2018-冬シーズン参加演出家対談|札幌演劇の未来を語る

前のページ

劇団主宰と劇場主催


ー ホエイ河村さんからみなさんへ質問です。日本の劇団というあり方は、劇場が公演をプロデュースする諸外国のあり方と比べても特殊なシステムですが、みなさんはこの劇団制度にどのような意見をお持ちですか。

納谷:劇場が熱意を持って動くと、その地域は演劇が盛り上がりますね。札幌だと、コンカリやBLOCHなど、劇場が動くから劇団が育っていくという現状は否めないし。

弦巻:札幌は、こんなに民間の劇場が元気よくやってる都市ってなかなかないって聞きますね。

南参:意外と恵まれてたんだな、札幌って。

弦巻:劇場の人が頑張ってくれているからこそ、中身を作る方も頑張らなきゃなって。

ー 劇場主催の方がやりやすいですか。それとも、劇団が公演をプロデュースする方が理想的ですか。

納谷:これはみんな納得してくれると思うんですけど、札幌の劇団の一番の問題点は制作がいないということです。劇場運営になると、劇場が制作の役割をしてくれるから、僕らはものづくりに専念できる。劇団に制作のプロフェッショナルがいないから、劇場と連動したほうがより効率的になるという考え方です。

弦巻:劇団はみんなそれぞれだと思うんです。それぞれがやりたいことをやる。ここにいる4人とも、エンターテイメントを作りたいという思いは一緒かもしれないけれど、中身は全然違う。作品のタッチや主義主張も違う。

だから、劇場が地域に根付くためには、劇場が主体的に戦略を持ってラインナップを揃えたほうがいいと思います。劇場がプロデューサーになって「よし、今月はイレブンナインで。来月はイレブンナインと毛色の違う劇団に」という風に。または、この劇場はこういうジャンルの芝居を専門にやりますと限定するか。そうすると、一般の人たちがお芝居を観ようとするときの指針になったり、入り口のわかりやすい色分けになったりする。劇場が「文化的な担保」になると思う。そういう意味で、劇場主催のほうがいいっていうこともあるんだろうなって。その方が、僕たちは自分の劇団の作品に打ち込めるわけですよ。

ー 次の質問もホエイ河村さんからです。自分の劇団の作品をアジアに持っていくとしたらどのような作品を持って行きたいですか。チャンスは目の前に転がっているし、中国や韓国の人たちは日本の都市がどのような作品を作っているのか気になっています。彼らにどんな作品を見せたいですか。

弦巻:僕は『ユー・キャント・ハリー・ラブ!』です。これまで韓国で上演した作品は、日本の古典をベースにした作品だったので、シェイクスピアに喧々諤々するこの作品を。テキストとしては共有しやすい話だと思います。

南参:僕の劇団yhsは歌舞伎を題材とした作品がいくつかあります。TGR2017で大賞を受賞した『白浪っ!』もその一つです。歌舞伎が海外でどのように見られるのか。あとは、『しんじゃうおへや』はやりたいなーって思います。例えば韓国は死刑は現在執行停止されているので、彼らに見せたらどんな反応が返ってくるのか興味あります。

これからを見据えて


ー これまでの演劇シーズンを振り返り、シーズンの変遷をどうみますか?

納谷:レパートリー作品制度ができて、劇団へのステップアップとなりました。それまで、かでる2・7でイレブンナインが公演するなんていうのは考えられなかったし、演劇シーズンさんが後押ししてくれるので、こっちも頑張りがいがありました。レパートリー作品制度を作っていただいたことには多大なる感謝を感じています。

弦巻:選ばれる作品の傾向は、ちょっとジャンル的に偏ってきているなっていうのは感じています。それは札幌の演劇自体に問題があるかもしれないけれど。

2018-夏のシーズンでdEBooが『12人の怒れる男』を上演することが決まりましたが、こういった古典戯曲をシーズンでやるのはすごくいいことだと思います。もっと広い意味で、色んなエンターテイメントがあったらいいんじゃないかなって。

ー 公演期間についてはどう思いますか?

弦巻:劇団としては、あんまりかぶりたくないっていうのはあるんじゃないんですかね。ただ、フェスとしては、作品の選びようがあるという面ではかぶっていたほうがいい気はする。毎日2本はやっているとか。

南参:それは、道外の方からも言われましたね。前は2〜3本観られたのに、最近は少し観づらいスケジュールになってるかなって。シーズンを観光化するなら、たしかにかぶる日があってもいいんじゃないかなと思います。演劇シーズンに関しては、公演が重なっていたとしても客の取り合いにはならないんじゃないかなって。

納谷:僕はもっとロングランでやってかぶったほうがいいんじゃないかなって思いますね。多分制作面が大変になってくると思いますが。

弦巻:僕も役者としては二週間のロングランに出たことがありますけども。役者としてもすごく良い成長の機会になると思います。

ー 「演劇創造都市札幌プロジェクト」の取り組みとして、シアターカウンシルの設置というアイデアがあります(シアターカウンシルとは、行政や企業から集めたお金をどう分配するのかを判断する専門機関のこと)。この制度に対する意見を教えてください。

関連 斎藤歩氏が語る 札幌の演劇環境とシアターカウンシル

弦巻:札幌市や札幌演劇界にそういう機関があるのはいいと思う。

納谷:誰かがそれでメリットがあるならそれはいいと思う。

南参:正直、シアターカウンシルについてちゃんとは理解していないけれど、これまでも実行委員会の方々が色んなところからお金を集めてくれたおかげで札幌演劇シーズンが生まれ、僕たちも劇場費を負担せずに公演できている。これはすごくありがたい話なので、それがもっとさらに広がるのであれば、あったほうがいいんじゃないんでしょうか。

弦巻:僕たち作り手が集まって演劇シーズンやりましょうってなっても、この規模では開催できなかったと思う。外部の人たちが働きかけてくれて、僕たちと行政と企業とお客さんをつなげてくれた。だから、シアターカウンシルのような部門が立ち上がるっていうのはいいことだ思います。

ー 公演楽しみにしています。ありがとうございました。

一同:ありがとうございました。

あわせて読みたい




2012-冬〜2017-夏・札幌演劇シーズンの6年アーカイブ




「演劇は言葉を使った格闘技」札幌演劇シーズン実行委員長 樋泉実氏




札幌演劇シーズンの原点!演劇のまちアシュランドとは

1 2