2023年5月3日(水)、レッドベリースタジオにて29歳以下の演劇人による意見交流会が開催されました。私、佐久間も参加してきましたので、当日の様子をレポートします。
本交流会の主催は、三瓶竜大さんが代表を務めるポケット企画。29歳以下の演劇人が集まり、困っていることを率直に語り合ったり、「フォーラムシアター」というワークを通じて解決策を見つけたりと充実した交流会となりました。
集まった参加者は延べ40人ほど。それぞれが異なる活動団体に所属していますが、抱える問題や不安は共通点が多いことも興味深い点でした。
以下では、当日の様子や実際に話し合われた内容をご紹介します。29歳以下の方はもちろん、30歳以上の方、そして演劇を観るお客様もぜひお読みいただければと思います。
壁討論
「壁討論」は、劇場に設置されたパネル上で、筆談で意見交流するワークです。
交流会が始まる前に、参加者は自分が演劇活動する上で「困っていること」や「考えていること」を付箋に書き、カテゴリーごとに分かれたパネルに自由に貼っていきます。
- 出演者(俳優、演奏家、ダンサー等)
- 裏方(脚本家、演出家、テクニカルスタッフ等)
- 企画・プロデュース
- 環境・その他
交流会中は付箋を自由に追加できるようになっています。また、疑問についての回答を知っている人は、付箋の近くに「これについてお話しできるので声をかけてね」と自分の名前を記してコメントすることができます。パネルは交流会中いつでも見られるように設置されています。
共有された「困っていること」
パネルに貼られた付箋には、以下のような内容がありました(一部を紹介)。
- 外部の劇団の公演に参加してみたいけれど、どうしたらよい?
- 良い役者って何?
- 稽古時間の確保はどうしていますか?社会人だと難しい?
- 役者はどこまで演出に従えば良いのか
- 上手くなりたい!推してほしい!売れたい!
- 先輩方にいろいろ学びたいが機会がなく、スキルアップする機会が見つからない。
- 脚本のト書ってどこまで書いていい?
- 暗転って少ない方が面白い?最高何回まで?
- 劇場と同じ設備で練習する機会がない。
- 「非常時はスタッフが避難誘導します」って言うけど、誘導の仕方をちゃんと学びたい。
- 劇場以外に使える会場を知りたい。
- 企業スポンサーとつながるためには?
- 企画するときの資金調達はどうしている?
- ギャラはどう決めたらいい?
- 限られた環境で育ってきたこともあり、自分がハラスメントをしそうで怖い。
- 劇団に所属するためにはどうしたらいい?
- 学校とバイトと演劇、うまくやりくりできない。
- オーディションや公演の情報はどこで見れば良い?
- 上手な宣伝の仕方って?
- DM・LINEなどの個人的な宣伝ってぶっちゃけ迷惑?
いくつかのトピックで意見交流
お昼になると、壁に貼られたトピックのうち、「これはみんなで話し合いたい」という意見が特に多かったものを選び、5〜6人の小グループに分かれて意見交流を行います。
次の3つのトピックが選ばれました。
- 演劇活動に必要なお金について(公演企画:どうやって調達する? 生活と演劇:就職はした方が良いの?)
- 良い俳優とは何か(良い演技って?オファーをされる俳優になるためには)
- ハラスメントについて(何か対策している?防ぐことはできるの?自分が加害者にならないために)
30分ほど話し合い、お昼休憩を挟んで全体への共有に移ります。小グループで話し合われた内容について全体に発表し、これについて全員が自由に発言します。
特に長い時間をかけて話し合われたのは、昨今演劇業界でも話題の「ハラスメント問題」についてでした。劇団に所属している参加者は、自団体で取り組んでいる対策を共有したり、ハラスメントガイドラインの必要性の有無について話し合ったりと、白熱した議論となりました。
何がハラスメントであり、何がハラスメントでないか、その線引きは簡単にできるものではありません。たとえハラスメントに当たらなかったとしても、創作現場において誰かが「私は傷つけられた」と感じてしまう状況が生まれるのは、健全ではありません。
こうした「ハラスメントとは言えないまでも不適切なやり取り」すなわち「グレーゾーン」をどのように扱っていけば良いのか。そして、そのようなやり取りを発見したときにどう行動すれば良いのか。
このトピックは身近な問題ですので、引き続き議論していく必要があります。
より具体的な課題解決策を考える
後半では、2グループに分かれ、「企画・制作・プロデュースのノウハウ」と「演劇活動と生活(仕事や家庭)とのバランス」のテーマでさらに具体的な意見交流・情報交換を行いました。
「自分はこう考えているよ」「うちの劇団はこうやって企画を立てているよ」と互いの経験を分かち合うことで、疑問が解決されることもありました。
フォーラムシアター
夜になると、ポケット企画の持ち込み企画「フォーラムシアター」が始まります。
上の画像のように、参加者は3チームに分かれ、創作現場で起きた「課題」を描いた寸劇を作り、これを発表します。見ている人は劇を自由に中断することができ、劇を止めた人は出演者に成り代わって課題を解決へ導く演技を披露します。
ここで出た「課題」は、たとえば「稽古の途中で演出家に言われた一言にモヤモヤした」であったり、「稽古場の空気がすごく重いことがある」であったりと、現場における「あるあるネタ」も共有され盛り上がりを見せました。
これらの問題は簡単に解決することは難しいですが、フォーラムシアターを通じて「誰かが動けば何かが変わるかもしれない」という気づきを得る機会になりました。
また、普段俳優をしている参加者が演出家を演じることで、役割の違いから見えてくるコミュニケーションの難しさも体感することができました。
まとめ
今回の意見交流会を通じて、演劇人同士のコミュニケーションと話し合いの重要性を再確認することができました。
近年はコロナ禍により他団体とのつながりが希薄になってしまっていましたが、他の人の経験やアイデアを聞くことで、新たな視点や解決策のヒントを得ることができました。さらに、個々の悩みや不安だけでなく、演劇界全体の課題についても議論できました。何よりとても楽しかった!
意見交流会はきっかけとなる場です。こうした草の根的な意見交換と情報共有の繰り返しが、より豊かな演劇環境を作っていくことにつながると期待しています!
次回の意見交流会も、そう遠くない時期に開催予定です。詳細は続報をお待ちください。
sapporodsap@gmail.com(佐久間)