【インタビュー】深浦佑太さん

今回は、現在ひっぱりだこの超演技派俳優、深浦佑太(@ninbennimigi)さんにインタビューさせていただきました。

本当に数多くの舞台に出演されており、札幌演劇ファンならば月に1度は見るといっても過言ではありません。お忙しい中わざわざ時間をとっていただき、お話させていただきました。

彼の想う「良い演技」とは何か、ぜひご一読ください。

昔から「ごっこ遊び」が好き

深浦さんが演劇をはじめたきっかけはなんですか。

深浦佑太さん(以下、深浦):「大学入ったら演劇やってみたいなぁ」って思いは、高校生のときからぼんやりとありました。高校生のときは弓道部だったので(部活選びのときに、女の子の袴が見たい!って思って入部したんです…。不純な動機…!)。 今思い返してみると、昔から「ごっこ遊び」が好きな子どもだったんです。ひとりっ子で、親も共働きだったので、家でひとりで人形を戦わせたり、感情移入できるゲームをやったりするのが好きでした。

大学に入学して、初めて演劇をやったんですね。

深浦:はい。北海学園大学の演劇研究会です。

大学在学中に、自分が役者として成長したと感じた舞台はありますか。

深浦:たくさんある!強いてあげるとしたら…一番初めにそれを感じたのは、大学3年生の時、二口昌平くんという同期が演出脚本を行った「ゆびきりげんま」という作品ですね。それまでお芝居は大きな声出せばいい、目立ちさえすればいいって思っていて、どういう声色でどう台詞を言うかにこだわってやっていました。自分のエゴで演技をしていました。しかし、二口くんは「かっこつけすぎだ、やめろ、気持ち悪いぞ」とガツガツ言ってきたんです。「自然にそこにいれば、成立するから」と。そんなわけあるか!と半ばヤケクソで言われた通りやってみたら、評判が良かったんです。「あ、これで劇空間が成立するんだ」と発見できたのは、この舞台が初めてでした。その後も「自分だけでやるな」ってたくさん色んな現場でダメ出しをいただいて、少しずつ演技が変わっていったのかなって思います。

大学卒業後はどういう環境で演劇をしていたんですか。

深浦:大学在学中に自分の劇団を立ち上げました(「ディリバレー・ダイバーズ」)。当時の深浦は役者として大変にへたっぴで人気なくて、客演も周りの同期はどんどん行ってる中、全然無くて、「俺このまま卒業したら演劇やるところ無くなっちゃう!」って思って、だから自分でやることにしたんです。その劇団は卒業後も単発的に活動していましたね。そうこうしているうちに、ほかの劇団さんからも客演でお呼びしていただくことが増えました。

ディリバレー・ダイバーズはもう公演しないんですか。

深浦:んー、うん。最後にやったのは3年前かな、「屋上バレー・オブ・ザ・デッド。」っていうお芝居。大学の同期で立ち上げた劇団なんですけど、他の劇団員は結婚して、参加が難しくなって…。でも機会があれば…笑

不安定なものほど面白い

演技をする上で大切にしていることや、理想の役者像はありますか。

深浦:ドキドキすることですかね。常にドキドキしている状態の役者、舞台上で安心しない役者。何かしたいって思って舞台に立っている時に、何ができるだろうって常に考えることができること、常に自分を不安定な状態にできること、です。不安定なものほど見ていて面白いからね。安定している役者さんってすごく良いんだけど、それを超えて不安定な役者ってさらに面白い。

脚本家としても活躍されていますが、脚本を書く際に大切にしていることはなんですか。

深浦「キャッチーさ」と「丸く収める」っていう2点です。お芝居って宣伝媒体がそんなに多くないこともあって、作品の中身が見えにくいと思うんです。だからチラシを見て、タイトルや題材がキャッチーで気になるものだと良いなって。タイトルとあらすじだけ見て6割くらい内容がわかるように心がけています。その6割を見てくれた方に自分の好みに合うかどうか判断していただき、残りの4割を観にきていただけたらなって思います。そして、それでいて、丸く収める。どんなにぶっ飛んだ題材を扱っても、最後は物語としてしっかり着地したいと考えています。主題を投げっぱなしにしないように。観にいらしたお客様には、最もすっきりして欲しいですから! でも、もっとはっちゃけた脚本書きたいですね、そこは課題です。

今まで観たお芝居で、強く印象に残っている作品はありますか。

深浦:一番覚えているのは「しんじゃうおへや」(yhs/2009)ですね。初めて客席にいて息苦しくなる経験をしました。あと、「果実」(弦巻楽団/2009)!村上くんが主演したやつ。あの、ヒュッてなる感じ。観ていて心臓が止まるような瞬間があって、それって舞台じゃないと味わえないというか、現場を目撃しているからこそなんだなって思う。

これからの札幌演劇が発展していくための、課題はなんだと思いますか。

深浦:やっぱり気軽に観に来づらいものは広がっていかないですよね。もう少し安くできたら…。全体的に値段を落とすのではなく、気軽に観に行けるくらいのものをもっと増やしても良いんじゃないかなぁ、難しいですけどね。 あとは、透明性があったら良いと思います。チラシを見ていても、その作品がどういう話なのか、どういう雰囲気なのか、自分の好みに合うのかがわかりにくい。不透明なので、もうちょっと作品の中身をわかりやすく伝えられるようになると良いなぁ。せっかく観にいくと楽しいから、観にいくまでのハードルを下げたい!

劇空間で生活する

これからの活動でチャレンジしてみたいことはありますか。

深浦:映像作品に挑戦してみたいです。エレキさんのインタビューにも書いてあったんですけど、舞台も映像もどっちもお芝居なんだけど、細かく気にしなきゃいけない所が違っていたり、映像ならではの面白みがすごく新鮮だなって。テレビの方が観てくれる人も多いと思うから、もっと舞台役者がテレビに出演して、気になってくれた方が舞台も観に来てくれるようになったら良いな。僕も出たい! あと、去年少しチャレンジさせて頂いた女役とか、一人芝居とか…。

演劇をやっている中高生に向けてのメッセージはありますか。

深浦:お芝居の空間で生活することを楽しめるようになると良いかなって思います。我(エゴ)を出したくなったり、自分を目立たせたかったり、どうしても劇空間からはみ出したことをやりたくなっちゃう。もちろん、それが一つのやり方ではあると思うんだけど、個人的には、台本に描かれた世界・照明や音響・演出家がつくった空間の中でどう生きるかが大事だと思っています。その世界で生活することを楽しむために、どういうことを稽古でしていくかを考えていけると良いのかなって思います。その方が、色々な舞台(作品世界)でやるに当たって、沢山の役柄や人生を経験することが出来る。すごい手間がかかるし面倒臭いと思うけど、充実するし、豊かです。

次の出演舞台「コリオレイナス」の見どころを教えてください。

深浦:主人公コリオレイナスの敵役オーフィディアスをやらせていただきます。シェイクスピアをやるのが初めてなんです。海外の戯曲ということもあって、日本の戯曲と違って感情を語る台詞も多く、それをどう表現していくか、見応えがあります。武将というのも初めてです。武将としてどう戦っていくか、どうバトルしていくかを観ていただけたらな、と思います。草食系男子なのに、意外と肉食なことをします。

次の出演舞台「ナイトスイミング」の見どころを教えてください。

深浦:初演のときにTGRでオーディエンス賞をいただいたので、広い客層の方々に楽しんでいただける作品となっています。見どころは…初演のときより、より枯れた主人公にできると思います。オーディションも行っていて、新しいキャストで、新鮮な劇になると思います。お楽しみに!

ありがとうございました。

深浦:ありがとうございました。今年も頑張ります。

 

深浦佑太
自劇団ディリバレー・ダイバーズにて脚本・演出・役者を兼任。東京での活動を中心とする演劇ユニットのプラズマダイバーズにて脚本・役者を務める。また、他劇団への脚本提供依頼も積極的に請け負う。
単身役者としては年間10本以上の作品に客演、精力的に活動。
近年は役者賞や主演作の受賞、東京や京都・大阪・三重・北九州等の道外ツアーや、韓国への海外公演も成功を収める。

2014年 主演作:弦巻楽団「ナイトスイミング」が、TGR札幌劇場祭オーディエンス賞受賞。
2015年 主演・脚本作:プラズマダイバーズ「ミスター桃色袋小路。」にて、劇王東京ベストアクター賞受賞(審査員:伴 一彦 氏より)。
同年 主演作:弦巻楽団「四月になれば彼女は彼は」が、若手演出家コンクール2014 最優秀賞受賞。

今後の活動
  • 3月25日(土)〜26日(日)弦巻楽団「コリオレイナス」出演 @シアターZOO
  • 7月12日(水)〜15日(土)弦巻楽団「ナイトスイミング」出演 @サンピアザ劇場
  • 8月5日(土)〜12日(土)COROLE「Princess Fighter」脚本 @コンカリーニョ
  • 2017年9月 弦巻楽団「サウンズ・オブ・サイレンシーズ」出演
  • 2018年1月 コンカリーニョプロデュース「ちゃっかり八兵衛」出演 @教育文化会館

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