いよいよ本番が近づいてきました、琴似で行われる演劇フェス「遊戯祭17」。
今回は、コンカリーニョにて上演される3つの演目のうち「平木トメ子の秘密のかいかん」の稽古場にd-SAPメンバーがお邪魔して取材してきました。
躍動感あふれる稽古写真を中心に、出演者や脚本家のインタビューを交えて稽古の様子をお届けします。
鳴り止まない音楽
稽古場のドアを開けると、多くの楽器が私達を迎えてくれました。ギター、ベース、フルート、鍵盤ハーモニカ、スネアドラム…それらは稽古中鳴り止むことはほぼありませんでした。
音楽に合わせてセリフが飛び交ったり、セリフに合わせて音楽が動き出したりと、とても賑やかな稽古場でした。
このようなバンド演奏も見どころのひとつとなっていますが、音楽劇ではありませんのでもちろん静かなシーンもございます。
止まらない身体
賑やかなのは音楽だけではありません。役者たちの動きも止まることを知らず、それぞれが跳び、髪を振り乱し、回りながら空間を埋め尽くしていました。
演出の前田透さんから「重心が高い!低く!」など指示が飛び、よりいっそう役者の動きに磨きがかかります。
時には止まり、時には音に身を預けるといったメリハリのある動きが何度も押し寄せてくる、そんな劇空間でした。
音やアクションの、動静の変化を楽しめるお芝居になるかと思います。
インタビュー
左から、演出の前田透さん、小川沙織さん、井上嵩之さん、脚本の米沢春花さんです。
今回はこの4人に、稽古の様子や、脚本について、本番への意気込みなどをお聞きしました。インタビュアーはd-SAPメンバーの二瓶ひかるさんです。
稽古を通して、役者や劇の雰囲気に大きな変化はありましたか。
前田透さん(以下、前田):変わったなっていうのは当然あるとは思いますね。よく一緒にお芝居をやっている人もいればやったことない人もいて、一緒にやったことがある人でも、僕はいつも作品によってチームの雰囲気を変えているので、そうした人の新しい一面が見れて楽しいですね。今回は地方の小さな町のコミュニティの話なので、みんなで盛り上がれる面白いものが何か一つあればいいかなということを考えていたんです。それで稽古を始める前にいつもワーク・ゲーム的なことをやっていて、くそ意味わかんないゲームを生み出してしまったんですけど(笑)それをやることによって雰囲気はだいぶ変わったなと思いますね。お芝居とは違うテキストを使って、チームで共有するものができたので非常に良いチームワークができていると思います。僕が、「役者の仕事の範囲だと思うことは全部役者で話し合え」ってスタイルをとっているのもあって、最初は全然打ち合わせしないで「お前らふざけんじゃねえよ」ってずっと思ってたんですけど(笑)最近はみんなでおのずと話し合っていることが多いです。「演技に関することは自分でやんないとだめだよ」っていう風に話をしていくことによって、役者同士だからこそできる話がすごく綿密に、緻密になるかなって思ってますね。コミュニケーションがいつもしているものとは違う領域になってきたかなって。「仲良くするための」じゃなくて「お芝居を作ってる人たちに必要な伝達能力」が身についてきたなって思います。
劇の見どころを教えてください。
小川沙織さん(以下、小川):宣伝するときに一番推してるのは、「音楽隊の方います、みんなで踊ります歌います、すごい楽しいよ」ってことですね。私今社会人で、会社で働いているんですけど、友達はやっぱり演劇をしてない人が多いから「あまり気負わないで見られますよ」っていうことを伝えてます。
井上嵩之さん(以下、井上):僕もそういう楽しさとか、普段暮らしていると忘れちゃいそうな熱狂的な盛り上がりとかを推してます。盆踊りのシーンがあるんですけど、盆踊りって大人になったらあまり積極的に参加しないじゃないですか。僕は子供の頃からあまり積極的ではなかったんですけど、こないだ稽古でみんなで輪になって、みんなで同じ踊りをしてて「何だこれ!」っておかしくなって笑えてきちゃったんです。そういうものを見てのめり込んでほしいなって思います。自分で家に持ち帰って、「人と一緒に生きることって楽しいな」って思ってほしいです。
前田:見どころというか、いいチームを作ったつもりではあるので(笑)舞台上での俳優たちのコミュニケーションってところですかね。しっかりコミュニケーションがとれているかいないかってすごい大事だと思うので。彼らが感じているものは何なんだろうなっていうのを見てもらえると嬉しいです。
稽古を通して脚本は大きく変わりましたか。
米沢春花さん(以下、米沢):いや、そんなに実は変わってなくて第三稿か四稿で終わってるんですけど、こんなに変えなかったのは初めてですね(笑)
三人:えええ(笑)
米沢:自分の団体(劇団fireworks)のときは第二十稿くらいまでいくんですけど、今回は第三稿で終わってます(笑)っていうのは、脚本の中でのセリフの取捨選択を前田くんがやってくれて、良い意味で任せてしまっているので、今回はとっても楽でした!
三人:(笑)
前田:脚本は変わってないけど中身がだいぶ変わってるよね(笑)
井上:(米沢に)想定してたものと結構違うんですか?
米沢:そうですね。最初に見たときに、「こんなシーンを書いたっけ?」ってなりました(笑)
前田:それ前田演出あるある(笑)
米沢:「でもセリフは言ってる!あ、それだ!」っていうのはありましたが、私だと手の届かない想像しえなかったところまで作品ができていて、すごく見ていて楽しいなあと思います。
このお芝居の特徴を教えてください。
前田:癖がありすぎる。
米沢:癖がすごい。
井上:うるさい。
米沢:一番賑やかかもしれません。一番賑やかで、一番ずっと音が鳴っていて、一番動いていて、一番情緒が不安定(笑)
前田:一番感情的っていうのかな。心がすごい動く。
米沢:あと一番夏。
前田:それは負けない。あと一番謎。そして一番エッチですね。参加作品の中でも一番エッチなお芝居だと思います。(笑)
小川:でも稽古写真すごいかわいいのしかないですよね。撮ってて思ったんですけど。
前田:一日の終りにLINEのアルバムに稽古写真が貼られるんですよ。
井上:撮る人がかわいいシーンばっかり撮ってるっていうのもあるけどね。
前田:あとはまあ作品に向かう姿勢がそもそも違うかな。僕は舞台上の人のコミュニケーションが生き生きしててくれないとお芝居として見ていたくなくなっちゃうから。生々しさってことかな。生きた人間が生きた言葉を発するように色々整えているところです。
本番に向けて意気込みを聞かせてください。
米沢:たくさんの人に見てほしいなあっていうのが一番ですね。
井上:楽しんでもらいたい。すごく楽しんでもらいたい。
前田:人間って楽しいんだな、優しいんだなっていうのを見てもらいたいです。
ありがとうございました。
公演詳細
タイトル | 平木トメ子の秘密のかいかん |
演 出 | 前田透(劇団・木製ボイジャー14号) |
脚 本 | 米沢春花(劇団fireworks) 台本ちらっとのぞき見 |
出 演 | 朱希(劇団・木製ボイジャー14号)、井上嵩之(劇団・木製ボイジャー14号)、おかしゅんすけ(劇団・木製ボイジャー14号)、西村颯馬(劇団・木製ボイジャー14号)、小川沙織、安藤友樹、西村翔太(劇団千年王國)、和泉諒(劇団fireworks)、木村歩未(劇団fireworks)、梶原正樹(劇団宴夢)、松田弥生(劇団宴夢)、後藤カツキ(トランク機械シアター)、安田せひろ、パッション、MC脂肪漢 |
あらすじ | 優しさって、楽しくって、生きたくなって、毎年僕らの町は盆踊り大会を行う。大人達は張り切る。無我夢中で踊り狂う。盆踊りは死者への供養のために行われるそうだ。僕はそうは思わない。僕には大人達がなにか隠しているようにみえる。あの会館にお祭りの後片づけと一緒に隠してる。あの秘密のかいかんに。 |
モチーフ | 『これが私の優しさです』 |
会 場 | 生活支援型文化施設コンカリーニョ |
日 時 | 4月27日(木)20:00 4月29日(土)15:30 4月30日(日)20:00 |