映画は監督? 演劇は演出? …では舞台監督ってどんなお仕事?
演劇好きなら知っておきたい舞台監督のあれこれ。今回の「舞台裏の仕事人たち」では、舞台監督・上田知さんにお話を伺いました。
1980年生まれ。愛知県出身。大学演劇を機に北海道へ。何の気なしに大学で演劇サークルに入り、演劇の世界に。学内・札幌市内の劇団で大道具や演出部などでスタッフとして関わり、どっぷりはまり込む。そのまま大学卒業後もスタッフ活動を続けて抜け出せなくなる。
現在、フリーランスとして主に小劇場で舞台監督・舞台製作として活動中。
「舞台監督」とは
ー 上田さんが担当されている演劇の「舞台監督」という仕事はどのようなものですか。
裏方スタッフ全体を取り仕切ることが主な仕事です。演出の方と作品について打ち合わせし、音響や照明など各セッションの人と打ち合わせし、、、イメージを形にしていくための連絡、橋渡しのような感じです。
劇場側とも打ち合わせし、劇場に入ってからスケジュールを組んだり制作さんと流れを打ち合わせたり、ですね。開演・終演のタイミング・合図をするのも舞台監督の仕事です。公演スケジュールの進行と調整を司ります。
ー 上田さんが舞台監督という仕事に関わるようになったきっかけを教えてください。
僕は名古屋出身で、大学進学のために北海道に来ました。それまでは全くお芝居を観ていなかったのですが、大学で仲良くなった人と演劇サークルを見学に行って、気づいたら参加していました。
そういうきっかけでしたし、もともと役者をやりたかったわけではなく。実家が鉄工所でものを作る会社だったので、そこに近い気がした大道具を作るのを手伝い始めたのが最初でした。
それから少しずつ学内の公演や先輩の劇団で裏方スタッフに参加する中で少しずつ舞台監督の仕事を学んでいったのがきっかけです。
演出を舞台で実現する
ー 上田さんの、舞台監督という仕事に対する「こだわり」はありますか。
打ち合わせでは「対話すること」を大切にすることと、主張しすぎないことです。自分の考えや計画で100%動くのではなく、みんなが考えていることを集約して、どうするかを決めていくことが大切だと思います。
主観ではなく、客観的に物事を見ることですね。そうでないとバランスが崩れてしまうので。
ー 演出からのオーダーをもとに作品をつくっていくのでしょうか。
そうですね。作品で「こういうことしたい」という要望をいただいて、劇場や(火を扱う場合は)消防署と話を進めていき、実現に向けて調整します。
あとは、打ち合わせの段階で「こういうこともできますよ」と提案をさせていただくこともあります。でも基本は、発信は演出家や音響・照明・舞台美術さんです。僕は要望であがってきたものを実現するためになんとかする人です。
ー 舞台監督をやっていて面白いと思った瞬間はどんなときですか。
作品の稽古当初から関われると、作品が出来上がっていくのを見ることができるのは面白いですね。
演出から難しいオーダーをいただくと大変ですね。舞台の責任者にもなりうるので、作品のためだけでなく安全性も考えなくてはいけない。トラブルは大小ありますので、そうしたときにどのように判断するか、時間の調節等も舞監がやります。
ー では、やりがいを感じる瞬間はどんなときですか。
初日の幕が開いて、カーテンコールを終え、役者さんたちが舞台裏に戻ってきたときはホッとします。
ー 舞台監督になるためにはどうしたら良いですか。
僕は学生時代に色んな方々の助手について勉強させていただきましたが、本当になりたいなら会社に入るのが一番良いんだと思います。
でも、興味があるならば、やっている人に「やりたいです」と声をかけてもいいんじゃないかな。現場に入って手伝うことから始めて、繋がりを作っていくことができます。
窓口としてのシーズン
ー 札幌演劇シーズンの良いところと、これから期待するところはありますか。
良いところは、札幌演劇の「一般への窓口」が増えたことだと思います。普段自分たちが接点がないお客様にも観てもらえるチャンスですし、劇団にとってもいいチャレンジになっていると思います。
要望は、、、同じ劇団の参加が多くなっているように見えるので、もう少しいろんなジャンルの作品があってもいいんじゃないかなと思います。一人芝居や短編演劇、ダンスカンパニーの演劇作品も面白いですね。
ー 現在の札幌演劇の現状をどう捉えていますか。
創作活動の点では無いのですが、やはりどの団体も集客には苦労していると思います。もちろん作品作りは重要ですが、観てもらってこそのものだと思うので、そういう環境を作ることも大事だと思います。演劇シーズンはそういう役割も担っていますよね。
ー 札幌で演劇をする理由はなんですか。
僕の場合は、札幌住みやすいからですね(笑)
個人的には小劇場の仕事が多いのですが、札幌の小劇場と呼ばれる劇場は東京などと比べていい環境の劇場が多い気がします。劇場ごとの個性もありますし、作品作りにおいて色んなことに果敢にチャレンジできる場所だと思います。芝居のジャンルもこれからまだまだ多様化していきそうで面白いですし。
MY BEST BOOK
ー 上田さんのおすすめの本を教えてください。
森博嗣さんの『黒猫の三角』という小説です。森博嗣さんはちょっと前にTVドラマにもなった『すべてはFになる』で有名ですね。ミステリーものですが、初めて読む人も入りやすい内容になっています。
森博嗣さんは理系の大学の教授もやっていた方なので、理系的なミステリー要素もありながら、文章は詩的で面白いです。
ー この本との出会いはどこででしたか。
知り合いの演劇人から『すべてがFになる』シリーズを勧められたのが最初です。10年ちょっと前かな。『黒猫の三角』の方が、『すべてがFになる』より読みやすいです。
インタビューの様子は、「ダイジェスト動画」でご覧いただけます(下のボタンをクリック!)。
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