻楽団の弦巻さんも2月15日に出てもらうことになってまして、そういうところも楽しんでもらえるポイントかなと思ってます 。

戸田 各回いろんな方が出てくるというところも含め、楽しんでいただければと思います!

札幌演劇シーズン2024-冬

弦巻 ぜひこの3団体の作品、どれも演劇として充実してる作品なのは勿論なんですけど、それぞれの作品が劇場でしか味わえない瞬間を体験していただけるようになっていると思います。

例えば『Same Time,Next Year-来年の今日もまた-』だったら、2人だけで25年を表現する回もあれば、同じ人物を3人の役者が年齢が進むにつれて代わって行く表現の仕方があったり、『大きな子どもと小さな大人』では、子どもを人形で表現していたり、我々『ピース・ピース』は、衣裳もメイクも同じままの女性3人が、違う「母や娘」を代わる代わる演じていたりという風に。

テレビを見るのとは違う、劇場で一緒に参加して、観ながら「あ、こういうことんなんだ」って、観ている方の頭の中で繋がる瞬間だったり、想像力が膨らむ瞬間があると思うんですね。それを味わえるのが劇場のいいところなので、それに共感したり、違和感を感じたり。今回は特にそういった3作品が揃ったような気がしているのでぜひ劇場に足を運んで、見比べてもらえたらなと思っております。

飛世 『ピース・ピース』は「母と娘」の話なんですよね。『大きな子どもと小さな大人』は「父と息子」の話なんです。で、私たち『Same Time,Next Year-来年の今日もまた-』がいわゆる「パートナー」の話。人と人との関わりを描く3作品が揃ったなっていう風に思っています。

やっぱり私たち生きてる中でどうしても人と関わって、家族と関わって、パートナーと関わって生きていくじゃないですか。その時に「あ、こんなことあったな」とか「こういうことあるよな」と思える作品が揃っていると思いますので、ぜひ劇場でその感覚・感触を受け取っていただければと思います。

札幌演劇シーズン2024-冬は、2024年1月27日(土)〜2月17日(土)まで毎日上演しています。冷たい風でこわばった心と身体をやさしく溶かすような3作品をお見逃しなく。

観に行きたい!

好評発売中!

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