【THE36号線】稽古場コラム「真駒内石山にあった優しい空間」|札幌演劇シーズン2024-冬

現在大好評開催中の 札幌演劇シーズン2024-冬。今回は、弦巻楽団『ピース・ピース』、OrgofA『Same Time,Next Year-来年の今日もまた-』、THE36号線『大きな子どもと小さな大人』の3つの優秀作品がラインナップ。

各作品の魅力を探るべく、札幌でまちづくりやメディア制作をしている石川伸一さんに、シーズン公演作品の稽古場を見学していただき、その場で感じたことをコラムとして寄稿いただきました。全3回の連載となります。

第3回となる今回は、『大きな子どもと小さな大人』(THE36号線)の稽古場の様子をお届け。

今回のプロフィール(石川伸一)

自分の中には黒色があると思う。それは形を変えながら心にこびりついてる。削ろうと思った時気がついた。それは自分と不可分であって、取ることができなかった。自分の中で不可分なものは多い。消そうとするのではなく、あることを認めたい。そして良い方向につきあっていきたい。

プロフィールはこちら(前回記事)

真駒内が好きだ。
何が好きかというと駅から出た風景が好きなのだ。
空中のように地上に出た地下鉄。
駅から出ると、遠近法のような広い風景がひろがっている。
外国のような雰囲気が好きなんだ。
あんまり外国に行ったことないけど…

「THE36号線の稽古場に行くのは大変だよ」と聞いていた。最初に知った所在地の情報は「真駒内の奥」であった。それではよくわからなかった。私の住まいは白石区。遠い感じがした。それから正確な住所を教わる。正直それでもあまりピンとこなかった。

調べてみると、車での行き方はかなりシンプルであった。わかりづらくはない。でも車ではなく交通機関で行くことにした。そのほうがおもしろそうだったからである。

私は可能な限り車より交通機関を使うほうが好きだ。そのほうが行った気が強くなる。車は便利だが時に目的地までの過程の印象を薄めてしまう。それはもったいない。目的地がすべてじゃない。人生と同じように。公共交通のほうがそのまちにリンクできる気がした。だから地下鉄と徒歩とバスによる行き方を調べた。

結論はまたもシンプルであった。地下鉄真駒内駅にある4番バス乗り場のバスに乗り15分程度でバス停石山2条8丁目で下車。そこから、住宅街に入り20分〜30分ほどの徒歩である。駅からのバスの本数もあり、サクッと稽古場最寄りのバス停までついた。そこからの徒歩もわかりやすい。直進してある地点で左に曲がるのみ。あえていえば、冬道のため最後のほうにある上り坂がすべって後退した。雪のため後ろにすべるのはかなりユニークな体験だった。焦る自分がおもしろかった。

着いたところは雰囲気のいい別荘風の建物。そこの1Fの場所で稽古がはじまっていた。

左には、本作の主人公のひとり「大きな子ども」が居た。それは人よりずっと大きい人形。その存在感は圧倒的だ。そして、その父親と母親、その他の登場人物のドラマが展開される。物語は精神に障がいのある子供の話である。

この人形の造形は見事だ。表情はひとつなのに状況によって無表情にも、楽しそうにも、悲しそうにもみえる。

物語はシリアスだがコントのようなユーモアが入り込んでくる。それも結構ベタに感じる。テーマや人形の非常にアーティステックな造形とは、不釣り合いな感じもする。でも、そこにはホッとする楽しさがある。素直に口元が緩む。優しさを感じる。

そして、稽古の中で演出家、役者同士のディスカッションがとても多いことが印象的だった。見学者の自分が進行が気になるくらいである。細かい部分を確認し合って、検討していく光景が見られた。こうした裏側が見られるのは得した気分になる。本番では見られない制作のプロセスを覗き見られた。

通し稽古をおこなう前に、時間を少しいただき、脚本・演出の柴田智之に稽古について聞いてみた。

柴田にとって、稽古で演出をつけるということは役者と「関係性を作る」ということだと言う。たしかに、先にも書いたが稽古中、役者と凄く話し合いが多い。演出をつける、というより役者と再検討を繰り返し作っているように感じる。柴田はすごく役者との話し合いを大切にしている気がした。

それは、稽古でその時の空気感とか、偶発性を言語化して、芝居に反映させているように感じる。ゆらぎのある中で、生まれることを大事にしている印象を持った。自分の中の完成形を再現する、というより、その時その役者との関係性で生まれるものを大事にしていると思った。

そして次に気になるのはシリアスなテーマの中で繰り返されるユーモア。その理由を尋ねてみると、福祉の現場で働く経験を持つ柴田にとって、福祉の現場には絶対にユーモアが必要だと語る。それが困難や死に対応する方法だと話す。こうした思想がつくる舞台にも反映されているのだと感じた。

最後に本作のテーマについて柴田の印象に残った言葉がある。柴田は、障がい者の問題を「なかったこと」にするという考え方もあるという。でも、自分にはそれはできないと語った。だから、こうした作品をつくるのだろうし、僕たちはそれを味わい、考えることができるのだ。このことは感謝したい。

ラスト近くにある息子との交流は美しかった。
このシーンのために、その前のストーリーがあるのだな、と思った。
ありがとう。

石川 伸一
まちづくり・メディアプランナー

公演情報

THE36号線『大きな子どもと小さな大人』

会場

扇谷記念スタジオ シアターZOO
札幌市中央区南11条西1丁目3-17 ファミール中島公園B1F

スケジュール

2024年2月

2/10(土)18:00【前売完売】
2/11(日)14:00
2/12(月・祝)14:00
2/13(火)14:00|19:30
2/14(水)14:00
2/15(木)19:30
2/16(金)14:00 |19:30
2/17(土)14:00

※開場は開演の30分前。

キャスト・スタッフ

柴田智之
《出演・人形操作》 かとうしゅうや/横尾寛
《音楽》 烏一匹(ムシニカマル)
日替わり出演:オオタコタロウ、小黒結太

作・演出:柴田智之
楽曲制作:烏一匹
舞台監督:高橋詳幸(アクトコール株式会社)
人形製作:中川有子(工作室ポラッコ)
照明:高橋正和
衣装:末四万さうす
演出助手:長岡登美子(大人の事情協議会)
宣伝美術:中村恵(TO OV cafe/gallery)
制作:小室明子(ラボチ)


詳しい情報はこちら

お問い合わせ

THE36号線
TEL:050-3698-5920(ラボチ)
Eメール:the36route@gmail.com

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です