札幌発・中間支援団体による新しい支援プロジェクトがスタートします

札幌を拠点に活動する中間支援団体による、新しいアーティスト支援プロジェクトがスタートします。

この支援プロジェクトを支えるのは、札幌市の新たな文化芸術支援事業として2022年に始まった「札幌市文化芸術創造活動支援事業」。

公演を行うアーティストへの経費補助のような従来の助成金ではなく、アーティストの現状やニーズを詳細に把握している「中間支援団体」による支援プロジェクトに対して補助金を交付する事業です。

これは、2021年度に通年で開催された、札幌の文化芸術の専門家と札幌市職員による意見交流会議「札幌市文化芸術未来会議」の議論を踏まえています。他のどこかの都市の真似ごとではない、札幌発の新しい取り組みとして注目を集めていました。

2022年7月1日に札幌市文化芸術創造活動支援事業の採択結果が発表され、4つの支援プロジェクトが札幌のアーティストのもとへ届くことになりました。

この記事では、その4つの支援プロジェクトの内容をご紹介。どのプロジェクトも従来の支援事業とは異なる面白い取り組みです。札幌の演劇家の現状に即したプロジェクトもあります。ぜひご応募してみてはいかがでしょうか。

採択された4つの支援プロジェクト

札幌市文化芸術創造活動支援事業によって採択された支援プロジェクトは、以下の4つです。

中間支援団体支援プロジェクト
一般社団法人 AISプランニングアーティストの新たな活動領域開拓のためのネットワーク構築支援事業
HAUS(Hokkaido Artists Union Studies)もうひとつの声 The Other Voices
一般社団法人 PROJECTA札幌現代美術助成事業(仮)
公益財団法人 北海道演劇財団上質でゆとりのある作品創造のための稽古場支援
札幌市公式サイトより引用。

この記事では、「札幌の演劇家(俳優、演出家、劇作家、技術スタッフ、制作スタッフ等)が支援を受けられるとしたら」という視点で、各支援プロジェクトの内容を紹介します。

注意

当記事では、各支援プロジェクトの概要を紹介しております。実際に応募する際は、必ず公式サイトや募集要項をお読みください。

AISプランニング

AISプランニングは、札幌市内の小学校へアーティストの派遣をおこなったり、さっぽろ天神山アートスタジオの管理運営をしたりと、札幌市内で様々なアート関連事業を展開しています。

今回の支援プロジェクトは、AISプランニングの強みを活かし、アーティストの「新たな活動領域(アウトリーチ)」に着目した内容となっています

選べる3つのプロジェクト

AISプランニングが展開する支援プロジェクトは3種類あり、自分の活動に適したものを選択して応募することができます。

  1. 表現活動支援プログラム
  2. 創作活動支援プログラム
  3. コーディネート人材育成プログラム

1. 表現活動支援プログラム

商店街、小学校、児童館、子ども食堂、福祉施設など、普段フィールドとしている劇場等以外の場所で活動するアーティストを支援します。これまで何度も小学校にアーティストを派遣してきたAISプランニングならではのプロジェクトです。

たとえば、学校や児童館での演劇公演、商店街や町内会での演劇ワークショップなどが考えられます。

採択されたアーティストは、支援金22万円の他、実施受け入れ先への接続やコーディネート、その他助言・相談も受けることができます。

これまでの活動ではつながりのなかった分野に挑戦したい方にぴったりのプログラムです。

2. 創作活動支援プログラム

道内各地のアーティスト・イン・レジデンス拠点施設での創作活動を支援します。

アーティストは、支援金30万円の他、さっぽろ天神山アートスタジオをはじめとした道内各地のアーティスト・イン・レジデンス拠点(知床/斜里町、十勝/豊頃町、夕張市など7ヶ所)で、その地域と関わりながら、30日間の創作活動をすることができます。

創作活動は、一定期間滞在しても良いし、定期的に通うというスタイルでもOKです。時期や頻度の計画の段階からAISプランニングのコーディネート・助言を受けることができます。

さらに、このプロジェクトは新たな活動領域開拓やネットワーク構築に重きを置いているため、最終的に完成した作品の発表(公演)を行う必要がないのも特徴です。従来の公演経費の補助とは明らかに違う支援内容です。

3. コーディネート人材育成プログラム

AISプランニングの持つ、「新たな活動領域開拓」のノウハウ、アーティストと受け入れ機関との間をつなぐコーディネートに関するノウハウを学ぶことができます。

このプログラムの参加者は、研修会や現場実習を通して「アートを社会と接続させる為のコーディネートスキル」を身につけることができます。

アーティストを受け入れたいという団体・機関の方や、アートと社会の関連性に興味のある方にとっては、AISプランニングの手法を学べる絶好の機会です。

応募・選考について

応募締切は、9月15日(木)。はじめに書類選考があり、審査のプロセスで面接が実施される場合があります。応募はAISプランニングの公式サイトの応募フォームから申し込むことができます。

なお、9月4日(日)18:00にはプログラム説明会がオンライン開催されます。少しでも興味のある方は下記公式サイトをチェックし、参加してみてはいかがでしょうか。

HAUS(Hokkaido Artists Union Studies)

HAUSは、「アーティストがアーティストを支える循環をつくりたい!」をミッションとし、2019年秋に道内のアーティストによって設立された中間支援団体です。

アーティストの活動環境を考えるための勉強会や、アーティストのための多岐にわたる相談窓口、創造現場におけるさまざまな”声”を舞台化するプロジェクトなど、従来のアーティスト支援のあり方を問い直す取り組みを行ってきました。

今回、そんなHAUSの支援プロジェクトとして「ハウス・サバイバル・アワード」が実施されます。

コロナ禍をふまえた”全方位支援”

HAUS公式サイトには、このような文章が書かれています。

兼業アーティスト 専業アーティストのみなさまへ

文化芸術の公的支援はコロナ禍も変わらず
お金と作品の交換に追われてむなしかったですね
AFFとか なんとかにエールとか 腹立たしかったですね
傷ついたプライドのリハビリをしましょう

疲れたから休みたい こんな人に相談したい
そういえばずっと困ってた 壊れているところをなおしたい
そのための 全方位支援を 実験してみようとおもいます

「こんな活動を補助します」とあらかじめ募集対象を絞るのではなく、間口を大きく広げたまさに”全方位”のアーティスト支援。これが「ハウス・サバイバル・アワード」です

支援内容

「ハウス・サバイバル・アワード」では、作品の創作活動そのものだけでなく、それに付随する様々な困りごとに対する幅広い支援を受けることができます。

アーティストは「こんなことに困っているから、こんなことを取り組みたい」や「新しい作品を作るためにこんなことが必要だ」という試みをHAUSに提案します。最もチャレンジングでサバイバルな取り組みのいくつかが選ばれ、内容に合った支援を受けることができます。

支援内容は、受賞賞金50万円の他、HAUSのホームページやSNS等で活動紹介される「広報支援」、さらには活動における相談・助言や技術的なサポートなど、プロジェクトの始めから終わりまでHAUSメンバーによる「伴走支援」を受けることができます

この「伴走」がHAUSの一番の特徴です。ただ資金を提供するだけでなく、その「困りごと」を一緒に解決するための人材や技術支援までがこの支援プロジェクトには含まれています。

札幌の演劇家が応募するなら、例えば次のような試みが考えられます。

  • 劇団でハラスメントのガイドラインをつくりたい
  • 新しい作品づくりのためのフィールドワーク・リサーチ活動がしたい
  • 働きながら稽古ができる環境をつくりたい
  • コロナ禍で経済的なダメージが大きいけれど、どうにかして公演は打ちたい

応募・選考について

応募締切は、9月6日(火)公式サイトにリンクされている応募フォームから申し込みすることができます。

書類審査を通過したアーティストは、二次審査として「オープンマイク」に参加します。

オープンマイクは、アーティストたちのプランを共有・発表する場。「私はこんなことをやってみたい!」と声を交わし合います。

トークイベントや交流会もあったりと、面接形式の審査会ではなく、審査の段階から「アーティスト同士の交流」に重きを置いていることがわかります。

なお、オープンマイクは個別形式も選択することができ、交流形式に出るのがはばかられる方は、HAUSとの個人的なコミュニケーション(対面/オンライン可)の形で参加することもできます。

Artist Tree

さらにHAUSでは、「Artist Tree」という取り組みも行われます。これは札幌のアーティストの情報を一括で取りまとめ、デジタルコンテンツとして保存・公開するプロジェクトです。

アーティストの情報がまとまることにより、作品がアーカイブとして残るだけでなく、「アーティストコミュニティの連絡網」としての機能も期待されます。

こちらは2022年10月末頃にスタートするとのこと。要注目です!

PROJECTA

映像インスタレーションや立体作品を制作する高橋喜代史がディレクターをつとめる「一般社団法人 PROJECTA」は、これまで公共空間でのアートプロジェクトやアートスクールの企画運営を行なってきました。

今回の支援プロジェクトは「​サッポロアートインデックス」と名付けられ、美術分野の活動を支援する「助成プログラム」と、アートマネジメントやステートメントについて体系的に学べる「育成プログラム」の2種類あり、どちらも美術分野をメインターゲットとしてます。

支援対象は、”普段の活動”

コンセプトは、美術分野の作家や企画者が日々実践している “普段の活動” に対する支援です。プロジェクトに参加するために、何か特別なことをする必要はありません。

助成プログラム

札幌で行われている、今後の活躍が期待される美術分野の活動に対して、助成金が支援されます。また、特に国内外へ活動を発展させていきたいアーティストに対しては、プロフィール・ステートメントの英訳支援もあります。

助成金額は、応募された提案をもとに審査員によって決定されます。

育成プログラム

育成プログラムは、多種多様なアートにまつわる仕事を学べる「アートマネジメント入門講座」と、美術分野の制作者向けの「ステートメント講座」が開催されます。

どちらも無料で学ぶことができ、アートマネジャーとしての人材育成や、アーティストの活動領域を広げていくための支援となります。

応募・選考について

応募締切は、10月16日(日)。10月5日には、オンライン説明会も開催されます。それぞれのプログラムの詳細は、公式サイトをご覧ください。

北海道演劇財団

シアターZOOや札幌座を運営する(公財)北海道演劇財団では、「上質でゆとりのある作品創造のための稽古場支援事業」を行います。

優れた稽古場環境は、演劇やダンスなどの舞台作品の創作に大きな影響を及ぼします。ゆとりのある創作のために、現状の稽古場環境の見直しと稽古の質を上げることを目的とするプロジェクトです。

稽古場環境に関する悩みを解決

この支援プロジェクトは、主に「稽古場環境係る相談支援」と「稽古場コーディネート」が軸になります。参加カンパニーは、以下のスタッフと「創作環境を充実させるにはどんな稽古場が必要か」を相談し、問題点を一緒に考え、解決に向けて動いていきます。

  • 清水友陽(北海道演劇財団常務理事・芸術監督)
  • 斎藤歩(北海道演劇財団理事長)
  • 木村典子(北海道演劇財団専務理事)

たとえば、「予算がないため、実際の劇場施設での稽古ができない」「舞台美術プランはあるけど、セットを組んだ稽古ができない」「時間貸しのスペースだと、毎回の搬入・搬出に時間が取られてしまう」など、各カンパニーの稽古場環境に関する課題や悩みはそれぞれです。

このプロジェクトに参加することで、実際に上演予定の劇場施設または、それと同等の広さを取ることができる施設を、作品創造の時間として利用することができます(支援日数は合計5日間ほど)。シアターZOOという劇場を有する強みを活かして、稽古場環境に関する課題の解決方法を一緒に探ってくれるのが、本事業の特徴です。

プロジェクトの流れ

支援対象となるのは、2022年10月〜2023年3月に演劇・ダンスなどの公演を予定している団体・個人 です。参加カンパニーは、以下の流れで支援を受けることができます。

稽古プランを組み立てる

現時点での稽古場環境に関する課題をヒアリングし、解決方法を探ります。理想の稽古場環境を作れるように、稽古プランをしっかりと組み立てます。

劇場施設とのマッチング・コーディネート

劇場施設の利用状況と参加アーティストの希望を照らしスケジュール調整をした上で、利用する劇場施設とのマッチング支援を受けます。

中間評価

稽古期間中にスタッフが稽古場に足を運び、計画通り稽古が進んでいるか、何か問題点がないかを一緒に考えます。

上演・フィードバック

仕込み、ゲネプロ、上演を通して、参加アーティストとスタッフらによる課題分析・フィードバックを行います。次回の稽古に向けての改善点を共有し、次の活動に繋げます。

レポートの提出・報告会への参加

プロジェクトに参加してどうだったか、体験レポートを提出します。プロジェクト終了後に予定されている実績・成果報告会に参加し、発表します。

応募・選考について

応募締切は、9月30日(金)北海道演劇財団の公式サイトから応募用紙をダウンロードし、メールにて応募します。

支援対象数は10団体程度です。特に演劇と相性の良い支援プロジェクトですので、現在の稽古場環境に満足していない方はぜひ応募を検討してみてはいかがでしょうか。


今回ご紹介した支援プロジェクトは、「札幌市文化芸術創造活動支援事業」が支えています。これは、札幌市とアーティストとの長年の意見交換・議論の末、ようやく今年実現した新しい支援事業の形です。

アーティストのニーズを把握している中間支援団体による、オリジナルな支援プロジェクト。ぜひ応募し、ご自身の演劇活動に役立ててみてはいかがでしょうか。

支援プロジェクトの合同説明会&相談会

2022年8月31日に、本支援プロジェクトの概要を説明する「合同説明会&相談会」が開催されました。

YouTubeで当日の様子が公開されていますので、是非ご覧ください。

お問い合わせ

支援プロジェクトの内容については、各実施団体に直接お問合せくださいませ。