2019年9月21〜23日に上演される弦巻楽団の代表作「ユー・キャント・ハリー・ラブ!」。これまでに5回も再演を重ねた伝説の名作が、サンピアザ劇場でよみがえります。
今回は、出演者のうち、岩杉夏さん(ディリバレー・ダイバーズ)、小林なるみさん(劇団回帰線)、柴田知佳さん、遠藤洋平さんの4名の方に対談をしていただき、作品の見どころや再演の意気込みを語っていただきました。
この秋、再び恋が走り出す…!!
恋は、走り出したら、止まらない!
ー みなさんは弦巻楽団の過去公演にも多数出演されていますね。
岩杉夏さん(以下、岩杉) 私は本公演では「ユー・キャント・ハリー・ラブ!」のみですね。過去2回(#23、#29)出演させていただき、今回で3回目です。
今年7月に上演した「私たちが機械だった頃」は大学とのコラボレーション公演という形だったので。
遠藤洋平さん(以下、遠藤) 僕はこれまで弦巻楽団演技講座の参加も含めれば、7回ほど出演させてもらっていますが、実は2016年の #23「ユー・キャント・ハリー・ラブ!」が初めての弦巻楽団だったんです。
なので、思い入れのある作品ですね!
弦巻啓太さん(以下、弦巻) ちーやん(柴田知佳)は2011年の #15「ラブレス」が初でした。
柴田知佳さん(以下、柴田) その時はまだ私21歳くらい…。その後は、2014年から始まった #21「死にたいヤツら」ツアーに出演しました(韓国・道内)。
小林なるみさん(以下、小林) そのツアーは、私が弦巻楽団に初めて参加した公演でもありました。それ以来、#23「ユー・キャント・ハリー・ラブ!」、#25「果実」、#26「裸足で散歩」、#27「君は素敵」、#29「ユー・キャント・ハリー・ラブ!」と続けて出演させていただいています。
ー 弦巻作品歴が濃いみなさんですが、他の弦巻作品と「ユー・キャント・ハリー・ラブ!」との違いは何か感じますか。
遠藤 一つ決定的なのをあげられますよ。「ユー・キャント・ハリー・ラブ!」は一切暗くない作品です!
柴田 確かにそうですね。私は #15「ラブレス」の出演時や、この前の #33「ワンダー☆ランド」(2019年8月)を観たときも思いましたが、明るいシーンはありつつもどこか暗い要素が入っている作品でした。
でも、今回の作品はまるっとコメディですよね。
遠藤 うんうん。主人公・奥坂教授の恋がうまくいかないときとかは不幸なんだけれど、お芝居として暗くはならない。鬱とか陰とか、そういった感じがしない。
岩杉 確かに、言われてみるとそうかも。一喜一憂はあるものの。
小林 これまでに弦巻楽団で私が演じてきた役の中でも、「ユー・キャント・ハリー・ラブ!」の 沓掛あかね ほど明るい役はないです。他の作品では「生命力を消してください」って演出が入るのに(笑)、この作品では「まだエネルギーが足りない」って言われて。
弦巻 #29「ユー・キャント・ハリー・ラブ!」を教育文化会館で上演した際に、稽古場と実際の劇場の実寸が微妙に違って、袖に入るのに1歩だけ多くかかることがわかったんですね。その1歩分のテンポを取り戻そうといくつか小細工していたんです。
そこで、なるみさんに「バキューンってやって、かっこつけて去ってください」という全く意味のないアクションを劇場に入ってからお願いしたんです。
それを、パッとやって何事もなかったかのように去れる役者はなかなかいないですよ!小劇場演劇を生き抜いてきた人たちは違うな、と。
小林 いやー、でも遠藤くんのアクションにはかなわないです。
遠藤 いやいや、別になんにもしてな、、いや、なんにもしてないことはないけど!努力はしているけど!
岩杉 どういう筋肉の使い方なの!?っていう動きしますよね。
小林 次から次に出るアクション…。
ー 柴田さんは2ラブ目、岩杉さん、小林さん、遠藤さんは3ラブ目ですが、前回を踏まえて「今回はもっとこうしてみよう」という挑戦はありますか。
柴田 前回は決められた動き・テンポについていくのがいっぱいいっぱいなところがあったので、今回は中身をもっと深めていきたいと思います。弦巻さんが最初の稽古でおっしゃっていた「役を深める」ことに挑戦したいです。
岩杉 前回を意識して、それを追いかけるような作り方はしたくないなと思います。その時その時で新しく良いものを作っていきたい。「前回を超えるぞ!」というよりは、今のベストを出したいですね。
遠藤 2回目の時は、1回目よりも良いものを作るにはどうしたらいいんだろう、過去の自分とどう闘っていこう、と考えていました。でも振り返ってみると、1回目も2回目もどっちもそれぞれの良さがあったから、3回目もまた新しく良いものを作ろうと思います。
岩杉 劇場も変わりますからね。札幌、帯広、東京公演で計4劇場で公演します。それぞれサイズやキャパが全然違うので、楽しみです。
小林 以前、四国・東京・札幌で旅公演をしたときに、その土地に住んでいる人たちの空気感というか、時間の流れの違いを感じました。
芝居は同じようにやっているつもりでも、四国は時間の進みがまったりしていて、東京はシャープに感じて、札幌は安堵感のようなものを感じました。
遠藤 そうなんですね。帯広と東京の差が楽しみです。
小林 再演と言っても1年半ほど歳をとったので、声の出し方や身体の使い方は確実に変わっているなと感じます。そこにどう抗っていくかですね。
ー キャストも前回と変わらずですが、この座組はいかがですか。
小林 1年おきくらいに同じ作品を再演するという取り組みはこれまでも経験がありましたが、全く同じメンバーが揃うっていうことはなかったです。この5人がまた集まったのは奇跡だと思います。
柴田 私はこの1年半の間にカナダに滞在していたので、また帰ってきて参加できることが嬉しいです。
遠藤 前回の「ユー・キャント・ハリー・ラブ!」の打ち上げの段階で、制作の小室さんが「来年空いてる?」って聞いていたもんね。それ聞いて、高いクオリティのものができたんだなって実感できたのを覚えてる。
座組のグループLINEも、定期的に動き続けていたよね。永井さんからメッセージが届いたり。
岩杉 ずっと一緒にいた感じあったよね!
柴田 5人っていうのが、またちょうどいいのかもしれないですね。
弦巻 僕の作品にはたくさんの人が出るお芝居が多く、5人だけのコメディでこれだけ色々なことが起こる作品はあんまりないんですよね。ずっと5人が一緒にいる感じは、そういうところからきているのかもしれないね。
もし人間関係がうまくいっていなかったら最悪になっていたけれどね!そうなっていないのが、演出としても楽です。素晴らしい5人が、誰一人欠けることなく揃った。
小林 それでいて、お互い依存しているわけじゃなくて、みんなすごくマイペースじゃないですか。
遠藤 そうかも(笑)
岩杉 いい空気感ですよね。いい座組です。
ー 作品を楽しみにしている方にメッセージや意気込みをお願いします。
岩杉 この作品は6回目の再演で、たくさんの方に愛されてきた作品だと思います。これまでの上演があって今ここにいることを忘れたくない。
でも、過去を追いかけるような作り方はしたくない。いま自分のできるベストを尽くして、最高の作品をお届けします。初見の方も、これまで観たことのある方も、お楽しみにしていただければと思います!
遠藤 人に勧めたくなるような作品です。「私は演劇好きだけど、友だちはなかなか観てくれない」って方がいらっしゃったら、絶対に勧めたい!
柴田 それは本当に強く思います。演劇に興味がない方にでも自信を持って勧められる、グッとくる作品です。
遠藤 絶対良いものをご用意して待っていますので、「あーわたし演劇ハマっちゃったわ」と友だちに言わせてやるぞ!…と永井さんが言っていました。
岩杉 自分の言葉じゃねえ!
遠藤 だって永井さん、急に「伝説を作る」とか言っちゃう人だから!…そうですね、今回は神話にしちゃいます!
僕にとっても、自分の代表作だと思っています。ぜひぜひ観にきてください。
柴田 前回は、純粋に笑えて楽しい作品だなという印象でした。でも、1年半経って、その間にカナダに行って…愛を知って!愛を学びましてですね!恋するっていいですね!!
遠藤 それはオフレコじゃなくていいのか!?ここで言うのか!?
岩杉 恋は突然やってくる、と!
柴田 左様でございます。カナダから帰ってきて、このストーリーがすごく身に沁みるものとなりました!「恋したっていいですよね」というセリフにグッときちゃうんですよね…。私は、この作品の深いところに気づいた!面白く笑えるだけではなく、深いところを伝えられるような作品になっております!
遠藤 この熱意…。いいんですね、記事になっていいんですね。「カナダに行って愛を知った」でいいんですね!?
柴田 左様でございます。
遠藤 衝撃だよ。
小林 自分の体験を踏まえた、新たな演技を。
柴田 左様でございます!
小林 もうこのあとに付け加えることはないですよ(笑)
…そうですね。自分の目の前にいる人が、とんでもなくすったもんだして物語を紡いでいくのを観てもらえば、初めてお芝居を観る人でも、テレビとは違う面白さや熱量を絶対に感じ取ってもらえると思います。
近年はお芝居の種類も多岐に渡り、リアリズム=静かな芝居という風潮もありますが、いやいや!恋すると人の身体はおかしくなっちゃうんですよ。ハリケーンが起こるんです。そういう意味でも、表現の幅広さも楽しんでいただけると思います。
劇場でお待ちしております!
参考
弦巻楽団#34「ユー・キャント・ハリー・ラブ!」特設サイト
公演概要
タイトル | 弦巻楽団#34「ユー・キャント・ハリー・ラブ!」 |
劇 団 | 弦巻楽団 |
会 場 | サンピアザ劇場 |
日 時 | 2019年 9月21日(土)18:00 9月22日(日)14:00/18:00 9月23日(月祝)14:00 *受付開始は開演の45分前、開場は開演の30分前です。 |
概 要 | 「恋愛は幻想に過ぎない」が自説のシェイクスピア専門の大学教授・奥坂雄三郎は、ある日、ラジオから流れる気象予報士の声に「恋」をする。初めての感情に戸惑い、周りが見えなくなる奥坂は、これまでの持論を放り捨て、ひたすら恋に向かって暴走する!教え子や助手を巻き込んだ遅すぎる初恋は、果たして成就するのか? 2018年冬、札幌演劇シーズン2018-冬レパートリー作品として上演し、伝説となった弦巻楽団ウェルメイドコメディの決定版が早くも再演! |
脚本・演出 | 弦巻啓太 |
出 演 | 永井秀樹(青年団)、岩杉夏(ディリバレーダイバーズ)、小林なるみ(劇団回帰線)、柴田知佳、遠藤洋平 |
チケット | ※全席指定 【一般】
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Web | 公演特設サイト |
お問い合わせ | 弦巻楽団 090-2872-9209 |