高校生が札幌演劇についてざっくばらんにトークしてみた

おはようございます、佐久間です。先日、札幌在住の高校生3人で集まり、ざっくばらんに演劇のことを話し合う機会を持ちましたのでその模様をお届けします。

高校生の会話をのぞくような気持ちで読んでいただけると幸いです。

今回お話させていただいた方は、高校2年生の二瓶さんと高校3年生の今坂さん。

二瓶さんは現役の演劇部員で、高校演劇を取り巻く問題点や、演劇部ではない高校生がどのように演劇をとらえているのかなどのお話を聞かせていただきました。

今坂さんは高校の授業の中で「『演劇ワークショップ』の授業の導入」を研究され、論文としてまとめあげられた方です。義務教育の授業として、コミュニケーション能力の向上を目指した演劇ワークショップを取り入れてみてはどうかという内容の論文です。

 

演劇ワークショップと教育

佐久間:今坂さんがこの研究をするに至った経緯を教えていただけますか。

今坂:私の学校、3年生になったら卒業論文を書くことが義務付けられている高校なんです。テーマは「自分の興味のあること」だったので、演劇かなって。中高と演劇部をやってきたので。最初は「演劇とまちおこし」について考えていたんです。まちおこしのためには、まず教育・授業が大事だと思い、今の研究テーマになりました。

佐久間:研究内容を簡潔に教えていただきますか。

今坂:簡単に言えば、演劇ワークショップを小中学校の授業に導入するべきじゃないかっていうことを書いています。音楽の授業や美術の授業があるように、演劇の授業ができるんじゃないかなって。

佐久間:演劇ワークショップを授業として、ですね。面白そう! 現実的に考えて、実現するための一番の課題はなんだと思いますか。

今坂:毎回毎回プロの講師を呼ぶのは難しいので、学校の先生が中心となって進める必要がありますが、それができる教師をまず育成しなくてはいけないんです。教育委員会にそういうのを担当する部署を置いてっていうのも考えたんですけど、うまくまとまらなくて。あとは、コミュニケーション能力は演劇ワークショップで本当に向上するのかという意見もありました。

二瓶:効果はあると思います。実は、わたしの演劇部の中でカーストのようなものがあって、カーストが上の人たちが頑張っていることに対し、あんまり物言わない人たちは主張しないほうがいいっていう空気があったんです。その中で、わたしが参加しているワークショップ(弦巻楽団演技講座)の中でやったシアターゲームを部活でやったら、部活の雰囲気が良くなった気がしたんです。チームワークが良くなったっていうか。個性を潰さずに生かす、許容するっていうんですか、そういう雰囲気ができたんです。

今坂:それはいいですね! 演劇ワークショップをやるべきだという意見に根拠があります。論文にも書いたんですけど、企業が新入社員に求める能力の第一位がコミュニケーション能力だったにもかかわらず、コミュニケーション能力の向上を目的とした授業が義務教育にないことが問題だと思いました。もちろん、根拠はこれだけじゃないんですけど。それこそ、その人が持っている個性の許容範囲を広げる訓練を通じて、いじめがなくなるかもしれない。

佐久間:個性を潰さずに生かす、コミュニケーション能力向上を目指す、目的は様々あるにしろ、やはり適切な指導者が必要不可欠ですね。今坂さんの考える演劇ワークショップとは、どんなものですか。

今坂:毎週一回、授業として行います。小学校低学年はシアターゲームを中心に、だから演劇って感じではないですね。高学年からは即興劇みたいなのをつくる練習をします。中学校では脚本作りからはじめて、発表会もきちんとやる。っていう感じですかね。あとは、学校同士のつながりがあったらいいなって思っています。近隣の小学校と合同でやったりしたら、地域のコミュニティもできるしまちおこしにつながる。 教員がいないというのが課題でしたけど、裏を返せばそこさえなんとかすれば、どうにでもなると思うんです。学校でやる出張ワークショップが増えたらいいかもしれないです。演劇ワークショップで何をやるのかというのを学校全体で共有できたらいいですね。

佐久間:実現できるのが楽しみです。今後も研究を続けていってほしいと思います。

 

友だちに演劇を観に行ってほしい

佐久間:どうしたら、もっと多くの高校生が演劇を観にいくようになると思いますか。

二瓶:そもそも、多分、札幌に劇場があって演劇をやっているっていうのを知らないんだと思います。

今坂:私は自分の研究を進めていく中ではじめて、札幌演劇シーズンの存在を知りました。

佐久間:演劇シーズンも年々知名度が上がっていると思います。でもまだ、演劇ファンのためのイベントというか、演劇好きな人にしかわからないイベントとなっているのが現状。もっと、たとえば雪まつりのように市民みんなが知っているようなものになったらいいなあ。サッカー部が学校帰りに「君の名は。」を観にいく感覚で、劇場立ち寄るみたいな。

今坂:広報活動をすりゃあいいって問題でもないですしね…。

二瓶:わたしの友だちで美術や音楽が得意な人たちは、演劇部じゃなくても観にいっている人がいます(人によってはシーズンは全部観にいくような人も)。舞台美術や音響が気になるみたいで。そういう別ジャンルの芸術に関わっている人ならば、誘いやすいかもしれないですね。

佐久間:なるほどね。今シーズンの「狼王ロボ」も生演奏だったけど、音楽やっている人ならあの演奏は絶対興奮するね。

今坂:あとは、学校への出張公演はすごく良いと思います。こんな面白い演劇があるんだっていう印象を与えられれば、普段から観にいく人も出てくるはずです。

 

演劇の魅力を聞かれたら

佐久間:たとえば、チケットの値段が同じだとして、音楽のライブと演劇の公演だったら、みんなどっちの方にいくんだろう。

全員:それは、音楽ですよ。

佐久間:どうしてそう思いますか。

二瓶:音楽のライブは「何をするか」が明確だからだと思います。曲を演奏するということが行く前からわかっていて、安心感があるから観にいきやすい。演劇って何するのかわからないじゃないですか。それが良いものなのかつまらないのか、楽しみ方もわからない。わたしの学校でも、軽音楽部のライブと演劇部の公演だったら、軽音楽部のライブの方が観にいく人多いです。演劇って何やっているかわからないから。しかも、一つの作品が始まって終わるのに1時間もかかる!

佐久間:音楽だったら5分程度で終わるのにね。

二瓶:それだけ拘束時間が長いと、面白くなかったときのことを考えてより不安になる。

佐久間:飲み食い禁止で座りっぱなしですしね。それじゃあ、その制限をゆるくしてみたらどうでしょう。途中で抜けてもよくて、観たい人だけが最後まで観られる、ストリートライブのような。

今坂:それは、どうでしょうか。一番最初から最後まで観ないと面白くないですもん。

佐久間:そうでした。それが舞台の魅力でもありますね。90分間、普段の生活とは違う、現実とは違う世界に身を置くことができるという楽しさ。 …演劇のチケットってぶっちゃけどうですか、高いと感じますか。

今坂:んー、好きなら出せなくはないと思います。でも友だちの付き合いで観にいくとかだったら行けないですね。

佐久間:映画だったらもう少し安いですもんね!

今坂:でも、舞台には映画にはない魅力があります。演劇は一回きりなんです。毎回違うし、保存できない。あとは、目の前で役者が実際にやっている、距離感というか、あの楽しさは映画にはない。そこに大きな価値があると思います。

佐久間:演劇にしかない魅力、演劇でしか味わえない楽しさ… もし、全然演劇を観たことのない人に「演劇のどこがいいの?」って聞かれたとしたらなんて答えますか。

二瓶:演者と観客と、同じ空間を共有するというのは舞台芸術ででしか味わえないと思います。その、直で伝わる熱量というか。目の前の舞台上で起こっていることが、そのまま観客席に伝わってくることはすごく感動します。

今坂:終わった後の、あの、なんとも言えない余韻は楽しいですね。

佐久間:終演後、開演前のように空っぽの舞台だけが残る。でも、始まる前の空っぽと終わった後の空っぽは全然ちが…

二瓶:ああああ、わかります!わかります!

佐久間:そういうことですよね、舞台上で起きたドラマを目撃した人にしかわからないゾクゾク感。

 

演劇を観るようになったら

二瓶:わたしの演劇部、実は演劇をあんまり観ていなかったんです。去年くらいからみんな観はじめて。

佐久間:観に行って、どうでしたか。

二瓶:みんながはじめて観にいったのは、劇団アトリエの「瀧川結芽子」(2015年10月)でした。それがすごく面白くて、折込チラシとかでこんなのもやっているって知ったみたいで、演劇シーズンとかも観るようになったんです。そうやって演劇を観るようになった部員は、あきらかに演劇に対する姿勢が変わったように見えました。その人たちを見て、後輩たちも次々演劇を観るようになって…。

佐久間:「観劇って楽しい」っていう風潮ができたんだ。

今坂:わたしの部活はその逆で。先輩はけっこう行っていたみたいなんですけど、他の部員はあんまりついていかなかったみたいで。

佐久間:観劇に誘うときってやっぱり伝え方が大事ですよね。「面白いよ」とか「中高生無料だよ」とかじゃなかなか観に行こうってならない。演劇シーズンはトレイラー映像やコメント動画など、作品の魅力・楽しみ方を知らせるものが豊富にあります。そういうのって、大事だと思うんです。「どう」面白いのか、「何が」魅力なのか、観劇前に伝える何かがあるのとないのとでは絶対違う。特に観慣れていない人だと。

今坂:わたしも演劇シーズンのホームページに掲載されている「ゲキカン!」を読むのが好きです。人によって感じたことや伝え方って違うんだって思って。映画も試写会があったり、CMとかで「すごく良かったですー!」みたいな感想が流れたりするじゃないですか。ああいう誰かの生の感想ってすごく参考になります。

二瓶:こうやって色々と話すの楽しいです。なかなかこういう機会ないから。

佐久間:またぜひ話しましょう。ありがとうございました。

今坂:ありがとうございました。

二瓶:ありがとうございました。

今坂楓子
立命館慶祥高等学校3年生。中高ともに演劇部に所属していました。
テレビドラマや映画、舞台などの演劇関係のものが大好きです!
二瓶ひかる
札幌の現役高校演劇部員。カフェ巡りと読書と観劇が好きな普通の高校生です。