演劇で作る「反戦歌」とは|信山プロデュース第一弾『桃の実』に聞く

4月1日(土)から札幌市電を会場に上演される「桃の実」。

クラアク芸術堂最初の企画としても注目されている本作品の演出・出演の信山E紘希(@EDV_NoBu)さんにインタビューしました。予約した人もまだ悩んでいる人も、ぜひお読みください。

ずっと頭の中にあった

http://machi-photo.net/detail/photoId/897/より)

「桃の実」を上演するに至った経緯を教えてください。

信山E紘希さん(以下、信山):クラアク芸術堂の山木に「やりなさい」って言われたんです。2010年にモケレンベンベ・プロジェクトが市電公演で「桃の実」を上演していて、たまたま観に行きました。それがすごい面白かった。 2015年に僕が出演した座・れら「空の村号」のラストシーンに鯉のぼりが上がるんです、両親があげてくれた鯉のぼりが、原発で汚染された村から浮かび上がって、青い空をどこまでも飛んでいくように思えたっていう口上のシーンが、なんとなく桃の実のラストシーンとリンクして。戦争で苦しんでいる人がいて、悲しいことなんだけど、最後ちょっと希望が見えるような。そのときから山木と「『桃の実』っていう作品があってね」と話していました。2017年にクラアク芸術堂になって自分のプロデュース公演を考えたときに、既成脚本を何かやりたかったんです。いくつか候補があがる中で、ずっと頭の中にあった「桃の実」をやろうってことに。

信山プロデュースのコンセプトは「既成脚本」ですか。

信山:はい。既成の脚本をやるって大事だと思っています。演劇の歴史は古くはギリシア演劇、シェイクスピア、日本でも新劇という世界があって、そして小劇場があって。すごいたくさんの名作がある中で、「自分なんかが新しく創作するなんてのは傲りに等しい」と高校演劇部の顧問に言われたことがあります。たしかにそうです、「こんなに優れた脚本がたくさんあるのに、それをやらないなんて」という風に思っています。既成の優れた脚本を札幌で上演する。

「桃の実」では女学生が3人も登場しますが、それでも今回のキャストが全て男性なのはどうしてですか。

信山:自分が女学生やってみたかったんです。戦争って「非現実的」だなって思います。実際に起こったことが「非現実的」になっているのは、現代の我々が平和を享受しているからだと思います。「人間の上に爆弾を落とすなんて!」と思えていることそのものが平和なんだと思う。「爆弾を落とす戦いなんて、フィクションじゃん」って言えちゃうくらい悲惨なことが起こったということを描きたいです。だから、そのフィクションというところを表現するために、男が女をやるというという方法にしました。

稽古の様子(2017/02/28撮影)

キャスティングで大切にしたことは何ですか。

信山:全員「ひとりでやってオチまで作れる人」にしました。この芝居で大したことはしないかもしれないけれど。札幌でよくコメディに出ている人ですね。

今回札幌市電内での上演ということですが、市電公演について思うことはありますか。

信山:もともと札幌の市電用に計算されて書かれた作品なんです。ちょうどぴったりのサイズで作られています。作者とも話したんですけど、これを劇場でやっても面白くないんだと思います。車窓とともに観るから面白い。天候や周りの環境など不確定要素が多いので、もし何かトラブルが起こっても、ひとりで対処できる人を選びました。

戦争なんてなかったんだよ、へへ

「桃の実」のワンシーン(2017/02/28撮影)

この作品のテーマ「戦争」について思うことはありますか。

信山:僕は反戦派です。たとえば、僕が戦争に賛成するようなお芝居にかかわることになったらお断りするくらい、戦争に対しては反対の立場をとっています。戦争について詳しくなる必要はないんだと思います。ただ、何となくでもいいから「戦争はやっちゃいけないんだ」ということさえ知っておけばいい。今回は「戦争ってこれだけ悲惨なんだよ」じゃなくて、「戦争なんてなかったんだよ、へへ」って言うことで悲惨さを浮かび上がらせたいです。

観に来るお客さんに対してのメッセージはありますか。

信山:スカートを履いてこない方がいいかもしれません。あと、荷物は少なめの方がいいです、狭いから。

「桃の実」の後、信山プロデュースではどんな企画を考えていますか。

信山:小佐部がつくる芝居より大がかりな芝居をつくります

最後に、見どころを教えてください。

信山:車窓ですかね。実際の札幌の町並みを見ながら楽しめます。むしろ、芝居を見ずに車窓を見てもいいです。

 

信山E紘希
高校演劇部卒業後、座・れらに所属し、その間すべての本公演に出演。劇団アトリエには第2回公演から客演として参加、長らく準レギュラー扱いになっていたが、2016年より座・れらと並行してアトリエ団員として活動することになる。2011年から2012年まで厚別高校演劇部にて外部顧問として指導を行った。
今後の活動
  • 4月1日(土)〜2日(日)信山プロデュース「桃の実」演出・出演 @札幌市電
  • 5月26日(金)〜28日(日)クラアク芸術堂「(タイトル未定)」出演[/aside]