1945年6月11日、木製の戦闘機「キ106」の1号機が、北海道・江別の空を飛びました。
劇団words of hearts 第17回公演『博士と過ごした無駄な毎日』は、当時の江別にあった木製戦闘機の製作工場で働いていた人々の日常と想いを描いたものです。この記事では、本作をより楽しんでいただけるよう、木製戦闘機キ106について、少しだけ紹介したいと思います。
木製戦闘機キ106 製作の背景
第二次世界大戦中、日本の陸軍航空本部は四式戦闘機キ84「疾風(はやて)」を実戦機として大量に生産しようとしていました。
しかし戦争が進んでいく中、アルミニウム資源の不足が深刻になったことから、1943年9月、陸軍航空本部は当時の江別町にあった「(株)王子航空機 江別製作所」に対し木材を使用した戦闘機の生産を命じるようになりました。この木製戦闘機は、キ84「疾風」をモデルに北海道にあった木材を使用してつくられ、「キ106」と呼ばれました。
キ106の生産計画
1945年(昭和20年)当時、キ106は年度内に1000機を生産する計画となっていました。しかし戦争の長引く中、多くの青壮年男子が戦地に赴いたため、国内の人員不足は深刻になりました。そこで14歳から25歳までの未婚、無職、不在学の女性からなる女子挺身隊が結成されました。
キ106の試験飛行
キ106が初めて空を飛んだのは、1945年6月11日。江別製作所で製作された1号機の試験飛行が行われました。
1号機は実際に江別の空を飛び、20分後には丘珠の陸軍札幌第一飛行場へ着陸しました。同年8月13日には2号機の試験飛行が行われ、2号機は丘珠から東京の陸軍福生飛行場までの飛行に成功しました。しかし、3号機が完成し、試験飛行が行われるというところで、日本は終戦を迎えました。
キ106の史料
木製戦闘機キ106に関する史料は1994年7月18日に早苗別川の河畔から初めて発掘されました。これまで、江別で木製戦闘機が飛行したという事実を伝える史料はなく、この発見により、初めてこの事実が後世に伝えられることとなりました。
現在は北海道江別市にある江別郷土資料館に、その史料の一部が残されています。今回は劇団words of heartsも、実際に見学に行ってみました。
飛行場跡にも行ってみたのですが、その名残は感じられませんでした。
江別で掘り起こされた史実を、是非その目で目撃していただけたらと思います。
劇場にてお待ちしております。
資料提供 江別郷土資料館