演劇上演中に地震が発生したらどうするのか|劇場の対応と観客の行動

2018年9月6日未明に発生した「平成30年度北海道胆振東部地震」。厚真町で震度7、安平町で震度6強を観測しました。全道規模の停電や、各地での土砂崩れや家屋の倒壊など大きな被害が発生しました。

このような大きな地震が劇場で演劇を上演している最中に発生した場合、劇場はどうするべきなのか、そして観客はどのような行動を取るべきなのかをまとめてみました。

注意

ここで紹介しているものは、劇場の対応の一例です。実際の対応は劇場ごとに異なりますのでご注意ください。

札幌で演劇を楽しむみなさんにとって、この記事が劇場のリスクマネジメントについて考えるきっかけになったら幸いです。

公演中の地震発生への対応

公演中に地震が発生! 大きな揺れの場合は公演が一時中断されますが、まずは落ち着いてください。すぐに照明を明るくし、観客へのアナウンス・呼びかけが行われます。会場スタッフの迅速な対応が求められます。

アナウンス例

「ただいま地震が発生いたしましたので、公演を一時中断しております。落ち着いて、新しい情報をお待ちください。」

公演関係者は観客へ配慮もしつつ、しっかりとテレビ、ラジオ、インターネット等で地震の情報を迅速に収集する必要があります。舞台監督、照明、音響担当者は、機材や舞台セットが安全上支障がないか確認します。確認するべきものを事前にリストアップしておくと、いざという時に役立ちます。

いま何が起こっているかを観客へ逐次伝えることも忘れてはいけません。

大きい揺れ(目安:震度5弱以上)の場合は、避難誘導が行われる場合があります。舞台監督は出演者の誘導、劇場スタッフは観客の誘導がメインになります。

アナウンス例

「ただいまより、お客様を安全な場所にご案内いたします。会場スタッフ・係員の指示にしたがって、落ち着いて行動してください。」

揺れが小さく劇場内外で特に被害がない場合、余震や観客の様子を踏まえて公演関係者で再開または中止を決定します。いずれにせよ、特に被害がないことを観客に落ち着いて知らせることも重要です。

これらのことはマニュアル化し、どんな時にでも実践できるような訓練・シミュレーションが重要になります。

いざとなった時にどうしたらいいのか。劇場関係者やスタッフはもちろん、出演者や観客のみなさまも知っておくとスムーズです。

公益社団法人 全国公立文化施設協会が発行する「公立文化施設の危機管理/リスク・マネジメントガイドブック」には、緊急時における劇場の対応について詳しくまとめられています。

特に対応フロー例では、震度や二次災害の有無によって異なる対応をフローチャート形式で確認することができますので、ぜひご確認ください。

また、下のリンクより地震発生時に役立つ情報やハンドブックをご覧いただけます。


参考
地震時の緊急対応のポイントを教えてください。全国劇場・音楽堂等総合情報サイト


参考
地震だ!! どうする!? 劇場・音楽堂等 震災対応ハンドブック公益社団法人 全国公立文化施設協会

実践的な避難訓練

2017年9月7日(木)、東京渋谷の新国立劇場にて「避難訓練オペラコンサート」が行われました。新国立劇場オペラ研修所修了生による実際のオペラのコンサート中に、突然震度5強の地震が起き火災も発生したと想定して、コンサート中断から避難まで行いました。

withnewsの記事によると、当日はできるだけ本番と同じような状況を体験してもらうために、観客には「いつどのタイミングで地震が来るか」は伝えずに普通にコンサートが始まったそう。

緊急アナウンスが入り、会場スタッフが日本語と英語で「慌てないでください」と書かれたボードを掲げて観客を避難口へ誘導するなど、本番さながらで行われました。


参考
第2回 避難体験オペラコンサート(2017年9月7日)


参考
第3回 避難体験オペラコンサート(2018年9月26日)


札幌では、2018年8月25日(土)に、札幌文化芸術劇場hitaruでも避難訓練コンサートを実施。オープン前のhitaruにて札幌市消防音楽隊のコンサートが行われ、演奏中に地震、火災が発生したと想定した避難訓練が行われました。

hitaruのメインの劇場である6階から1階のホールまで、階段を使っての避難は実際の災害発生時の時の良い学びの時間となったそうです。


参考
札幌文化芸術劇場hitaruの避難訓練コンサートに本学理学療法学科の教員と学生が参加しました北海道科学大学 公式サイト

札幌演劇小劇場のあり方

演劇公演を多く行なっている札幌の小劇場では、こうした実践的な避難訓練はあまり行われていません。そもそも、演劇の性質上、避難訓練を兼ねた演劇公演を行うことは、音楽コンサートよりも開催が困難になります。

しかし、もしお客さんがぎゅうぎゅう詰めの小さな劇場で大地震が起きたら。

お客さんもまじえた避難訓練演劇公演を行っているのといないとでは、実際の避難のスムーズさが変わるかもしれません。劇場スタッフだけでなく、札幌演劇人やファンの方にとっても良い経験となるでしょう。

実際の演劇公演を含めた札幌小劇場避難訓練。劇場・劇団関係者のみなさん、検討してみてはいかがでしょうか。

必要性もありますが、単純に、途中で中断することがわかっている演劇公演というのはなんだか面白そうで観てみたいかも。

まとめ

災害はいつどのタイミングで起こるのかわかりません。家にいるかもしれないし、学校や職場かもしれないし、演劇を見ている最中かもしれません。いざというときの劇場の対応は、どれだけ事前準備をしているかによります。

観客として観に行く時も、決して慌てずに劇場スタッフにしたがって避難できるよう心がけましょう。

避難訓練の様子や実際の災害での劇場の対応など、様々な前例を参考にして、安全に札幌演劇環境を整えていくことが大切です!

注意

ここで紹介しているものは、劇場の対応の一例です。実際の対応は劇場ごとに異なりますのでご注意ください。