【稽古場夜回りインタビュー】イレブンナイン「あっちこっち佐藤さん」

目の前で繰り広げられるドラマ、二度と味わうことのできない感動、一生忘れられないあのセリフ… 演劇の面白さをあげたらキリがない!

今回の「夜の稽古場参観日」では、8月12日より上演する イレブンナイン「あっちこっち佐藤さん」から、演出・出演の納谷真大さん、主演の明逸人さんにインタビューをしました。

目標動員5000人!札幌を爆笑の渦に巻き込んだあの名作が上演されます。

2時間目/舞台裏の仕事人たち

【舞台裏の仕事人たち】舞台監督・上田知さん

2017.08.09

 

笑真笑銘の名作『あっちこっち佐藤さん』


ー はじめに、イレブンナインという劇団について教えてください。

演出・出演 納谷真大さん(以下、納谷):イレブンナインの最初は、富良野塾で師匠だった倉本聰先生の弟子たちが集まって「自分たちでも創作しよう」と始めました。富良野で劇を作るとなると、どうしても師匠との闘いになります。富良野塾のOBたちで作った『あっちこっち佐藤さん』の初演の通し稽古を見た倉本先生はお怒りになりまして。「こんなつまらない作品は上演しない方が良い」と。

上演したものは結局、TGRで賞をいただいたんですけれど、まあ、色々あって、富良野から札幌に移ることになったんです。

紆余曲折して、2013年くらいにシステムを変更しました。納谷の芝居だけを作る劇団から、参加メンバーが様々な公演を企画するプロデュース集団になりました。幅広く色んな劇をやろうと思っています。

 

ー 今回上演される『あっちこっち佐藤さん』のあらすじを教えてください。

納谷:レイ・クーニーが書いた『Run for Your Wife』という作品が原作になっています。イギリスから札幌に設定を変更し、スタイリッシュから程遠いタイトルをつけました。

タクシードライバーの佐藤ヒロシはとても生真面目で悪いところのない良いヤツなんですけれど、たった一つこの男には秘密があって、妻が二人いるんです。佐藤ヒロシ悪いヤツですね!って思わないでください、二人の妻も気づかずに全て円満に幸せに暮らせていたんです。

大通を挟んで二つの家を行ったり来たりしている佐藤ヒロシ。あっちも佐藤さん、こっちも佐藤さん。しかし、ある事件をきっかけにその秘密をバレそうになってしまいます。なんとかバレないように試行錯誤するも、事態はどんどん悪化していき、、、という典型的なシチュエーションコメディとなっております!

 

ー 初演と比べて意識して変えたところ、違いがあれば教えてください。

納谷:初演は富良野塾OBでサンピアザ劇場でやって、再演は演劇シーズン2014-夏の参加作品としてコンカリーニョでやり、今回はかでる2・7で再々演です。

再演のときには、初演には出なかった登場人物を一人増やしました。もともと原作のあるものに新しいキャラクターを増やすことはとてもリスキーでしたが、演じた廣瀬詩映莉の力もあり、とても重要な役所として成功しました。

今回3回目で若手たちを多く登場させたいと考えています。「雑踏の佐藤さん」をつくっています。メインキャラクターは変わっていませんが、彼らを取り巻く人々は変わっています。

 

「演技至上主義」という闘い方


ー 作品を作るときに心がけていることは何ですか。

納谷:僕はもともと俳優なので、演技について考えが行きます。もちろん物語が面白いに越したことはないんですけれど、物語が面白いだけなら小説で良いじゃないですか。演劇はスローメディアだと思っていて、Youtubeでいつでもどこでも見れるようなメディアではなく、限られた期間に決まった場所へ行き時間を拘束される、、、とても劣悪な環境で観るんです。だからこそ、ライブで見ることの意味を作らねば演劇に未来はないと思っています。

そういう意味で、僕たちは「演技至上主義」と謳っています。役者はロボットではないので、演技も毎回違うものになります。人と人とが目の前で起こす化学反応を作ろうとしています。演劇の「演技」というものに特化して作ります。

出演 明逸人(以下、明):人間の様を見せたいです。僕らは舞台上でフィクションをつくっています。でも、ウソなんだけれど、そこにホントが見えるという現象を起こしていきたいと思います。

演劇はスポーツとどこまで闘えるかと考えるんです。スポーツは筋書きのないドラマってよく言うじゃないですか。だったら筋書きのあるドラマの方が劣ってんのかって。比べるもんじゃないとも思いますが、それでも僕は、スポーツに勝ちたい。

納谷:それは僕の師匠と同じ考え方です。倉本聰という僕の師匠は「演劇でもスポーツに勝る感動はないのか」と言って、舞台上で走り続ける『走る』という作品を上演しました。

明:納谷さんはバスケ、俺は野球をずっとやっていたから、学生時代はスポーツの面白さの方が強かった。演劇よりスポーツの方が感動があった。でもどこかでそれがひっくり返って、舞台でもスポーツのようにリアルでライブなものがあるんじゃないかと思った。

野球で、打った、走った、投げた、間に合うか、間に合った!という真剣勝負と同じような感動を与えるのは、役者の様なんじゃないかなって思います。舞台上で作るウソで、お客さんに「ホント」を届けたいです。

 

ー 演劇より映画を選択する人の方が多いように感じられますが、演劇の優先順位が低いのはどうしてでしょうか。

納谷:先ほども言ったように、演劇は観る人にとっては「めんどくさい」んですね。いつでも抜けられる訳でもないし、狭かったり暑かったり、時間も拘束されるし。

だからこそ、そこに打ち勝つために、「ここでしか観られない」ものを提供しなくてはいけない。『あっちこっち佐藤さん』では、物語が進んでいくうちに汗で衣装の色がどんどん変わっていくんです。目の前で人が熱を帯びていく様は、演劇ならでは。演技が面白くないと駄目なんですよ。

トラピストクッキーは、今でこそネットを通じて買えますけど、昔は函館に行かないと買えなかったんです。役者の演技は劇場に行かないと観れないという風になっていかないと、これだけメディアが多彩になっている世の中で演劇の勝ち目はないんです。それは、非常に難しいことだと思いますよ。

明:「演技って面白いんだ」ということを伝えていきたいですね。以前させていただいた学校公演の前、教室に作品の紹介をしにいき、寸劇をやったら、笑ってくれるんですよ。それって、変顔や一発ギャグでじゃなくて、目の前で起こっているドラマを見て、楽しんでくれている。これが演技の力、演劇の力だと思います。

お笑い芸人さんがやっていることと重なることもあると思います。俺たちは「演技」で勝負します。

納谷:Youtubeを活用したり(Youtube番組「あっちこっちカジタン」毎日夜生配信中)営業をしたりとなるべく多くの人に知っていただく努力はしなくてはいけませんね。

明:敷居を低くしたいですね。観客にとってめんどくさかったり、優先順位が低かったりしますが、それならこっちから行きますよ。学校公演はそういう意味で大切だなと実感しますね。

 

シーズンにふさわしい作品を


ー イレブンナインが札幌演劇シーズンに参加するのは、今回で何回目ですか。

納谷:プロデュースユニットELEVEN NINESとしては4回目です。2013-夏『エンギデモナイ』、2014-夏『あっちこっち佐藤さん』、dEBooとして上演した2015-夏『12人の怒れる男』、今回は再びの『あっちこっち佐藤さん』です。

※dEBooとは、ELEVEN NINESのメンバーである小島達子がプロデュースする、名戯曲を納谷演出で上演する企画のことである。

 

ー 札幌演劇シーズンの良いところと、これから期待するところはありますか。

納谷:僕個人としては、期待することはなんにもないです。劇を作る人間として、こんな機会を設けてくれて本当にありがたいだけです。

ただ、思うのは、参加劇団のクオリティを落とさないでほしいですね。イベントを進めていくにつれ、必ず5団体を駆動せねばならないがために質の低い作品を参加させてほしくはない。そうなるくらいだったら少数の作品を長期間やった方が絶対良い。

せっかく札幌市が助成してくださっているので、そこに匹敵する作品じゃないと参加する資格はないんです。シーズン参加作品が「あんまり面白くなかった」っていうのはナシでしょ。「好きじゃないけれど、シーズンに参加するだけの価値はある作品」ならば良いんですけれどね。

明:納谷さんのいう通り、本当に感謝です。期待することを挙げるとするならば、演劇シーズンそのものの価値がもっと上がれば、もっと多くのお客さんに作品を届けられるようになるだろうなとも思います。どれだけのお客さんにアプローチするかは俺たちの義務でもあるし、主催であるシーズンの義務でもある。

納谷:札幌演劇シーズンは、演劇ファンの人たちのためにやっているのか、演劇ファン以外の人たちのためにやっているのか。もちろんどっちのためでもあるんですけれど、どういう比重を置くかは考えねばならないですね。

シーズンが開催しているおかげで、「札幌の演劇は活発だ」という印象はついていると思いますが「札幌の演劇は面白い」にはまだなっていないのが現状です。

 

シーズン作品コンパス

インタビューを受けてくださったイレブンナインのお二方に、今回の作品『あっちこっち佐藤さん』がどのような作品なのかを表す作品コンパスを作っていただきました。

「エンタメ」「実験的」「アート」などのワードをホワイトボードに貼っていきます。

 

納谷:難しいねぇ。「アート」とは程遠いいね。

明:「ファミリー」の話ではあるね。「笑える」「笑える」。

納谷:「笑える」!

 

こうして完成した作品コンパスはこちら!

 

前回上演した時のアンケートに、女子高生からこんな感想があったそうです。

「お父さんの笑った顔、お父さんが笑っているところを、はじめて見ました。観に来て良かった!」

 

公演詳細

イレブンナイン「あっちこっち佐藤さん」

2017.05.20

 

MY BEST BOOK


ー 納谷さんのおすすめの本を教えてください。

納谷:宮沢賢治の『雨ニモマケズ』です。僕が富良野塾に入った時に、師匠である倉本聰さんが「僕は宮沢賢治の韻律(いんりつ)で育ったんだよ」と教えてくれました。それで、宮沢賢治全集は何回も読みました。

僕は俳優なので、日々トレーニングをしていますが、その中でこの詩を朗読しています。おそらく、今までで1万回くらい読んでいます。もちろんそれだけやっているので空で言えるんですけれど、文字を見て声にすることを大切にしているのでこの本は持ち歩いています。

明:本番前に諳んじていたりしています。

納谷:トレーニングの一つに『外郎売り』がありますが、富良野塾では倉本さんオリジナルの『人参売り』でやっています。それに加えて『雨ニモマケズ』を声に出しますね。

 

ー 明さんのおすすめの本を教えてください。

明:僕は、割と最近の作品で『聲の形』という漫画です。すごく大好きです。「いじめ」や「聾唖(ろうあ)」をテーマとしているんですが、全体を通して読むと、単純にコミュニケーションがヘタな人の物語なんです。良かれと思ってやったことがすれ違ったり、その人のためを思ってやったことが全くの逆効果だったり。ものすごく胸に刺さります。

印象的なのは、自分の体調や状況で『聲の形』を読んだ時の感触が変わるんです。映画にもなっているんですけれど、映画館の座る場所によっても観終わった後の感触が全然違うんですよ。すごく不思議な作品です。

この漫画には、大事なことを極力言わないようにしている印象があります。主人公は耳の聞こえない人なので、言葉で伝えるということを得意としていなくて、手話を使うんです。だから、読み手にもなかなか言葉で表現されない。その代わり、ものすごく雄弁に絵が語る。

僕は俳優なのでこれの真似をすることはできないけれど、作品を作るということに真摯であるという意味で、身が引き締まる思いになります。

納谷:もう完結していますよね、それ。僕も読んでいるんですけれど。

明:しています!…こういう時って普通、第1巻持ってくるでしょ。俺最終巻の第7巻持ってきちゃったよ。

(一同、爆笑)

 

 

 

 

インタビューの様子は、「ダイジェスト動画」でご覧いただけます(下のボタンをクリック!)。

 

 

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札幌演劇シーズン2017-夏

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