9月8日より札幌、9月23日より東京で上演される一人芝居公演『LONELY ACTOR PROJECT 番外編~みたことないがみたい~』。
実力派俳優たちによる一人芝居なんて聞くだけでわくわくしますが、今回はその魅力をより深くお届けするために、企画関係者4名に対談していただきました。
これであなたも「みたことない」がみたくなる…!
対談参加者
きまぐれポニーテール主宰。『にせんねん女子高生』出演。
『にせんねん女子高生』演出。
『カンガンデストラクション』演出・出演。
企画スタッフ。本対談では進行係をつとめる。
みたことないことがみたい
佐藤優将さん(以下、佐藤):はじめに、『LONELY ACTOR PROJECT 番外編〜みたことがないがみたい〜』がどういう企画なのか を教えてください。どのようなところが「番外編」ですか。
鎌塚慎平さん(以下、鎌塚):きまぐれポニーテール(以下、きまポ)は、過去に25回行われた演劇専用小劇場BLOCHプレゼンツの『LONELY ACTOR PROJECT』という企画と協力し、一人芝居を集めた公演をやります。
ただ、今回は主旨がいつもと少し違い、札幌で上演したものを東京でも上演します。出演者は札幌でフリーで活動していて、道外で芝居をやる機会があまりない人を集めました。
寺地ユイさん(以下、寺地):共同主催にきまポが入っているところが、わかりやすい違い、「番外編」になっていますね。
鎌塚:すごく気合い入っています。メラメラしているよね。プレッシャーもあるし、楽しみも大きい。
寺地:東京でも上演するし、下手なものは見せられないから…。
遠藤洋平さん(以下、遠藤):おこがましいけれど、東京に行くってことは、札幌の代表として行くわけだからね。勝手に行っているだけなんだけれど、東京の人は、札幌の演劇だと思って観るわけだし。
佐藤:この企画を始めようと思ったきっかけはなんですか。
寺地:ここ数年で、道外から来る劇団の公演のお手伝いをさせていただくことが増えてきました。そのときに「札幌で演劇をやっているんです」ってご挨拶をしても、観てもらえる機会があんまりなかったのがもどかしくなってきていて。
道外に行くのってそんなに大変なのかなって思って、費用を計算したり、自分の気合いについて思い返してみたりして…。「できるかも」と思い始めたのが昨年末くらいです。
鎌塚:調子乗ったのが昨年末。
寺地:そう(笑)。今年の頭に出演者に声をかけさせていただいて、企画を進めました。出演者は、どこにも所属していないけれど魅力的な役者を集めようと。
佐藤:それでこのメンバーが集まった。
遠藤:いや、暇だったからだよ。
鎌塚:みんな馬鹿みたいに暇だったからね。
寺地:そんなことない!違う!嘘ばっかりだもの!みんな忙しいじゃないですか。
遠藤:(笑)『半神』もあります。
※遠藤さんは、8月31日より上演のクラアク芸術堂『半神』に出演。詳しくはこちら。
鎌塚:キャスティングは寺地だよね。
寺地:そうです。遠藤は、昨年きまポの公演として上演した『アピカのお城』の演出をやってもらったこともあり、遠藤の作るお芝居がすごく好きなので。信頼しています。サイトータツミチさんは、今年の4月に共演させていただき、それがきっかけで誘いました。彼とタッグを組む演出家も信頼できる人がいいということで、熊谷くんに頼みました。吉田諒希ちゃんは、結構前に一度共演させていただいたこともありますし、彼女の一人芝居も観たことがあってとても印象に残ったのでお誘いしてみました。演出は責任感のある方がいいなと思って重堂さん。
あと、『LONELY ACTOR PROJECT』と言えば越えなきゃいけない壁があると思って、札幌では野村大さんに参加していただくことになりました。ミスター・ロンリー。東京公演では、私が大好きな小山めぐみさんにオファーをしたところ快くお返事をいただきました。
塚本奈緒美さんにはMCで参加していただきます。企画を立ち上げる段階からとても協力的で、私の背中を押してくれたので、ぜひ劇場にもいてほしいと思って。
一人芝居の作り方
佐藤:一人芝居の稽古の様子はいかがですか。『にせんねん女子高生』出演が寺地さん、演出が鎌塚さん。『カンガンデストラクション』出演・演出が遠藤さんですね。
鎌塚:寺地さんはとても面白いです。年の割に可愛らしく、年の割に意外と動ける子なので。
遠藤:年の割にね。
寺地:…。
鎌塚:今回の僕らの作品は、手数が多いというか、いろんなことをやっていこうと思っています。そうなったときに、たとえ苦手でも逃げ道がないというか。
寺地:ひとりだから逃げ道ないねー。
鎌塚:演出の僕も、寺地さんが感じる「逃げ道のなさ」と、どういう風に戦っていこうかなと考えます。やりたいと思ったことをそのままできるのかという、普通の芝居ではないような謎の不安があります。
2年前も上演した作品なんですけれど、今回のサブタイトルが「みたことないがみたい」ですので、前と同じことはやりたくないですね。稽古は、演出的に企んだことがそのまま返ってくるんじゃないかって期待しています。密度の大きさというか、コミュニケーションがストレートにできる稽古なので、わくわくして楽しいです。
寺地:プレッシャーもあります。緊張する。一人しかいないので、稽古がたくさんできるのは楽しいです。遠藤はどうですか。
遠藤:『カンガンデストラクション』という芝居を一人でやります。2年前に、谷村卓朗(おかめの三角フラスコ)っていう僕の盟友が『ちん○こ☆さんらいず』という脚本を書いてくれて、それをLONELY ACTOR PROJECTで上演したことがありました。その時は木製ボイジャー14号の前田透くんが演出をつけてくれたんですが、今回は、演出も僕がやります。
ぜんぶひとりだから、役者と演出家の稽古中のやりとりがないんです。稽古場で役者と演出家が出会うことがない。ですので、今回は、働いているときや違うことをやっているときでもずっと一人芝居のことを考えています。演出家の頭でいるときもあるし、役者の頭でいるときもある。どこでも稽古場になっているんです。
鎌塚:ノイローゼになりそう。
遠藤:うん、結構大変で。役者と演出家は稽古場を離れたらそれぞれ日常が待っているんだけれど、今回の僕の場合は、四六時中ずっと稽古している感覚です。
鎌塚:役者も演出家も互いにプランを考えてきて、稽古場でそれを試すっていう作業ができないんだね。
遠藤:演出のインプットがあって、それを役者にアウトプットして、役者はそれをインプットして、演出家にアウトプットする、っていう本来の形がない。演出家のアウトプットと役者のインプットの境目がない。いつまでも考えられちゃうぶん、相当やっかいなことだと思っています。良い経験をしています。
鎌塚:野村大さんもそういう作り方だよね。
遠藤:本当は稽古場もいらない作業なんだけれど、場所を作って制限を設けることでフラストレーションをコントロールしています。メリハリをつけづらい。布団の中でも稽古ができちゃうから。
鎌塚:大変だ。
遠藤:楽しい。
佐藤:互いの作品についてどう感じていますか。
寺地:まだお互いに作品を見せ合ってはいないので、わからないことも多いよね。
鎌塚:あ、でも『カンガンデストラクション』について思っていることがあって。
遠藤:うんうん。
鎌塚:「カンガン(=宦官)」って、中国の公務員みたいな人が不貞を働かないように、去勢をすることですよね。つまり、言葉を慎まずに言うと、「キン◯マを破壊する」ことを「カンガン」って言うんですよ。
遠藤:うんうん。
鎌塚:「カンガン」が「キン◯マ破壊」で「デストラクション」(=destruction)も「破壊」って意味だから、『カンガンデストラクション』って「キン◯マ破壊破壊」になっちゃうじゃん。
遠藤:まあ「頭痛が痛い」みたいなもんだよね。
鎌塚:ずっと気になっていたんだけれど、あれでいいの?
遠藤:うーんとね、あれ、実を言うと、もともとのタイトルは『キン◯マデストラクション』だったんだ。だけど、このタイトルをMCのなおみんに言わせることはできなかったんだよね。
寺地:優しい。
遠藤:言ってほしくないもん!! それで、タイトルを変更しました。いま考えると、話の内容的にも『カンガンデストラクション』の方が良かったな。
佐藤:作品の見どころを教えてください。
寺地:とてもわかりやすいストーリーです。原案は私が16歳の時に考えたもので、脚本家の里美ユリヲさんに書いていただきました。里美さんには、演出は別の人がやるから好きに書いていいよと伝えたら、一人芝居とは思えない脚本で…。
鎌塚:そうなんだよ。演出がつけづらくて。一人芝居なのに6人くらい登場人物いるんだよ。4人くらい同時に喋るし。
遠藤:どうすんの!4人出んの!?
鎌塚:シンプルに楽しめる作品だと思います。若い頃の寺地さんのアイデアに里美さんの肉付けがあって、すごく愉快な話になるなって感じています。シンプルに面白い作品にしたいです。
通な人には「これ苦労したんだろうな」って見てもらえても面白いかもな。テクニックを見ても面白いって思えるレベルの作品にしていきたいですね。
寺地:『カンガンデストラクション』の見どころはどこですか。
遠藤:2年前にやった『ちん○こ☆さんらいず』は、シュール・ナンセンス・下品の中にドラマチックなものがあったりして面白かったなって思って。
今回、谷村卓朗に「『ちん○こ☆さんらいず』のシュールさは残しつつ下品を抑えたものがいいなぁ」って伝えたんです。「わかった!」と言って書いてきた『カンガンデストラクション』は、『ちん○こ☆さんらいず』よりもしかしたら下品になってしまう作品でした。
『ちん○こ☆さんらいず』はコメディに仕立て上げられていたんですけれど、『カンガンデストラクション』はホラーな感じがしますよ。上演順を最後にするのは危ないかもしれないです。
鎌塚:遠藤くんはひょうきんな人だから、ひょうきんな人が見舞われるホラーだったらすごい面白そう。
遠藤:物語を追っていくと頭がおかしくなると思います。理解しようとせず感じてほしいです。
寺地:えぇ!面白そう!
鎌塚:ここにはいないけれど、残りの2チームも気になるよね。なかなか組まないような2組だからね。
寺地:サイトータツミチさんの作品は八十嶋くん(マイペース代表)の脚本がとっても面白いコメディで、それとは別の笑いの要素を持っている熊谷が演出をつけています。どんな作品が生まれるかとても楽しみです。
鎌塚:吉田さんと重堂さんのペアは正統派な感じがするよね。二人とも実力のある方々なので、しっかりと作っている感じがする。
一人芝居は逃げ道がないから、実力が顕著に表れてくる、特に正統派でいこうとすると。
遠藤:奇をてらわなきゃって思いが出てくるよね。
寺地:作品とお客様に対しての責任感が強い2人が組みました。すごく丁寧にお芝居を作っていると思います。
クラウドファンディングに挑戦
佐藤:今回、クラウドファンディングを行なっていますが、リターンはどのように決定しましたか。
寺地:東京公演もあるので、予算の関係上クラウドファンディングに挑戦させていただきました。今後のきまぐれポニーテールの活動に期待していただけるようなリターンを用意しています。
グッズや上演台本、きまポ作品の招待パスを作成しました。長い目で見守っていただける方にはぜひ手に入れていただきたいですね。他にも各作品からひとつずつ特典を出していただいたのと、照明さん等のスタッフにも協力していただいたものも。
私のおすすめは、本気で作る私のフォトブックです!もう後には引き下がれなくなった…!
遠藤:本気なら、それは、もう、出すもん出さなきゃだめだよ!
寺地:本気ですからね、頑張ります。後に売ったりとかは絶対しないので、ここでしか手に入らないです!
鎌塚:僕のおすすめは「きまぐれイケボCD」ですかね。今回の企画に関わっている男性陣が、きまぐれなセリフをイケボで呟いたものを収録します。
熊谷嶺くんやサイトータツミチさん、八十嶋さん、みんなめっちゃイイ声ですよ!!
遠藤:僕はやっぱり、「山本雄飛カウントダウンカレンダー」をおすすめしますよ!絶対欲しいでしょう!
あとは、まあ、3000円で、あなたのためのオリジナルソングをつくります。最近ちょこちょこっと音楽をやらせていただいていまして、来年はもっと真剣にやっていこうかなって思ってます。
…案外いい曲作りますよ!
鎌塚:そうなんだよ、めちゃくちゃいい曲なんだよね。俺も作ってほしいもん。
遠藤:聞いてほしい!あなたのためだけに曲書きます。あと、「みたことがないがみたい」をテーマにもう一曲作ろうかな。
鎌塚:これもここでしか手に入れられないからね。公演招待パスの「本気パス」も絶対いいよね。
寺地:そうなんです。きまポは着々と次の準備も進んでいますので、どうぞよろしくお願いします。
鎌塚:これはメリットが大きいと思うよ。本当に。
佐藤:魅力的なオリジナルリターンが揃っています。みなさん、ご支援よろしくお願いします。
全員:よろしくお願いします!
札幌演劇に対する想い(遠藤さんの歌をバックに)
きまぐれポニーテール
札幌演劇を中心に“おもしろいこと”を考える企画団体。演劇をもっと身近な存在にできるような活動を展開する。演劇公演のほか、役者やスタッフのパーソナルを生かしたDJイベントや飲食イベントを開催している。
今後の展望としては、団体の公演規模を大きくしたり、まだ共演経験のない俳優と芝居作りをすることで色々な人と出会っていくことを目標としている。
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