2019年10月31日〜12月1日まで開催されたTGR 札幌劇場祭(Theater Go Round)。12月4日に授賞式が行われ、各賞の結果発表がありました。
大賞 RED KING CRAB「ありあけ」
大賞に輝いたのは、11月29日〜12月1日にシアターZOOにて上演されたRED KING CRAB 第5回公演「ありあけ」です。おめでとうございます!
終戦後の札幌創成川を舞台とした、「ともだち」がテーマの作品でした。作り込まれた舞台美術や物語に、「観ていて心が温まる」などの感想がSNSでも広がりました。
受賞したRED KING CRABには賞金20万円と翌年再演の制作費として30万円、翌年の札幌劇場祭参加権が贈呈されます。
代表であり脚本・演出の竹原圭一さんより、コメントをいただきました。
団内では、代表、脚本、演出をさせて頂いています。
この度、TGR2019での大賞受賞を受けて、この場をお借りして、ご挨拶をさせて頂きます。
まず、ご来場下さった皆様、どうもありがとうございました。
そして、制作に携わって下さった役者、スタッフ、関係者各位の皆様、どうもありがとうございました。
今回の公演は劇団としては、第5回目の公演です。今、主催事業として公演を行う事が、これ程に辛いという事を身を持って思い知らされています。
現状維持ではなく、常に前進を肝に銘じて向き合って来た制作期間でした。
ここ数年間で、既存の台本や短編芝居等、シアターZOO企画公演の中で今までに経験した事のない作品づくりのやり方や作品に出逢わせて頂き、今回の公演はそれらの作品づくりを通して、自分が大切にしたい事は何なのかを考え続けて来た公演だったかと思います。
作品について少しお話をさせて頂きます。
創作の発端は、前作ガラスの動物園の制作期間にありました。
札幌の歴史、その中でも、戦中、戦後の札幌について、以前から興味を持っていた僕は、商工会議所の方からのご紹介で、とある方にお話をお伺いする事になります。
この時はまだ公演をする予定も決まっていない段階です。完全に個人的な興味、関心の中で、何日も何ヵ月も、その方と話をしていました。
黄昏時の、病室の一角で、お身体も優れない中、何処の馬の骨ともわからない若僧の僕に、「話しておきたい事がある」と何度もお話する機会を下さった山崎さん。
山崎さんがお話下さった、当時の札幌の事、
そこにいた人や、訓練中の様子、戻って来てからの創成川東でのお話が、この作品を創る上での、大きな財産となりました。
当時の資料集めに躍起になり、大変お世話になった北の映像ミュージアムの皆さんや、南里商店の鹿内さんを始め、創成川東の皆さん、言い出せば切りがない位、沢山の方々の宝物のようなお話を聞かせて頂きました。
そして、九州へ取材も兼ねて行くことになります。
行った理由は山崎さんとの約束です。
九州の太刀洗に、僕が乗っていた飛行機があるというお話になり、見て来ます。と飛び出した札幌。
九州では、知覧町、筑前町等、飛行基地があった場所を中心に周りました。
その中で保存されているお手紙の文章や内容を理解し、自分の中に刻み込む作業を何週間に渡り、行って来ました。
今振り返ると、舞台を現代ではなく、設定の時代に据える覚悟と思いを持とうとしたのだと思います。
九州でも多くの方とお話をさせて頂きました。
富屋旅館の女将さんを始め、スタッフの皆さん、偶然ご飯をご一緒させて頂いた会社の皆さん、知覧平和博物館のスタッフの皆さん、太刀洗レトロステーションの渕上さんを始め、太刀洗平和博物館のスタッフの皆さん。
世の為、人の為、自分の為。
その言葉の裏にある思い。
個人から始まった行動や思いが、軈て大きな形となって行くこと。その大切さを多くの方々に教えて頂いたように思います。
役の背景にある戦争という出来事を、お聞きした内容としてだけではなく、体験していない僕が、それを上演する事の意味を探していたように思います。
札幌に戻って来てからは、台本づくりの最中で、親しかった友人が亡くなりました。
今でもふと思い出す事があります。
二人で語り合っていた面白い舞台の話、いつかやろうと作品のお話、一緒に住んでいた時の珍事件、過去作品の稽古期間のバカ話。
そんな色んな思いが駆け巡る中、製作したお話です。
稽古期間から最後の最後まで、皆で、面白いものは何かと探して行った期間でした。
その中で、ご迷惑をお掛けした事もあったかと思います。この場をお借りして、本当に申し訳ありませんでした。
多くの方々のお力添えのおかげで、ありあけは創る事が出来ました。
僕はこの作品を、観に来て下さったお客様、そして、携わって下さった多くの方々のおかげで創らせて頂いた作品と考えています。
RED KING CRAB として、現状に甘んじる事なく、更に面白いと思って頂ける作品を観て頂けるように、これまで以上に仲間達と協力して、作品づくりに向き合って行きます。
お世話になった皆様に、心から感謝申し上げ、ご挨拶とさせて頂きます。
どうもありがとうございました。
各賞発表
【優秀賞】Org of A「Same Time,Next Year-来年の今日もまた-」
【優秀賞】演劇家族スイートホーム「わだちを踏むように」
【特別賞】座・れら「座・れら10周年記念 第15回公演「私 ~ミープ・ヒースの物語~」
【特別賞】世界エイズデー札幌実行委員会「PRESENT」より恒本礼透さん
【特別賞】総合芸術ユニットえん「半神」より中野葉月さん
【新人賞】ポケット企画「おもり」
【俳優賞】 飛世早哉香さん(Same Time,Next Year-来年の今日もまた-/Org of A)
【俳優賞】井藤淳矢さん(ありあけ/RED KING CRAB)
【TGRの首位打者】人形劇団ありんこ 人形劇「おおかみと七ひきのこやぎ」ボードウィル「かえるの合唱」ほか
【TGRのホームラン王】トランク機械シアター「ねじまきロボットα~ぼくは忍者の夢見丸」
今年も盛況の中、TGR2019の幕が閉じました。受賞した各団体の皆さま、本当におめでとうございます!
次はどんな素敵な舞台に出会えるのでしょう。楽しみです。