【舞台裏の仕事人たち】振付・東海林靖志さん

いよいよ今月7月22日から「札幌演劇シーズン」が始まりました!この夏札幌を熱くする芝居の数々を、是非楽しみましょう!!

今回は、8月16日~23日にコンカリーニョで上演するintro「わたし−THE CASSETTE TAPE GIRLS DIARY−」の振付を担当されている、東海林靖志(しょうじやすし)さんにインタビューさせていただきました。

ダンス・振付のお仕事の話から、演劇との関わり方まで幅広くお話ししていただきました。振付家という立場から見た、演劇に対する想いや愛が、たくさんの言葉から感じ取ることができました。

 

東海林靖志 / Yasushi Shoji

HIPHOP との出会いにより音楽やアート、ダンスに興味を持ち15歳から踊り始める。その後コンテンポラリーダンス、舞踏に影響を受け、独自の身体表現を模索し始める。

ダンサー/振付家の平原慎太郎 主宰のダンスカンパニー「OrganWorks」所属。国内外で公演活動を行うほか、北海道を拠点にダンス・演劇作品への振付や出演、映像作品の制作、異分野アーティストとの創作や即興パフォーマンス、様々な対象に向けたワークショップも精力的に行っている。

札幌市出身、在住。公式ホームページ

自分のペースで自分のダンスを

新国立劇場 森山開次『曼荼羅の宇宙』内「書」photo by 井上嘉和


ー ダンスと出会ったきっかけはなんですか。

中学3年生のとき、当時日本にヒップホップの小さなブームがきてて、先にハマってた友だちが「The Best of World DJ」という CD を貸してくれたんです。そのアルバムを聴いてずどーんと来たんですよね。雷に打たれたかのような衝撃が。

次の日から車庫にダンボール引いてブレイクダンスのまねごとしてました。

ダンスだけじゃなくてヒップホップカルチャーの全ての虜になって、いわゆるダボダボの服も着てたし、バイトして機材買い集めて DJ もしてました。

ちなみにそれまでは音楽への興味はさほどなくて、最初は野球、同時に水泳も、そのあとスキー、サッカー。完全に「浅く広く」タイプのスポーツ少年でした。

 

ー コンテンポラリーダンスを始めたのはどうしてですか。

20代前半に自分の踊りに対して「飽き」というか、「変えたい」「変わりたい」みたいな欲求をつのらせていたタイミングで、コンカリーニョで「踊り放題ランド」っていうコンテンポラリーダンスの公演があって、そのときにある方が踊っているのを見て、それこそ初めてヒップホップの CD を聞いたときの「なんじゃこりゃー!」と同じような衝撃を受けました。

そこから何かが自分の中で開けたというか、もっと自由で良いんだと思ったし、もっといろんな踊りを知りたいし、もっとこの目で見てみたいと思うようになりました。ターニングポイントでしたね。

 

ー そのときに衝撃を受けたダンサーとはどなたですか。

山海塾の舞踏手でもある岩下徹さんです。

険しい顔して、得体の知れない言葉をブツブツと発しながら、つかみどころのない、得体の知れない動きを連発していて、それも汗だくで、音楽一切なし。

「一体この人は何なんだ、何をやってるんだろう」と、気付けば最後まで目を離せず夢中になってその踊りを見ていました。

型のない、枠もない、身体の内側から溢れ出ててくるようなその動きを見て、衝撃を受けましたね。その後、舞踏にも興味をもって、そこから自分の踊りが大きく変化していくんですけど。舞踏にはかなり影響を受けてます。

 

photo by Saki Matsumura

 

ー ダンスを仕事として、これだけでやっていこうという気持ちはあったのですか。

ありました。23歳の時にコンテンポラリーダンスをもっと知りたいって思って、「コンテンポラリーダンスはドイツが盛んらしい」ということを当時友人や知人から聞いて、仕事を辞めて、1ヶ月間ドイツへ行きました。

鉄道を使ってドイツ国内さまざまな土地へ旅をして、たくさんダンス作品を観ました。

この旅でドイツ在住の三名の日本人のダンサーさんのおうちに数日間ずつ居候させてもらったのですが、そのときにドイツはもちろん欧州各国のダンス事情を教えてもらいました。こちらではダンサーがちゃんと職業として認められていて、教育機関も就職先もたくさんある、社会保障も手厚いぞと。

ダンスを仕事にしたいという思いはあったし、仕事辞めてドイツにまで来て、普通だったらここで、よし、挑戦してみようってなるとこだったんでしょうけど、どういう訳かなんか違うなって思った。

プロのダンサーとして生きる覚悟がただただ決まってなかっただけかもしれないけど、「自分のペースで自分のダンスを追求していきたい」と思った。

旅の後半にはその思いが強くなっていて。実際ダンスを仕事としてできるようになるまで、かなり時間はかかりましたが、遠回りした分、色々な経験を積めたしこれはこれで良かったと思ってます。

 

ー ドイツから帰国して、その後はどういった活動をされていましたか。

結局就職して、自分のペースでダンス活動を続けて…という感じです。

その頃に今も一緒に活動しているダンサー、振付家の平原慎太郎と写真家の松村サキと僕とで「瞬 project」というグループを結成して、札幌市内の劇場やギャラリーなどで作品を上演するようになりました。これがきっかけで本格的に舞台の道へ進みました。

 

ー それで、今は舞台の振付師としての活動をされているのですね。

自分は振付家としてよりもダンサーとしての活動の方が多いです。振付はほとんど今は演劇作品においてのみです。

過去にはソロ作品を何度かつくってるんですけど、どうも不完全燃焼で終わってしまうというか、自分の中の「つくるスイッチ」の入れ方がわからなくて。

自分に振付は向いてないなっていう思いが⻑い間あったのですが、近年札幌の演出家の方々に振付家として創作に招いていただいて、お仕事をさせていただくようになってから、その考え方もだいぶ変わってきました。

今、「つくるスイッチ」入ってます。

 

introと舞台を作る

ー 演劇作品の振り付けはどういう風に作っていくんですか。

まず、演劇の場合は作品の元になる原作がある場合がほとんどなので、まずはそれを読み進めて、本の中からイメージの種となるもの、印象的な言葉や空気感、質感、とにかくなんでもいいから「動き」のとっかかりになるものをひとつでも多く掴む為の作業をします。何もないところからは何も生まれないので。

次に、今回の作品(intro「わたし−THE CASSETTE TAPE GIRLS DIARY−」)のように、「出演者の数が凄く多い」ということを聞いたら、この人数だったらこういうことができるかな、この作品の中のこういう部分を表現できるかなとか、こういうことを試してみたいな、というイメージを頭の中に描いて、それからそのイメージをノートに描いていきます。

ほとんど丸と点と線、あと矢印だけですけど。イメージをノートに絵として記録していきます。

そのあとに、じゃあそれを実際やるにはどういう作業が必要かなと考えて、そのイメージ図から、逆にまた頭の中に人を配置して立体的にイメージを膨らませて、できるだけ細かいパートに解体していきます。

次に、技術的に必要なことだったり、身体の使い方のポイントだったりをノートに書いていきます。一番シンプルな形に解体したものを何度も何度も繰り返し稽古して体に入れる。

これができるようになったら次のステップへ、また次のステップへと、解体したものを組んでいって、最初の全体のイメージ像に近づけていく、という風に作っていくことが多いです。

 

ー 演出からのオーダーはありますか。

ワカナさん(intro 演出)は、放牧タイプで凄く自由にやらせてくれて、最初の段階でオーダーみたいなそういう要求をされたのは記憶の中で一個もない。こっちが不安になるくらい笑。

こんなに放し飼いでいいのってくらい自由にやらせてもらってます。

強いて言えば、役者の体づくりから始めてほしいということだったので、ストレッチ、体幹やバランスを鍛える時間を必ずとって、それからこの作品に最低限必要な体の使い方のトレーニングを毎回してます。

 

ー introとの出会いはどのようでしたか。

これを機に思い出そうとしたんですけど思い出せなくて、、(イトウワカナさんが横から「制作の方にしょうじさんを紹介されて。「しょうじくん、たぶんイントロと合うよ、そろそろ体のことをやれば?」と言われてですね。」)

introと一緒に舞台を作っていくのは自分にとっては初めて演劇に携わる仕事で、新しい挑戦だったのですごくワクワクしてました。とても大きな出会いです。

1人でもくもくと踊ることも好きなんですけど、演劇作品の創作に関わって、各持ち場でアイデアのキャッチボールを重ねながらクリエイションしていくこと、そういう共同作業の時間はやっぱり面白いなと。

「わたし−THE CASSETTE TAPE GIRLS DIARY−」の初演の時、そういう面白さに改めて気づかせてもらったことを覚えています。

 

ー 初めてintroの舞台の振り付けをしたときはどうでしたか。

うまくいっていたと思います。僕の中では。intro とは相性が良いかも、と思った。

日頃から訓練されているダンサーとはまた全然違う別次元の面白さが役者にあって、稽古を重ねていくたびに確信になっていったというか、これは面白い!という感じになっていきました。

そこからますます興味を持っていったっていう感じですね。

ワカナさんと僕は、同じ場所から同じ方向へ向かってるんだけど別の視点、別の角度からものを見ているので、稽古中常に意見やアイデアを出しあって、擦りよせては反映させていくという感じでやってました。

ちなみにそのやり方は今もあまり変わってません。

 

 

ー 今回の作品、intro「わたし−THE CASSETTE TAPE GIRLS DIARY−」に関して、初演との違いはありますか。

まだ今は(6/26 時点)具体的なシーン固めっていうよりは、いろんな可能性を見出す時間というか、いろいろ試してます。

初演よりも表現できる幅が広がっている気がしますね。確実に進化していると思います。

 

ー 作品の見どころは。

生まれて死ぬことや日々の「繰り返し」、心や脳の様々な働き、「感情の起伏、揺れ」。そういったキーワードを全肉体、全神経を使って鮮やかに軽快にカラフルにポップに、時にはソウルに、ファンクに仕上げてしまう。

その、イトウワカナ節・intro 節が、他にはないカラーであり、その世界観をぜひ観ていただきたいですし、ひとりの「わたし」という女の子を 35人の「GIRLS」達によって「再生」される時間とは一体どんなことなのか、というのも楽しみにして欲しいですね。

 

魂がうまれる、命が誕生していく

photo by Toshi Hirakawa


ー 振付師という仕事で、やりがいを感じる瞬間はどんなときですか。

頭の中で雲のようにふわふわしているアイデアを頭の中でこねこねして、紙に描いて、それが実際に稽古場で更に色んな人のアイデアや手が加わって、形になっていって「魂が吹き込まれる、命が誕生する」時を経て作品が育っていく。

停滞する時間もあるけど、全てひっくるめてこの仕事の面白いところだし、やりがいを感じます。 自分の想像を上回ってくるんですよ、必ず。

信頼しているスタッフや出演者や、色んな人の手が加わることで、ひとりではけっして到達できなかった場所に、自分の想像以上のものに化ける瞬間というのがあって、その瞬間に立ち会えた時は、めちゃめちゃ嬉しいです。

 

ー 振付師として、ずばり、東海林さんのこだわりとは。

“こだわり”って考えたことないというか、今考えてみてもバーン!と出てこないということは、ずばり、ない。

強いて言うなら変わっていくことですかね。自分を更新していくというか。ひとつのスタイルに縛られたくないので。

あとは「良いものはシェア」することですかね。自分が学んできて、良いと思っていることは全て伝えます。一緒に成⻑していきたいです。

 

ー ダンサーや舞踏家、振付家になるためにはどうしたら良いですか。

踊り続けること、作り続けること。

いつどこで転機やチャンスが訪れるかわからないので、「その時」がいつ来てもいいように、心と身体の準備を怠らないということだと思いますきっと。

当たり前のことをこつこつと当たり前に続けるということでしょうか。

 

ー ダンスや振り付けの分野において、他地域を比べてみて、札幌の良さや課題点はなんですか。

他地域をさほど見れてるわけではないので、比較はできないですけど、課題としては札幌は作り手が少ないということでしょうか。作品を作れる人がいないとシーンの発展は難しいと思うので。

いま、「CONTE Sapporo」というコンテンポラリーダンスを主体にしたスタジオが、作家を育成する取り組みをやっているのですが、そういう活動が地方にとっては大事なことだと思いますし、期待をしてます。

それから、振付家やダンサーを演劇の作品に起用する演出家や、逆にダンス作品に演出家や役者を起用したりといったことはまだまだ少ないながらも確実に増えていて、そういうダンスと演劇の相互関係はこの先発展していくと思いますし、良い相乗効果を生むものとして、それがこれからの当たり前になっていけば良いなぁと思ってます。

札幌の良さをあげるならば、発展途上、未開拓、ということですかね。可能性に満ちていて、挑戦しがいがあります。

 

ー 今世の中が大きく動いていると思いますが、その中で演劇あるいは舞台芸術などには、どんな可能性、力があると思いますか?。

演劇作品や舞台芸術には、観る人の想像力を飛躍させる力があると思います。

あるテーマに対して深く考えるきっかけを与えるような作品もあります。生身の人間から発せられるエネルギーによって理解を越えたところで何かを感じる、感じとるといったこともあるかもしれません。

「想像力」や「感じる力」を育てる可能性を、演劇や舞台芸術は持っていると思っています。

 

MY BEST BOOK


ー 東海林さんのおすすめの本を教えてください。

「ダライ・ラマ 珠玉の言葉 108」です。7〜8 年前かな。古本屋でたまたま目にとまって買いました。心を豊かにしてくれる言葉、知恵が詰まってます。

これは普段よく読んでいるというわけではなくて、海外へ行くときなど自宅を⻑く離れるときには必ず本を数冊持っていくのですが、この本は 1 番最初に選びます。もはや御守り的存在です。

 

ー 本の中の、おすすめの一言はなんですか。

「幸せになるために必要なものは、いまのあなた自身と今のあなたが持っているものに満足することです。」この言葉に何度ハッとさせられたことか。

 

 

今後の活動予定
8月23日(水)〜26日(土)札幌国際芸術祭プログラム「raprap」@シアターZOO

インタビューの様子は、「ダイジェスト動画」でご覧いただけます(下のボタンをクリック!)。

1時間目/稽古場夜回りインタビュー

【稽古場夜回りインタビュー】intro「わたし−THE CASSETTE TAPE GIRLS DIARY−」

2017.08.06

 

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