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オールスター芝居をやりたい|信山プロデュース第二弾『櫻井さん』に聞く

「言葉の威力が強い芝居です。」

そう語るのは、4月20日より上演する『櫻井さん』に出演する櫻井保一さん(yhs所属)。クラアク芸術堂の信山E紘希さんが代表をつとめるユニット「信山プロデュース」の第二回公演として ことにパトス で上演します。

『櫻井さん』は、東京を拠点に活動する劇団MCRの作品として2011年に札幌で上演。今回はきっとろんどんの井上悠介さんが演出をつとめ、札幌版として上演します。

今回インタビューしたのは、『櫻井さん』に出演する櫻井保一さん、遠藤洋平さん、熊谷嶺さん、有田哲さん、信山E紘希さんの5名です。作品の見どころについて伺いました。

 

信山さんと櫻井さん

ー 優れた既成脚本を上演することをコンセプトとした企画公演「信山プロデュース」ですが、今回の作品『櫻井さん』を選んだ理由はなんですか。

信山E紘希さん(以下、信山):この作品は、2011年にシアターZOOでMCRが上演したものを観て知りました。それからずっと「ああ、こんな作品をやりたい」と思っていました。信山プロデュースの上演台本候補にはずっと入っていた作品です。

信山プロデュースとして公演するのは第2回目なのですが、ありがたいことに上演許可をいただき、素敵な俳優たちと上演させていただくことになりました。

 

ー MCR札幌公演を観たときにどのような感想を抱きましたか。

信山:始めはくだらないテーマの芝居だなって思わせておいて、クライマックスに近づくにつれてどっしりと重くなる、その技法に驚きました。その演出の方法は、自分の作る芝居にもすごく影響しました。

MCRの場合は、代表の櫻井智也さんが台本を書いて、演出して、自分も「櫻井さん」という役で出演していたので、彼の思い通りの作品だったと思いました。

 

最後の瞬間まで

稽古中の遠藤洋平さん

ー 役者の皆さんは、始めて脚本を読んだときの印象はどうでしたか。

遠藤洋平さん(以下、遠藤):最後まで読むと重く深いものが描かれているのに、物語自体はずっとライトに進むんですよね。それが逆に怖く感じました。

有田哲さん(以下、有田):淡々と進んでいくのに、内容は結構しんどかったりするね。

熊谷嶺さん(以下、熊谷):主人公のエンドウヨウヘイも劇中は明るく振る舞うんだけど、お話が進むうちに、ググググと彼に圧が加わって追い込まれていく。周りが軽い分、その悲惨さがどんどん際立っていって。本当の最後の瞬間まで、派手な盛り上がりを見せずに静かに進んでいく。

櫻井保一(以下、櫻井):話の構図的には回想シーンが多かったり、時間軸や場面がコロコロ変わったりしますが、僕は脚本を読んで、作者の櫻井さんはすごく人間が好きなんだろうな、と感じました。

主人公の周りを取り巻く環境や、周りに対する発散のしようのない怒りが、万力で少しずつ締められていくような感じがあって。発散しようのないものがさらに大きくなって、っていう話なんです。うん、人間の嫌なところ、というか、どうしようもないところが見えてきます。

会話はすごい面白い。基本はコメディ調だから。

有田:明るく進むから笑えるところもたくさんあるんだけれど、最初の方で笑えていたシーンも、お話が進むにつれて笑えなくなっていくところが面白いですよね。結末を知ってから見ると、最初のシーンが全然違って見える、みたいな。

櫻井:あっさりしてるからすっごい食いやすい、でも、食って30分もしたら胃もたれしちゃう感じだよね。

 

ー 一度だけでなく、結末を知ってからもう一度最初から観たくなるような。

櫻井:そうだね、2回目以降は見方が変わってくるんじゃないかな。

遠藤:台本上も、時間軸的には最後のシーンを最初にやっちゃうんです。主人公の心がやられちゃっているさまから始まる。

櫻井:主人公はどうしてこうなっちゃったのかを回想してく、というような流れで進んでいきます。

遠藤:今回主人公をさせていただきますけれど、正直、俺これやんのかって思った、最初読んだ時。めちゃくちゃしんどいって。

信山:だからこそ、主人公は遠藤洋平じゃないと、僕は任せられなかった。君がやらなかったらこの芝居はやらなかった。

 

立場を求める登場人物

稽古中の櫻井保一さん

ー 今回の出演者の選定、キャスティングはどのような基準で行いましたか?

信山:オールスター芝居です。サッカーとか野球でもオールスターゲームってやっぱりいいじゃないですか。役者自身も楽しんでるし、お客さんももちろん楽しめるだろうし。それで、札幌で引っ張りだこの実力派の方々に集まっていただきました。

あと、僕は三谷幸喜が好きなんです。彼の作品もオールスターが出るというか、そういうイメージでキャスティングしていて。櫻井、遠藤ときたら、やっぱりそれに負けないだけの力がある役者が欲しかった。熊谷さんだって、今までの出演本数札幌一位ですし。

熊谷:うそ(笑)そんな統計出てんの!?

遠藤:あるんだそんなの、知らなかった。誰か計算してるんだ!

 

ー 見どころを教えてください。

信山:今回、演出の井上悠介が一番年下なんです。さらに、熊谷さん以外はみんな井上君とは初めてですね。稽古場での面白さをそのまま舞台に上げたくて、そういう意味で彼に依頼しました。

遠藤:やっぱり具現化すると面白いです。本読むのとは全然違くて。ふつーに稽古で笑っちゃうもんなぁ。

有田:家族のシーンいいよね。面白い。

櫻井:今は好き勝手やっている段階だけれど、これから色々と整えていく感じです。

遠藤:僕の役どころは、だんだん言葉をなくしていくキャラクターなんですよね。最初は威勢がよかったのに、どんどん何にも言えなくなっちゃうっていうのが。可哀想、可哀想なんだけど…、

信山:難しい役どころなんです。でも彼ならできる。

櫻井:言葉の威力が強い芝居です。だから、人によって、ぐっさりくるところが違うと思います。主人公がだんだん行き詰まっていって、周りから追い詰められるような状況になって、というような各場面で刺さる言葉は人によってそれぞれ。例えば家族のシーンが特に見ているのしんどいなって思う人もいるだろうし。

若い人は主人公に共感できるところがあると思うけれど、おじさんたちが観たらどう思うんだろうな。

遠藤:そういう「大人たち」はなんとも思っていない、という台本だから、本当に観てなんとも思わないんじゃないかな。

櫻井:40〜50代の方々が観たらどういう感想を持つのかっていうのは気になります。

遠藤:若者の葛藤がテーマっていうわけでもないんだよね。これは「立場」の話だなと解釈しています。この物語の登場人物は高い立場になりたい人たちなんだと思うんです。僕が演じる主人公もきっとそうで、現状はその高い立場の人たちから追い込まれていく。でも高い立場の人間は、低い立場の人間のことをそんなに考えていない。

櫻井:面白いのがさ、主人公はそうやって上の立場の人から追い込まれた時に「じゃあ自分も高い立場にいってやる」とするよりは、自分よりも低い立場の人を探しちゃうんだよね。リアルだなって思うよ。

みんな主人公みたいな醜いところはあるだろうし、そして無意識に自分より下の立場の人を追い詰めている。その、人間模様だよね。

 

ー 最後にこの記事を読んでいる方にメッセージをお願いします。

熊谷:個人的な話をすると、これまで熊谷はパワー系やキャラ芝居が多かったんですが、今回は純粋な会話劇ですので、今回は普段あんまり見られない熊谷を見ていただけたら嬉しいです。

有田:脚本も役者さんも楽しいので、初めてお芝居観る人も気軽に劇場に来ていただけると思います。

遠藤:もう、脚本・演出・キャスト・スタッフ、みんな揃っているので!役満のお芝居をご覧いただけると思います!

櫻井:タイトルが『櫻井さん』だからって特別なことはせず、一番面白いものを目指して頑張ります。ぜひ観に来てください。

 

2018年3月19日
信山プロデュース稽古場にて

公演情報

信山プロデュース「櫻井さん」