前回の演出家対談に続き、今回は遊戯祭に出場される3作品の、それぞれの脚本家の方々に対談形式で作品の魅力を語っていただけました。
彼らが筆先に込める谷川俊太郎への思いとは…。
【遊戯祭17】最新情報−1 【遊戯祭17】演出家対談 谷川俊太郎を演出する
谷川俊太郎との出会い
徳永萌(デンコラ)(以下、徳永):一番最初の出会いは「スイミー」とか、小学校の教科書ですね。でも印象が強いのは合唱曲です。わたし中学校の時合唱部だったんですけど、谷川俊太郎さんの詩はたくさんの合唱曲になっていて、3年生の大会の自由曲も谷川俊太郎さん作詞の曲でした(「じぶんのうぶごえにみみをすます」)。
米沢春花(劇団fireworks)(以下、米沢):わたしの場合も、最初の出会いは小学校です。学習発表会で「スイミー」のイソギンチャク役をやりました。
白鳥雄介(以下、白鳥):イソギンチャクとして出会ったんだ!
米沢:「一緒に遊ぼうよ!」ってセリフでした! 谷川俊太郎を意識するようになったのは、高校受験を失敗した時に本屋で一番最初に手に取った詩集がきっかけですね。あの当時、友達に会うのも家に帰るのも嫌で、この悲しみを何かに変換しなくちゃいけないと思って、失敗した直後にそのまま本屋さんに行って、なんとなく買ってみたんです。
白鳥:詩集を読んでどういう気持ちになったの?
米沢:「これにしがみつこう」って思いました。優しさに。この詩集をわたしの優しさ、強さにしていこうって。 白鳥さんは?
白鳥:僕は、合唱曲「春に」を聞いたのが出会いでした。でも、谷川作品を意識し始めたのは、この遊戯祭がきっかけです。脚本を書く上で色々調べた結果、「あ、あれも谷川作品だったんだ」っていう気づきがありました。知らず知らずのうちにすれ違っていたんだ!って。
徳永:色々なところに色々な谷川俊太郎さんがいる。あれもこれもって。どこにでもある。
今回の座組の特徴
米沢:団体として参加するのはデンコラだけだよね。
徳永:客演は 宮森峻也さんの一人だけで、あとはすべてデンコラの役者です。出演人数はきっとお二人の作品と比べると少なめです。「わたしの出したい人を出したぞ」って感じです。わたしのフェチを呼び集めました。
米沢:みんなデザイン学部なんですか?
徳永:そうですね。でもデザイン学部の中にも空間デザインが専門の人もいれば、メディアデザインが専門の人もいて、様々な得意分野もつ人たちが集まって、「演劇」っていう別の分野で組み合わせていきます。演劇をやる人たちが演劇をやるために集まったっていうよりは、色々な分野で活動する人たちがたまたま演劇で一緒になったっていう感じです。演劇はよく「総合芸術」って言われるけど、まさにそんな感じです。なんでも演劇でできちゃう。 うちは本当にすごいですよ!笑 ダンスも!ピアノも!
米沢:わたしのところはfireworksと木製ボイジャーと何名かの客演で構成されています。fireworksはよく「ストレートな演劇」って言われることが多いけど、ボイジャーさんは一癖二癖あるような団体なので、それらが合わさると何が生まれるんだろうっていうのは面白いですね。 キャスティングもすごい面白い。わたしの脚本では主人公は男だったんですけど、キャストは女子だったんですよ。もう全然違うものが生まれるなって感覚は最初からありました。
徳永:びっくりですね。
米沢:ストレートに伝えないで、あえて1クッション違うところにぶつける演出だから深みが出ます。でも吐く言葉はわたしの書いたストレートなもの。それがすごく面白いです、強みかな。
白鳥:どの方向から米沢さんの着地点にいくのかなっていうの楽しみだね。 僕のところは、僕と畠山さんがそれぞれ好きな人を選んで出しました。あと、キャスティングの上で二人で大切にしていたことがあって、「遊戯祭」っていう札幌の若手演劇イベントで、ここを札幌の若い演劇人の中心地というか、爆心地になって欲しいなって思うんです。若い子が活躍しやすいキャスティングにしたくて、あえて年齢層も幅広くしました。若い子たちにベテランさんと交流も持って欲しいし、次に繋げて欲しいし。
それぞれの作品と比較して
米沢:「帰れま10 ※」の話をしますか。
※帰れま10:1月31日に行われた、コンカリーニョに脚本家が集まり、台本を書き終えるまで帰れないという企画。米沢、徳永が苦戦する中、白鳥はすでに書き終わっていて、家にいた。企画スタートしてからちょこっと直して20分後くらいに、データ提出。
白鳥:あー、どうだったんですか。
徳永:白鳥さんはとんでもなかった。
白鳥:僕はもともと書いてましたもん。あの日はちょこっとだけ直して、すぐにエンターキーでした。
米沢:白鳥くんのはイメージがしっかりとあるんだなって思いました。 わたしは抽象的なシーンとか、少しのト書きしか書いていない状態で、そのまま演出に投げてみたりもしましたね。
徳永:どう演出してくれるんだろうって考えるのも楽しいですね。
白鳥:僕も初稿ではト書きすごい詳しく具体的に書いたんですけど、印刷して畠山さんに見せるってなった時に、細かい説明は全部消しました。演出家はこの本をどう読み取るんだろうっていうわくわくが欲しいから。自分が行ったことのないところに着地したいなって。
米沢:わたしは台本に「床のない世界」って書きました。どう演出するんだろう…!笑。稽古観に行っても「こんなシーン書いたっけ。でも喋っている言葉はわたしの台本だな」っていうのが結構あって。すごい面白いですよ。
白鳥:遊戯祭じゃないと絶対観られない作品ですね。一生に一度、ここだけでしか観られない。
米沢:遊戯祭はお祭りなので、私たちはどこの団体よりも楽しもうってことを大切にしています。方向性は違うかもしれないけれど、とにかく楽しむことを大切にしています。
作品の見どころ
徳永:信頼できるこのメンバーにだからこそ書けた脚本です。気持ち悪いものに触れたいっていうかたにはぜひ観に来ていただきたい。
白鳥:僕はね、タイトル結構悩んだんですよ。
米沢:「それを聴いたとき、」って響きが良いですよね。一番観に行こうかなって思えるタイトル。
白鳥:ありがとうございます。このタイトルの意味を確かめに来ていただきたくて書いた作品です。モチーフは合唱曲「春に」なんですけど、舞台上にはそれだけじゃなくたくさん聴くものが出てきます。聴いたものによって話が展開していきます。畠山さんがどう演出をつけてくれるのか楽しみです、ラスト5分。
徳永:えー!みたい!ラスト5分!
米沢:わたしのは「平木トメ子秘密のかいかん」っていうタイトルです。「かいかん」は会館=秘密基地のことなんですけど、大人になってしまったらソッチ(快感)しか考えられなくなってしまう。大人と子どもの話です。大人から学ぶこともあるし、子どもから学べることもある。 お祭りっていうこともあって、盆踊りもテーマにしています。死者の供養っていう優しさ。でもそれは自分のためでもあるんじゃないかなっていうことを考えて書いています。 「秘密のかいかん」を「秘密の快感」としか考えられなくなった人に向けてのお話です。
劇団fireworks代表。劇団fireworksでは脚本演出、企画プロデュースを行う。また他団体の舞台装置製作や舞台監督も行うなど精力的に活動している。
1989年2月16日生まれ。札幌出身。脚本家・演出家。高校時代、お笑いコンビを結成したことをキッカケに舞台の世界へ。俳優や制作など多岐にわたり活動している。遊戯祭17初参加。
1996年5月2日生まれ。ハタチ。中学は合唱部高校は美術部と文化系の道を順に進み札幌市立大学にてデンコラに入部、演劇と出会う。生まれて初めて書いた脚本は小学6年生の学習発表会「セカイのオワリ」