【OrgofA】稽古場コラム「楽園と公園の中の夜」|札幌演劇シーズン2024-冬

2024年1月27日(土)より札幌演劇シーズン2024-冬が開催されます。今回は、弦巻楽団『ピース・ピース』、OrgofA『Same Time,Next Year-来年の今日もまた-』、THE36号線『大きな子どもと小さな大人』の3つの優秀作品がラインナップ。

各作品の魅力を探るべく、札幌でまちづくりやメディア制作をしている石川伸一さんに、シーズン公演作品の稽古場を見学していただき、その場で感じたことをコラムとして寄稿いただきました。全3回の連載となります。

第2回となる今回は、『Same Time,Next Year-来年の今日もまた-』(OrgofA)の稽古場の様子をお届け。

自己紹介のつぎたし(石川伸一)

自分はいつも焦っているのですが、何に焦っているのかわからない。人に相談すると「焦っているようにみえない」と言われるので、自分はいかに焦っているかを焦っている原因がわからないまま説明しないといけないので、大変で焦ってます。

プロフィールはこちら(前回記事)

アルファヴィル

中島公園はおもしろい。すすきのという日本でも有数の飲み屋街と隣りあわせ。でも夜は静かな空間がひろがる。僕の実家も近い。日本有数のコンサートホール「キタラ」や道立文学館。そして演劇人やファンなら小劇場「ZOO」の存在は重要だと思う。

20年以上の歴史を持つ演劇空間。その近くに劇団「イレブンナイン」の稽古場がある。今回はその稽古場を借りた OrgofAの稽古にお邪魔した様子を書きたいと思う。

1F入口に入り、少し奥に進み左に行くとその場所はあった。ノックは不要と書かれたドアをあけて稽古場に入る。そこは思ったより広く、明るかった。光の中に僕は入る。

イヤー・オブ・ザ・ドラゴン

札幌の劇団OrgofAは「Same Time,Next Year -来年の今日もまた-」札幌演劇シーズン2024-冬に公演する。

物語は偶然一夜を共にしたお互いが既婚者の男女が、それから毎年、同じ場所で会うことを約束する。それが25年続いた様子を描く話だ。始まりはアメリカの1950年代を舞台にしたお芝居だ。なんだ不倫の話か、と思うかもしれない。

まぁ、それはそうなんだけど、この芝居にはアメリカの’50年代の生活の変化を遠距離でそれぞれに生活をしている、家族とも友人とも違うふたりがお互いの1年分の近況を語りながら一夜を過ごすというところが、お互いを深く語りある必然性があり、おもしろさになっている。

ユーモアもたっぷりな内容だが、同時に男女の心情と歴史的変化が語られるのは、社会学のようにおもしろく勉強にもなると感じた。ぜひ、観に行っていただきたい。

オープニング・ナイト

19時ころにお邪魔すると、関係者が集まっていた。だけどまだ稽古前のようだった。チャンスとみて、代表と演出家に少しお話する時間をいただいた。お忙しいところ感謝です。

本劇団OrgofA代表の飛世早哉香は役者である。演出家でも脚本家でもない。これは珍しい。一般的には、劇団とは芝居をクリエイトする脚本家らが立ち上げ主宰する場合が多い。

対して、役者は基本的には、ある芝居があって、その出演することに依頼を受けたり、オーディションに出たりとか、基本的に「受け」のスタンスなため劇団を主宰するのは珍しい。

それなのになぜ、彼女は役者で劇団を立ち上げたのか?と聞いてみると、彼女は気持ち良く即答した。役者は役を「待つ」ことが基本になっている。流れる時間の中で演じる機会を自分で選択することができない。また演劇全体の制作にかかわることも難しい。

そういった問題を、自分自身が主宰することによってクリアーできると考えて劇団を立ち上げたそうだ。「自分自身で機会を作りだす」という姿勢は他の表現分野でも有効な方法であり、僕自身も大変共感できる話だった。

右側に気をつけろ

さて、時間も迫ってきた。飛世早哉香との話の区切りの良いところで、僕の直ぐ隣でノートパソコンを静かに操作していた人物。それは演出家の増澤ノゾムに話をむけてみた。彼は飛世との取材を「聞いてないフリして、全力で聞いていた」と気さくに話をしてくれる。話しやすい。

ストレートに演出家としてのスタンスを聞いてみると「自分は一番おいしい観客」と語ってくれた。わかる気がするけど、演出家である以上、役者に演出家として接しなければならないのではないか、と思う。

そこで役者に対する指示について聞いて尋ねると「指示というより評価だと思う。指示だと役者はそれに従うだけになってしまいますから」と明確に答えてくれた。

なるほどと思う。ディレクション(指示)というよりエバリュエーション(評価)ということだと思う。まるで学校のように思える。同時にそこには人間味があり、良いゆらぎがあるように感じられた。

男性・女性

演出家の発する言葉の方向性がわかってくる。すると、それにかかる時間も気になってきた。「稽古って何時間くらいするのですか?」と聞くと「うーん、本当は2時間くらいがいいかなぁ、と思います。人間の集中力を考えると。実際はもっとやりますけど。それに、せっかく札幌に来たのだから、外で美味しいものを食べたいし(笑)」。

そこですかさず飛世早哉香が「それは短すぎます。役者もいわれたことをされたことを自分の中で考える時間が必要なんです(笑)」とオーバーアクションに突っ込んだところで、タイムアウトとなった。

ウィークエンド

稽古がはじまった。役者は演技をおこない、演出家はそれを見守る。制作者はその様子を見ながら進行に気を使い台本に素早くメモを重ねていく。

稽古場というのは大人の場だと思う。ひとつの良好な職場だなという感想を持った。同時にお互い学び合う学校のような楽しさも感じられる。

意外に混沌ではなく、ロジックで包まれている。楽しげで自由な雰囲気の中に、やるときはやる、という姿勢が全員に共有されている場だと感じた。今日学んだのは稽古場は学校であり職場であった。 ありがとう。

石川 伸一
まちづくり・メディアプランナー

公演情報

OrgofA『Same Time,Next Year-来年の今日もまた-』

会場

ターミナルプラザ ことにパトス
札幌市西区琴似1条4丁目 地下2階(地下鉄琴似駅直結)

スケジュール

2024年2月
3日 (土)14:00〜 / 19:00〜【SP】
4日 (日)14:00〜/19:00〜【SP】
5日 (月)19:30〜【SP】
6日 (火)19:30〜
7日 (水)14:00 / 19:00〜
8日 (木)14:00〜【SP】 / 19:00〜
9日 (金)14:00〜 / 19:00〜【SP】
10日(土)14:00〜

・記載がないキャスト飛世早哉香×遠藤洋平​となります。
・【SP】はスペシャルキャストの回
・各公演の「開場時間」は開演の30分前となります。
・​未就学児入場不可
​・自由席(椅子席、桟敷席)

キャスト・スタッフ

出演:
飛世早哉香
遠藤洋平(ヒュー妄)

⭐️スペシャルキャスト
・場面ごとに演じるキャストが変わります
小野寺愛美(EGG)
本庄一登(演劇家族スイートホーム)
町田誠也(劇団words of hearts)
太田有香(劇団ひまわり)

著作:バーナード・スレイド
翻訳:青井陽治/堤孝夫
演出:増澤ノゾム
舞台監督:上田知
制作:竹内麻希子(CAPSULE)、山下遥華(Aercs企画)
広報:カジタシノブ、鎌塚慎平(劇団・木製ボイジャー14号)、越智香奈江、服部一姫、明逸人(ELEVEN NINES)、OrgofA
音楽制作:町田拓哉(町田音楽工房)
舞台美術:高村由紀子
照明:秋野良太(合同会社MELON AND SODA)
音響:橋本一生
衣装:大坂友里絵
小道具:大川ちょみ
広告デザイン:LITTLEKIT(Mog Mog Kids)
演出助手:髙橋正子(演劇家族スイートホーム)、らいか(北海学園大学演劇研究会)
ライセンス:シアターライツ
出版元:幻戯書房刊
企画制作:OrgofA


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お問い合わせ

「Same Time,Next Year-来年の今日もまた-」制作
TEL:090-2077-8687
Eメール:orgofa.2018@gmail.com