「もし札幌に開催地が変更したことに対して複雑な思いを抱いているのであれば、絶対に楽しめると思います。」
東京下北沢を中心に活動する劇団「ゴジゲン」。2020年1月25日〜27日にシアターZOOにて札幌公演を行います。
映画監督としても活躍する主宰の松居大悟さんを筆頭に、実力あるメンバーによって練られ作られた男たちコメディ、不器用な人間のドラマが、いよいよ札幌に初上陸です!
作・演出・出演の松居さんと、北海道出身の劇団員、本折最強さとしさんに作品についてお話をうかがいました。
選ばれなかった人たちの物語を見たい
ー はじめに、「ゴジゲン」がどのような団体か、結成した経緯も含めて教えてください。
松居大悟さん(以下、松居) ゴジゲンは、2008年に慶應義塾大学演劇サークル“創像工房 in front of.”内で結成しており、今年で11年目になります。現在男6人の劇団員で活動しています。
京都を拠点とする ヨーロッパ企画 を師と仰いで、ゴジゲンという名前もヨーロッパ企画の方につけていただきました。
ヨーロッパ企画のお芝居を観て、「こんな面白いことができるんならやってみたい!」と思って劇団を作りました。ゴジゲンも、最初はヨーロッパ企画のようなシチュエーションコメディをずっと作ってきました。
活動を続けていく中で、次第に自分たちにしか作れない作品を意識するようになりました。近年は、言葉にできない感情やドラマにならないと思われている出来事を大切に描くコメディを作っています。
ー 今回上演される作品『ポポリンピック』はどのようにして生まれたのですか。
松居 テーマをオリンピック・パラリンピックにすることは決めていたんです。毎回、このメンバーで立ち向かいたいテーマがあって、前回公演は「愛」、前々回は「生き死に」を描いていて。
2020年に公演するってなったときに、東京オリンピック・パラリンピックを避ける方が変な気がして。ちょうど役者たちの年齢が選手たちの年齢とも近いので、敢えて真正面から立ち向かおうと思いました。
じゃあ、僕らにとってのオリンピック・パラリンピックって何だろうって考えた時、選ばれなかった人たちの物語を見たいと思った。東京オリンピックの最終追加種目に落選した競技の選手たちの物語。彼らの姿にこそに価値があるんじゃないかなと思った。
ー 松居さんは以前Twitterで「社会派の劇になりそうだったので、台本を半分燃やしました。(略)識者に馬鹿にされるような楽しい劇へ!」とつぶやかれていましたね。松居さんにとって社会派の劇、楽しい劇とはどういったものですか。
松居 一昨日くらいの稽古で、台本の半分をやめようという話になったんです。「社会派」みたいだからやめようって。「社会派」という言葉が適切かどうかはわからないですが。
どうとでも捉えてもらえるような劇を作りたいんだけれど、以前の台本では一方向のみを提示するみたいな劇になりそうだった。オリンピックそのものを描きたいんじゃなくて、オリンピックにまつわる人間たちを描きたいんです。オリンピックそのものをどう評価するかっていう台本はやめよう、と。
ゴジゲンの稽古してます。昨日、社会派の劇になりそうだったので、台本を半分燃やしました。善雄が三場をレンジで、四場をグリルで焼いてました。リアリティなんて丸めて食べて、識者に馬鹿にされるような楽しい劇へ!レッツゴー!
— 松居大悟 (@daradaradayo) November 27, 2019
松居 劇作において、今回の作品は客観的事実があるのが制約となっているので、難しさも感じています。
稽古場の役者たちを見ていると、もっと解き放ちたい!とすごく思うんですよね。難しいところも感じていますが、稽古場で試すと大丈夫な気がしたり、その繰り返しです。
本折最強さとし(以下、本折) ゴジゲンの芝居は、割と “自分自身” でいられる作品が多かったんです。自分の言葉で喋る、表現できる作品が多かった。以前は役名が役者本人の名前で作っていました。
今回は確かに客観的事実もあるし、実際にオリンピックに参加する人やスポーツをやっている人がいる、そういう意味での難しさはありますね。役者としてチャレンジするところです。
楽しいだけではやっていけず、ちょっと苦しまなきゃ抜け出せないところがあるような作品かなと思います。
ー フライヤーには「多様性と調和。多様性と調和?」とありますが、これは。
松居 「多様性」と「調和」って言葉になんか違和感があって。「多様性」って括るだけで、「多様性」に入れなかった人にとってはそれはすごく残酷な言葉になる。調和していないから「調和」って言っているんじゃないか、とか。
選ばれなかった人たちの物語は、こういった言葉に対するレジスタンスに近いのかもしれません。
札幌の空気を吸ったゴジゲンを
ー 今回初めての札幌公演ですが、札幌で上演したいと思ったきっかけは何かありましたか。
本折 僕が北海道出身なんです。実はゴジゲンのメンバーは、みんな地方出身で、福岡、島根、岐阜、富山、石垣島。
活動拠点・東京は人も多いし、劇場も多くて演劇環境も整っているけれど、なんだかんだいってツアーは楽しいんだよね。故郷に錦を飾りたい気持ちもあるし。
松居が出身の福岡ではやったことがあったので、次は北海道かなと。夢はメンバー全員の地元を回ることです。
ー ゴジゲンにとって、この札幌公演はどのようなステップアップになるのでしょうか。
松居 僕らは集まったメンバーで作品をつくるし、お客さんから受け取った感想によって作品が育っていくという感覚があって。これまで京都や北九州で上演したときも、現地の感想や反応が東京と比べて全然違ったりして。それがすごく面白いです。そうやって作品が育っていく。
だから札幌のお客さんが僕たちの作品をどういう風に感じるんだろうと楽しみです。彼らの言葉を聞きながら、札幌の空気を吸いながら作品を上演できたら、自分たちにも返ってくるものがある。
本折 僕個人で言うと、北海道は家族や友だち、知り合いが多いので、彼らに観せたいって気持ちは強いですね。僕は今年で36歳になるんですけれど、北海道を離れたのが18歳のときなので、北海道にいた時間と東京にいる時間が半々になったんです。
自分の劇団のしっかりとした作品を、送り出してくれた方々に観せることができるのは嬉しいです。
ー 最後に、この記事を読んでいる方にメッセージをお願いします。
本折 普段身を置いている劇団で地元にいけることに、喜びを感じています。自分のやっていることを、何か頑張っているんだろうなって遠くから応援してくれている人たちに、少しでも恩返しできるようなお芝居をしたいです。
そこまで特殊な芝居ではないですが、おかしな作り方をしているので、僕たちを面白がっていただけたら嬉しいです。
松居 ゴジゲンが札幌で公演をするのは初めてなので、どういう劇団かわからないとは思うんですけれど、札幌では絶対に観られない劇が観られます!それは僕たちが面白いと信じて作っているものです。
札幌も、マラソンと競歩が開催されますよね。オリンピックにまつわる土地でもあるので、もし札幌に開催地が変更したことに対して複雑な思いを抱いているのであれば、絶対に楽しめると思います。揺さぶられた側、振り回された側の機微を描いている作品です。
2019年11月28日
ゴジゲン稽古場 にて
公演情報
タイトル | ゴジゲン第16回公演 「ポポリンピック」 |
劇 団 | ゴジゲン |
会 場 | 扇谷記念スタジオ シアターZOO |
日 時 | 2020年1月25日(土)~27日(月) 1月25日(土)18:00 1月26日(日)13:00/18:00 1月27日(月)19:00 ※受付開始は開演の45分前、開場は30分前 |
概 要 | 2020年、ここでオリンピック・パラリンピックが行われる。 プレイヤーとして生きていて、機会は今回しかないだろう。 だけど彼は出られない。 出る資格すらなかった。 多様性と調和。多様性と調和? どこにも居場所なんてないならば――― さあ、彼の物語を始めよう。選ばれなかったら、作るまでさ。 【アフターイベント開催!】 |
脚本・演出 | 松居大悟 |
出 演 | 目次立樹、奥村徹也、東迎昂史郎、松居大悟、本折最強さとし、善雄善雄、木村圭介(劇団献身) |
チケット | 前売 3,500円 当日 3,800円 学生割引 2,500円(枚数限定/要学生証提示) ・チケットぴあ(Pコード:498-130) |
Web | 公式サイト |
お問い合わせ | info@5-jigen.com |