シーズン実行委員・寺下ヤス子「演劇シーズンの今とこれからを見つめる」

1月20日、いよいよ札幌演劇シーズンがスタートしました。今年の冬も札幌各地の劇場で、素晴らしい作品が一か月にわたって上演されます。

そこで今回は、この演劇シーズンの作品選定部、寺下ヤス子さんにインタビュー。作品選定部の視点から、札幌演劇シーズンの作品はどのように見えているのか。演劇シーズンの今とこれからについて語っていただきました。

寺下ヤス子(てらした やすこ)

米国総領事館 広報企画担当官。

大学で英文学、アメリカ演劇を学んだ後、英国シェイクスピア劇に傾倒し、度々渡英。英国でマイケル・チェホフの演劇を学ぶ。2012年、札幌に転勤し、演劇の街、オレゴン州アシュランド視察報告に来館した札幌演劇関係者との出会いがきっかけで、2016年まで札幌演劇シーズンの「ゲキカン!」で感想文を執筆。その後も「札幌観劇人の語り場」に感想を投稿しながら、2017年、演劇シーズンの選定委員となる。札幌から全国、全世界の人々を魅了する作品が生まれることを待ち望み、創作活動を応援している。

 

演劇シーズンの今とこれから

ー 札幌演劇シーズンが始まって6年ほど経ちます。演劇シーズンの発展、成長をどのように評価しますか。

このようなフェスティバルの発展のためには、回を重ねていくことがとても重要な要素になると思います。これまでで10回以上開催し、札幌市からの助成金も出て、シーズンの認知度も上がってきています。過去に始められた先輩方と劇団がともに頑張ってこられたおかげだと思います。

 

ー これから演劇シーズンが改善していくためにできる具体的なアイデアはありますか。

演劇シーズンは演劇人と市民を結ぶための単なるフレームなので、一番大切なのはソフトの部分、すなわち演劇作品そのものです。優れた作品なくしては、演劇シーズンは成り立ちません。中身がしっかりしていないと市民は演劇からどんどん離れていってしまいます。外枠を作る私たちにできるのは、発表の場を提供し、宣伝をお手伝いする、これくらいだと思います。

作品選定部としても、劇団が演劇シーズンに応募してくれないことには、選びようがありませんから、劇団にはどんどん応募してほしいです。

 

シーズンで上演したい演劇

ー 今シーズンの5作品、また次シーズンの5作品における作品の選定基準は何ですか。何を見て作品を選定していますか。

はじめに、応募されたビデオや脚本を拝見します。その上で私が個人的にポイントとしていることは主に2つあります。1つは、普段演劇を見ない人を劇場に連れていったときに、面白いと思ってもらえるかどうかということです。

もう一つは、お芝居の中に、観た人が共感できる「真実」があるか、ということです。作品の中に「そうだよね!」と万人が共通して思えるような人間の感情の「真実」。歴史的な事実とか、科学的にあり得る、あり得ないとかの真実ではなく、人間のサガ、人間の思いの「真実」です。

シェイクスピアでもなんでも、内容の中に「それはないでしょ」みたいなシチュエーションはありますよね。そういったリアリティの問題ではなく、「そういうときに、人間はそうなるよなあ」と共感できる「真実」があると、たとえあり得ないシチュエーションが作品の中に入っていたとしても、人は共感し、感動できるんだと思います。

 

ー これからの演劇シーズンで、こんな作品を上演したい!という要素はありますか。

私は大体古典派なので、シェイクスピアなどの洋作品をうまく日本語にした作品がたくさんあったら面白いと思います。

 

ー 古典派、というのは、どういった理由からですか。

古典に限らないのですが、詩と様式美がある作品が好きです。

古典は時代を超えて評価されているわけですから、作品の中ににそれだけユニバーサルで良いものがあるわけですよね。私は、札幌で生まれた作品でなければいけないとか、そういう風に制約するのがあまり好きではないです。演劇はもともとグローバルなものであって、もし仮に札幌や北海道など地元の歴史を題材に扱うとしても、その中に、外国から来た人にも共感できる世界共通の人間の感情があるべき。古典作品は、人間の中の真実を伝えるという使命をもつ作品だと思います。札幌演劇にもそんな熱い作品を期待します。

 

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