直撃インタビュー!クラアク芸術堂結成の真相に迫る

2016年12月31日、SMAPと同時期に活動を終わらせた 劇団アトリエ 。人気絶頂の最中、突然の「おしまい」に札幌演劇界がざわつきました。

そして新たに結成された クラアク芸術堂という未知のカンパニー…。

今回はその真相を探るべく、クラアク芸術堂代表の小佐部明広さん(@aki_kosabe)に直撃インタビューをしました。彼のひとみに札幌演劇はどう映っているのか、必読です。

演劇だったら続けられるんじゃないかと

小佐部さんが演劇をはじめたきっかけはなんですか。

小佐部明広さん(以下、小佐部):僕の兄が高校で演劇部に入っていて、多分それをみていいなって思ったんだと思います。高校生になったら演劇やってみたいなって。でも、いざ演劇部に入ってみると、ほかに部員が誰もいなかった!入ったはいいものの、ひとりで何も活動できず…。もともと劇団ひまわりに妹が入っていて、じゃあそこで僕もやってみようって思ったのがまともに演劇に関わった最初です。

高校生のときは劇団ひまわりで活動していたんですね。

小佐部:はい、そのときの劇団ひまわりの講師が、いま弦巻楽団で活動されている弦巻啓太さんでした。

劇団アトリエを結成するに至った経緯を教えてください。

小佐部:僕が大学2年生のときに、自分が普通に就活をして社会人として働いても「きっと自分よりもその(仕事の)分野が得意な人がいるだろう」と考えていました。「きっと他の人の方が(仕事に)向いていて、続けられるだろう」と。そう思ったときに、「じゃあ将来どうしよっかな」って思って笑。

それで、きっと演劇だったら人より続けられるんじゃないかって思ったんです。そして、自分の好きなことをやれる劇団をつくることにしました(劇団アトリエ)。当時、札幌学生演劇祭で脚本演出を担当して、TGRの新人賞をいただいていたので、そのときのメンバーでやることにしました。そうやってそのまま6年間。

クラアク芸術堂とは

2016年12月に劇団アトリエの活動を終わらせ、クラアク芸術堂という新しい団体を立ち上げられました。ズバリ、どうして劇団アトリエではなく、新しい団体としてやっていく必要があったのでしょうか。

小佐部:「やめよう」ってみんなに言ったのは2015年1月でした。僕が、何か限界を感じていたんです。おそらくこのままの形だと、大したことにならないなと。このままだと究められない感じがしました。やっぱり劇団員が増えていくと、ちょっとずつそれぞれのやりたいこと違ったりするんで、僕が「これはすごい面白いぞ」と思って取り組んでいることが、他の人がそうでもなかったり、その逆もある。

だから、みんなが各々好きなことができる団体にしたかった。事務所とはちょっと違うんですけど、団体内にいろいろなユニットがあったり、プロジェクトがあったり。

クラアク芸術堂の公演の仕組みはどのようになっているのでしょうか。

小佐部:クラアク芸術堂としての本公演は、年に1回。これには基本的には団員みんなに参加してもらいます。それ以外の期間は、団員に好きなようにやらせます。自分のやりたいことを、やりたいメンバーと、やる。本公演のほかにもう1本、既成の脚本を上演する企画(Masterworks)もあります。今年は8月に野田秀樹さんの「半神」です。

クラアク芸術堂は、なるべくたくさんのお客さんに来てもらえるような作品をやっていきたいですね。今までの劇団アトリエは僕がやりたいことをそのときそのときにやる、という形だったんですけど、公演によって作品のカラーが全然ちがってきてしまうんです。そうなると観てくれたお客さんが「前みたいな作品が観たかったのに、全然違った」ということが起こっちゃう。それは避けたいなって思った。

だから、クラアク芸術堂はある意味で、ユニットの差別化をしていきます。コメディをやるユニットはコメディばっかりやる、感動巨編ばっかりやるユニット、サイコホラーばっかりやるユニット、のように。分けていくことで、お客さんが観たいものを選んで観やすくなるんじゃないかと。

そうすると、僕自身のユニットをつくることで、僕がやりたいことを思う存分できる(昔、僕のやりたいことをやってお客さんがすごく減ったことがあったんです。全然わけわかんない作品つくって笑)。劇団としてやるのは難しいことも、クラアク芸術堂内のユニットとしてなら、僕も好きなことができる!

クラアク芸術堂の公演

本公演
団員全員が参加してつくる、クラアク芸術堂の本公演。年に1回(今年は5月予定)。

Masterworks

過去に上演されたことのある作品を上演。出演者は団員に限らずオーディション等でキャスティングをする。今年は8月に野田秀樹作「半神」を上演。

団体内ユニット

ジャンルが分けられたユニットを団員がプロデュース。4月に信山プロデュース「桃の実」、12月に小佐部プロデュースをそれぞれ上演予定。

 

「クラアク芸術堂」の名前の由来を教えてください。

小佐部:まず、「劇団○○」にしたくなかった。演劇以外のこともやるかもしれないし。歌ったり踊ったり落語したり、演劇っていう枠にとらわれずに「舞台」ってものを考えていく団体にしたいです。

以前観たコンテンポラリーダンスの「バベル」っていう作品がすごく面白かった。舞台で身体動かしたり装置動かしたりしているのがすごく楽しくて、演劇に限らず色々なことを舞台でやっていきたいと思ったのがひとつです。もうひとつは、札幌を感じさせる名前にしたかった。誰かが「札幌といえばクラーク博士じゃない?」と言ったのがきっかけで、いろいろあってクラアク芸術堂に落ち着きました。団員の山木は略称「クラゲ」を推しています…笑

すごいものに巡り合ったときは、本当に楽しい

作品をつくる上で影響を受けている人物などはいますか。

小佐部:作品によって様々ですね。野田秀樹だったり平田オリザだったり、今つくっているのは太田省吾の影響を受けています。昔は演劇論の本とかも結構読んでいました。あと浅野いにおの「おやすみプンプン」っていう漫画が大好きで、作品のテーマなんかはそこからの影響が大きいです。

脚本を書く際に気をつけていることや、大切にしていることはありますか。

小佐部:作品によりますが、僕は書くの早い方らしいです。早いときは2〜3日で終わることもあるし、長くても2〜3週間ですね。ぼんやりとしたアイデアはスマホの中とかに溜めていて、書くときに取り出してって感じです。

演劇をはじめたころに比べて、演出や作品のつくりかたなど変わったところはありますか。

小佐部:もともと演出はそんなに興味なかったんです。役者やりたくて演劇部入って、当時は続けようとも思っていなかった。劇団アトリエはじめて2年くらいは演出あんまりしたくなくて、脚本に書いてある通りにやってくれたらいいなーって。その考えが変わったのは、劇団アトリエ10回公演「ザ・ダイバー」(野田秀樹作)をやったときでした。野田さんの脚本は、演出を考えざるを得ないんですね。そこで多くの発見があって、演出っていろいろなやり方があるんだなって。すごく勉強になりました。

演劇の魅力や面白さをどこに感じていますか。

小佐部:「舞台」はいいなって思います。いま目の前でやっているという感動もあるし、同じ空間でいろんな人たちが身体を動かしているっていうのが本当に面白い。映像だと色々な技術使ってウソつけるけど、そういう編集とかなしで、目の前でこんなことやってんだ!っていうのが、すごい楽しい。映像でやっても面白くないことも、舞台でやると面白くなる。音楽だってライブDVD見るより、実際ライブ行くほうが楽しいしね。

観る側としては、実は本数観ていると全部が面白いわけじゃないです、でもすごいものに巡り合ったときは、イイですよ。わーこんなのがあるのかー!って。すごい楽しい!

これから、クラアク芸術堂が目指すことはなんですか。

小佐部:僕たちよりも先に組織のあり方を変えたのが、札幌座とELEVEN NINESでした。劇団TPSから札幌座に変わり、イレブンナインも企画・制作団体に変わりました。きっと何かを変えていくときに、「これからは強い意志を持って頑張ります」じゃだめなんだと思います。ちゃんと仕組みとか環境とかを整えないとどうにもならない。だから、クラアク芸術堂を結成しました。

10年後くらいには、クラアク芸術堂のユニットが増えて、「クラアク芸術堂の系列だったら、どれ観てもハズレないな」っていうのを目指していきたいです。舞台をはじめて観る人に、コメディを観たかったらココ、ホラーを観たかったらココっていう風に勧められればいいな、と。そのためにはちゃんとしたクオリティのものをつくらなくちゃいけないんですが。あとは、最大規模の団体になったらいいな。

次回作「蓑虫の心象」について

「蓑虫の心象」をやるに至った経緯を教えてください。

小佐部:もともと2人芝居をやりたいなって考えはありました(「蓑虫の心象」はクラアク芸術堂とは関係のない芝居です)。せっかくなんで新しいことをしようって思って、あんまり喋らないやつをやろうと。11月にやった「蓑虫の動悸」にも出てもらった中村雷太くんは決まっていました。もう一人どうしようって考えていたときに、ELEVEN NINES「乙女の祈り」を観て「ああ、このひと面白い」と思って廣瀬詩映莉さんをオファーしました。彼女はポテンシャル高いだろうなと思って。

ここに注目してほしい!というような見どころは。

小佐部:久しぶりに良い話です。素敵な、心にジーンとくるなっていう芝居になると思います。人間関係に行き詰まっている人が観ると、心が軽くなるんじゃないかな。言葉数が少なくて、こんなに喋んなくてもいいんだ、喋らないからこそ伝わる何かがあるんだ、ということを感じてもらえたら嬉しいです。あとは、地面に敷き詰められている落ち葉!

楽しみにしています! ありがとうございました。

小佐部:ありがとうございました。

 

小佐部明広
1990年、札幌市生まれ。高校から演劇を始め、北海道大学の演劇サークルを経て、2011年に「劇団アトリエ」を旗揚げ。以降、劇団終了の2016年まで全ての演出とほとんどの脚本を担当。演出・脚本を担当した『もういちど』がTGR札幌劇場祭2011新人賞。『ともこのかげ』で第3回 せんだい短編戯曲賞ノミネート。『瀧川結芽子』で若手演出家コンクール2015優秀賞。2015年TGRアカデミー奨学生。

 

公演詳細

タイトル蓑虫の心象
会 場生活支援型文化施設コンカリーニョ
日 時2月15日(水)17:00/19:30  (開場は開演のの30分前)
概 要目が覚めると、そこは落ち葉の公園だった。隣にもうひとり人が立っている。私たちはなぜここにいるのか、この人が自分にとってどういう人なのか、思い出すことができない。かばんの中から出てくるものを頼りに、ふたりは過去の自分たちをさがしていく。とつとつした会話から浮かび上がる、ふたりのそうだったかもしれない過去の話。
私たちはどこから来たのか 私たちはなにものか 私たちはどこへ行くのか――
演出・脚本小佐部明広
出 演中村雷太、廣瀬詩映莉(ELEVEN NINES)
Web公式サイト
チケット【前売・当日共に】一般:1,800円、高校生以下:1,000円
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