【舞台裏の仕事人たち】音響・橋本一生さん

演劇をつくるのは役者だけじゃない!舞台には立たないけれど、裏で作品を支えるスタッフさんにスポットを当てて紹介していく「舞台裏の仕事人たち」。

第1回は、音響 橋本一生さんにインタビューしました。

普段なかなかみることのできない「音響」という仕事。その奥深さと魅力を知らずして、演劇は語れない!

 

橋本一生

2001年から音響に興味を持ち同年から舞台音響に関わりはじめる。
幅広く面白がるをもっとうに舞台、ライブ、イベント、ラジオ等色んな音響エンジニアとして活動。
フィールドレコーディング、喫茶店巡りとゲームが趣味。

演劇における「音響」とは


ー 橋本さんが担当されている演劇の「音響」という仕事はどのようなものですか。

ざっくり説明すると、劇中で流れている音楽や効果音を出すのが仕事です。ドアのノック音とか、雨の音とか。

基本的には役者から出ている以外の音の管理ですね。

 

ー 橋本さんが音響という仕事に関わるようになったきっかけを教えてください。

ものすごくどうしょうも無い話なんですが(笑)、高校3年生くらいのときに、元カノの彼氏がやっていた芝居の手伝いに誘われたのが最初でした。もともと機械を触るのは好きだったし、音楽も興味があったので。

そのあと専門学校に行って、卒業してからは仕事としてやっていました。そのころは8割自分の好きなことだけやって、残り2割は先輩やいろんな人からのお仕事をちょこちょこやらせていただいていたって感じでいたね。

最初の頃に関わった団体としては18歳頃に川尻恵太がやっていた劇団ギャクギレという団体でした。 yhsに入ったのは20歳ぐらいの時です。introには結成当時から関わっていました。

 

ー 演劇の音響をやることが多かったのですか。

そうですね。もともと僕、演劇の音響はやるつもりじゃなかったんです。音楽ライブの音響とかやりたかった。

でも、気がついたら演劇ばっかりになっていました。周りにいる演劇人みんな面白い人たちだったのが大きかったと思います。20代は6割演劇、4割違う仕事でした。

 

「思いつき」を大切に


ー 橋本さんの、音響に対する「こだわり」はありますか。

その場で思いついたことを大切にします。稽古を見て、役者や演出がいろいろやっているのを見たときに思いついたこと。まず、その思いつきを大切にして、そのあとに実用性があるのかを考えます。

自分の思いつきをすぐボツにすることはよくあります。それには固執せずにすぐ捨てます。ポイッて。必要になったらまた拾えばいいし、いらなくなったら捨てればいい。その繰り返しですね。

思いつきを大事するけれど、執着はしない。

 

ー 効果音はどのようにして集めるのですか。

方法は2つあります。すでにライブラリになって販売されているものを買うか、自分で録音する。

ライブラリは、必要になった段階で調べていきます。効果音のSNSみたいのがあるんです。それで見つけたり、ですね。

録音する方は、僕は常にモバイルレコーダーを携帯しているので、「これいいな」って思った瞬間にすぐ録音します。

雷とかはそうですね、僕の家で録音したものを使ってました。台風とか、雨の音とか。たまに良い嵐が来たら、窓開けて、レコーダーを設置して2時間待つこともあります。家から聞こえる野球部の練習の音とか、録ったことありますね。

必要な音は、多くの場合台本に書いてあります。あとは演出からオーダー確認したり話しながら足したり引いたりします。

昨年やったyhs『しんじゃうおへや』では、雨とノイズ音を使っていたんですけど、ノイズの方は台本になく、僕が勝手につけ足したものです。その時のコンセプトとしてノイズを使用したかったって感じですね。

 

ー 音が先に決まって、それに合わせて役者が動きをつけることもあるんですか。

演出と役者にお任せしているので、役者が合わせているかどうかは、僕は知らない(笑)。僕も勝手にやるし。『しんじゃうおへや』に、ノイズの中、小林エレキ(yhs)とのシーンがあったんですけれど、スタートとエンドがお互いの中にあって、終着点は一緒でも、作為的に合わせるのではなく、その時に思ったことを出していくって感じでした。

舞台はナマモノだから、役者の演技が違えば、音も毎回違ってきます。回のたびに、「そうきたかっ!」って。それは面白いですね。

 

バグった瞬間は、ライブだなって思います

ー 音響をやっていて面白いと思った瞬間はどんなときですか。

「バグった」瞬間です。演劇は生身の人間同士がその場でやっていて、その時の体調とかも含めて毎回違う。脚本や稽古してきた段取りはあるけれど、毎回同じことが起きるとは限らない訳で。

それが演劇の面白さだし、魅力。毎回違うけれど、それでも到達点というものはあります。

でも、それすらも外れることがあって。技術的にとか、間違いで、悪い方向へ転がるのは僕も嫌いですけれど、自分たちがいつも通りにやっていた結果、思わぬところで別の到達点・面白さを発見したときは面白いですね。それを僕は「バグ」って呼んでます。

バグった瞬間は、ライブだなって思います。良いバグが起きたときが楽しい。

 

ー 音響さんになるためにはどうしたら良いですか。

「演劇がやりたい」っていう気持ちはすごく大事だと思うけれど、それだけではなく機械の使い方や技術を覚えなくちゃいけない。音を再生、停止するだけなら簡単だけれど、それだけじゃないからね。

専門学校や音響会社に入れば機会や技術の勉強はできると思います。もうひとつのパターンとしては、実際に音響さんに言ってみるってもあります。「音響をやってみたいんだけど、どうしたらいいですか!」って。かなりびっくりするけれどね!(笑)

演劇に関われる仕事ではあるけれど、それだけじゃないから。覚えなくちゃいけないことも多くて、演劇とは関係ない技術的なところが9割で、演劇的なことが1割だと思います。

 

ー 今回の作品『忘れたいのに思い出せない』は、音響さんはどのようなコンセプトを持っていますか。

この作品は静かなお芝居なのでそんなに音響はないんですけど。でも、再々演ですので、1回目と2回目とは違うことできたらなぁと。今のところは、登場人物のおばあちゃんのことを考えれたらなぁーって思ってます。

僕、分かりづらいことをよくやっちゃうんだけど。芝居をみて、「なんだこれ。なんだこの音。」って思ったら僕の仕業だと思います。

公演詳細

yhs 37th PLAY「忘れたいのに思い出せない」

 

MY BEST BOOK


ー 橋本さんのおすすめの本を教えてください。

『ONE PEOPLE』という写真集です。生まれてから死ぬまでの人間の生の流れを、いろいろな国の写真で構成されていて、とても面白いです。

モノをつくるときに影響を受けているって言う意味では、この本かなーって思った。

日本ではまず見かけない景色だったり、構図は似ていてもその写真が意味することは違ったり。人によって見方も違うと思います。人それぞれってところがまたいいなって。

 

ー この本との出会いはどこででしたか。

僕は水タバコが好きなんですけれど、二条市場のれん横丁の水タバコ専門店で見つけました。仕事の反省やアイデアを考えたり、気分転換のためによく行っていて。行くたびに気になって読んでいました。

芝居で使う音のプランを考えるときとか、純粋に気分転換のための、切り替えスイッチみたいな場所です。

 

インタビューの様子は、「ダイジェスト動画」でご覧いただけます(下のボタンをクリック!)。

1時間目/稽古場夜回りインタビュー

【稽古場夜回りインタビュー】yhs「忘れたいのに思い出せない」

 

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