次なる企画を考える|文化芸術は誰のもの?おかわり#3・4

2022年から始まった北海道シアターカウンシルプロジェクト。地域における文化芸術の支援体制のあり方の検討や、次世代の文化芸術を担う人材を育成することを目的としています。

その中のプログラムである「文化芸術は誰のもの?おかわり」の第3回目と第4回目が開催されましたので、当日の内容をご紹介します。

これまで「おかわり」では、2022年8月と9月に希望者が集まり、文化芸術について自由に語り合う機会をつくってきました。また、10月23日には映画「アートなんかいらない!」を上映、11月4日にはシンポジウム「文化芸術は誰のもの?戦後ドイツ・日本では」を開催するなど、文化政策をテーマに幅広く勉強してきました。

これらを踏まえ、11月19日、12月17日には久しぶりに希望者が集まり、これまでの取り組みを振り返りつつ、これからの北海道に必要な次なる企画について考えてみました。

11月19日 第3回目

11月19日の「おかわり」には7名が参加。企画を考えるにあたり、まず北海道の課題について考えてみることにしました。

文化芸術が、文化芸術そのものの振興にとどまらず、観光、まちづくり、国際交流、福祉、教育、産業その他の関連分野との連携が求められる今、北海道の課題について議論する機会を設けることで、文化芸術と他分野の連携をより具体的にイメージしていくことはできないか。そんなことを考えました。

参加者からは人口減少や札幌一極集中、老人介護、自己責任ばかりが求められる生きづらい社会等々、さまざまな課題が出されましたが、話を進めていく中で一番の課題は「興味のあることにしか関心を示さないこと」なのではという意見が出ました。

確かに、文化政策に関するシンポジウムをやっても参加するのはそもそも文化施策に関心がある人が圧倒的です。本当は観光や福祉の世界にいる人にこそ来ていただき、何かヒントをいただきたいのですが決してそうはなりません。いくら連携が必要だと叫んでみても、分野を超えた交流は現実にはなかなか難しい。ましてやネット社会。求める情報が自分の興味があることや自分に都合のよい情報だけに偏ってしまいがちないまこそ、意図しない偶然の出会いを作り出すような「場」が必要なのではないか、そんな声があがりました。

参加者のひとりから、「誤配」という言葉を教えていただきました。「誤配」とは文字通り「誤って配られてしまう」ことで、誤配されたものはそもそも求められているものではないわけですから、多くの場合、受け取った人にとっては役に立たない無駄なもののはずです。しかし、一見無駄に見えるものが、思わぬ思いつきを与え、次のイノベーションにつながるかもしれない、それが「誤配」の考え方です。

必要なものは「誤配」を生み出すことのできる場所なのかもしれません。例えばそれは、書店に行って買いたい本を探していたら、全く違う本を見つけ、手にとってみたら意外に面白くて、探していた本を買わずに、違う本を買ってしまったというような意図しない偶然の出会いが起こりえる場所です。そんな場所を札幌につくることはできないか。

文化芸術があらゆる人やモノをむすびつける接着剤になって偶然の出会いを生み出し、化学反応を起こしてイノベーションのきっかけを作り出す。。。おぼろげながら企画の方向性がぼんやりと見えてきました。

12月17日 第4回目

12月17日の「おかわり」企画で話題提供をする栗山町地域おこし協力隊の土屋綺香さん

続く12月17日の「おかわり」には9名が参加。前回は北海道という大きな枠組みから、北海道の課題を考えてみましたが、今回はぐっと焦点を絞り地域にスポットを当て、地域と札幌の連携について考えてみました。

札幌と地域が連携していくことで北海道全体の「文化力」を高めていくことはできないか。そんなことを考えるきっかけとして、栗山町で地域おこし協力隊として活躍している土屋綺香さんに「地域の課題と可能性」と題し話題提供をしていただきました。土屋さんは東京の大学を卒業後、都内の建設コンサル会社などに勤務し、2021年4月から地域おこし協力隊として栗山町に移住。現在、町内のシェアレストランのマネージャーを務めるなど、農産物の生産者と消費者をつなぐ業務に携わっています。

話題提供の中で土屋さんは「少子高齢化、人口減少、過疎、仕事がない、といった課題は都会から見たステレオタイプの地域の課題に過ぎない」とし、「スタバのようなチェーン店はないが、なくても不便さを感じることはないし、チェーン店よりも個人のお店の方が楽しい。チェーン店は資本主義の産物。栗山に暮らすことで消費社会の中に組み込まれてマーケティングのエサになることが減った」と現在の暮らしについて語ってくれました。

また、その一方で地域の課題としては「農家同士の交流はあるが、農家と会社員といった分野を横断した交流がない」ことなどを挙げました。さらに、都市と地域の連携については「都市と地域の接点をどう作っていくかが課題。貨幣価値で測れるものはごく一部なのにもかかわらず都市が地域に提供できるものは貨幣価値が中心。地域はどこを貨幣価値に変換し、どこをそうではない豊かさとして保っていくのがいいのかを考えていかなければならない」と指摘します。

分野を横断した交流がないことは、11月19日の「おかわり」でも提起された課題であり、都市・地域に共通した課題と言えるかもしれません。また、貨幣価値で測れない豊かさこそが本来、文化芸術が持つ力とも言えます。

札幌と地域が連携し、北海道全体の文化力を高めていくために、文化芸術にできることはまだまだありそうです。11月・12月の「おかわり」企画はそんなことに改めて気づく機会となりました。